第5話: 廃工場の再定義 ――「物理的限界」というログを消去する。
王都の北西、スラム街の端に位置するその場所は、かつて大規模な魔導具生産拠点だった廃工場だ。
魔力炉の暴走事故により、一帯には「空間の歪み」という消えないバグが残り、今では誰も近づかない呪われた土地となっている。
「レイン様。この区画、空間安定ログが極めて不安定です。建築物としての強度はゼロ。……居住には適しません」
「いや、エステル。むしろ『不安定』だからこそ都合がいいんだ」
俺は工場の中心、かつて魔力炉があった巨大な空洞に立った。
ここは、世界のシステムが「正常な座標」を維持するのを諦めた場所。
つまり、俺のスキルで『定義』を上書きするのが最も容易な場所だ。
「エステル、入り口を固めろ。……これから、ここを世界の『特異点』に変える」
俺は地面に手を突き、深層から持ち帰った「無限の宝箱」を解き放った。
中から溢れ出すのは、数千年前の壊れた魔導パーツ、意味不明な文字列が刻まれた石版、そして――膨大な『エラーログ』。
(定義開始。対象、この廃工場の全域)
$$
\text{Re-Definition Formula:} \\
\text{Space} = (\text{Physical Dimension}) \div (\text{Data Density}) \\
\text{If } \text{Data Density} \to 0, \text{ Space} \to \infty
$$
「【ログ一括廃棄】――対象、『壁』および『空間の占有面積』」
パキィィィィィィィン!!
空間が割れるような音が響き、廃工場の景色が歪んだ。
外から見れば、相変わらずボロボロの廃工場のままだろう。
だが、一歩足を踏み入れた内部は、広大な白銀の空間へと変貌していた。
俺は「狭い」というログを廃棄し、内側の空間だけを数千倍に拡張した。
さらに、山積みのジャンクパーツに手をかざす。
「次はインフラだ。……『熱量』を捨てて『電力(魔力)』に変え、『摩擦』を捨てて『超伝導』を維持しろ」
俺の指先から放たれる黒い光が、ガラクタたちを強制的に再結合させていく。
廃棄された剣の柄がセンサーになり、割れた水晶玉が超高性能な演算機へと昇華される。
数分後。
そこには、最新鋭の魔導研究所さえも過去のものにする、巨大な【デバッグ・コントロール・センター】が鎮座していた。
「……信じられません。物理法則を無視した、ログの直接結合……。レイン様、あなたは世界を『再構築』しているのですか?」
「再構築なんて大層なもんじゃない。俺はただ、誰もが『使えない』と捨てた可能性を、あるべき場所に置いただけだ」
俺は操作パネル(元・錆びた鉄板)を叩き、王都全域の「ログ観測」を開始する。
画面には、ヴォルグたちのパーティメンバーの動向が、リアルタイムで赤く点滅していた。
「見てろ、ヴォルグ。君たちが『正解』だと信じているクエストの先に、俺が用意した『特大のバグ』を置いておいてやる」
その時、拠点の外壁に設置したセンサーが、侵入者の反応を捉えた。
『警告:未知の個体が結界に接触。……解析不能な「聖属性ログ」を検知』
モニターに映し出されたのは、ボロボロの法衣を纏い、力尽きて倒れ込んだ一人の少女だった。
彼女の背中には、教会の「破門者」を示す刻印――そして、全身に溢れ出す「呪いの苦痛」が黒い霧となって漂っている。
「……第2の『ゴミ』が、転がり込んできたみたいだな」
俺はエステルと共に、入り口へと向かった。
それが、後に「世界の聖女」と呼ばれることになる、もう一人の欠陥品との出会いだった。
第5話をお読みいただき、ありがとうございます!
廃工場が一瞬で「オーバーテクノロジーの秘密基地」に変わる爽快感、
楽しんでいただけたでしょうか?
ついに二人目のメインヒロイン、聖女リーゼが登場しました。
彼女の持つ「呪い」もまた、レインにとっては最高の「資源」に過ぎません。
「拠点の改造がロマンすぎる!」「新キャラの活躍が楽しみ!」
そう思った方は、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価】をお願いします!
皆さんの評価ログが溜まるほど、拠点の設備がさらに凶悪(?)に強化されます。
第6話、リーゼの呪いを「廃棄」し、彼女を絶望から救い出す
――と同時に、彼女を追ってきた「教会の追っ手」を論理で粉砕します!
次回もお見逃しなく!




