第3話: バグ・オーバーフロー ――「無限」を「一箱」に詰め込む、規格外のストレージ。
「エステル。お前、その腕……馴染みはどうだ?」
廃棄区画のガラクタを漁りながら、俺は背後を歩く少女に問いかけた。
再構築された彼女の右腕は、時折、淡い青の回路を明滅させている。
「……良好です。以前のオリジナルの腕よりも、神経伝達ログのレスポンスが0.002秒高速化しています。レイン様、これは……」
「『失敗したログ』を削ぎ落として、成功の『結果』だけを抽出して繋ぎ合わせたからな。理論上、それは『この世界で最も効率的な腕』だ」
俺は歩みを止め、目の前にある「巨大な立方体」を見上げた。
それは、かつてこの世界の管理システムが『容量不足』を起こし、物理的に切り捨てた「空間の欠片」だった。
世間では【壊れた収納箱】と呼ばれ、何を入れても二度と取り出せない呪いのアイテムとして捨てられたゴミだ。
「マスター。その箱からは、深刻な次元崩壊ログが漏洩しています。近づくのは危険です」
「いや、逆だよエステル。中身が取り出せないのは、入り口の『座標ログ』がゴミデータで埋まっているせいだ。なら――」
俺は【ログ廃棄】を、その「箱の入り口」にだけ集中して発動させた。
入り口を塞ぐ数千人分の「取り出し失敗」という無駄な履歴を、一気に消去する。
『システム:座標エラーをクリーンアップしました』
『ストレージ・アクセス:正常(容量:測定不能)』
パカッ、と乾いた音を立てて箱が開いた。
中は、一見するとただの暗闇。だがその奥には、数千年にわたって世界が捨ててきた「超高純度の魔石」や「伝説級の武具」が、文字通り山となって眠っていた。
「……信じられません。失われたはずの神器が、これほど……」
「あいつらは『中身が取り出せないからゴミ』だと判断した。だが俺にとっては、入り口を掃除するだけで手に入る『無料の宝箱』だ」
俺は山積みの財宝には目もくれず、一番下にあった「錆びついた一枚の硬貨」を拾い上げた。
それは、貨幣ではない。
【システム管理用・緊急帰還キー】。
特定の座標へ一瞬で移動するための、「移動ログの強制実行デバイス」だ。
だが、このキーは一度使うと壊れる使い捨て(パッシブ)アイテム。
おまけに、現在は「使用ログ」がロックされており、誰も使えないはずの代物だった。
「……レイン様。まさか、そのロックさえも」
「ああ。ロックという『制約ログ』を廃棄すれば、これは何度でも使える『無限ワープゲート』に化ける」
俺が手をかざすと、錆びついた硬貨が黄金の輝きを取り戻す。
$$
\text{Item Transformation:} \\
\text{[Broken Key]} \xrightarrow{\text{Log Erasure}} \text{[Infinite Reality Gate]} \\
\text{Cooldown: } \cancel{999 \text{ hours}} \to 0 \text{ sec}
$$
俺はエステルの手を取った。
彼女の冷たい、だが温もりを感じさせる機械の指が、俺の手を握り返す。
「さあ、地上に戻ろう。……俺をゴミ箱に蹴り落としたヴォルグたちに、今の俺たちがどう見えているのか。確認しに行かないとな」
俺は「帰還ログ」を起動させた。
視界が真っ白に染まる。
次に目を開けた時。
俺たちが立っていたのは、あの『蒼天の塔』のギルド入り口。
そこには、俺を追放して祝杯を挙げにきたヴォルグたちが、ちょうど馬車から降りる姿があった。
「あ……? おい、見ろよ。あそこにいるの、レインじゃねえか?」
「は? バカ言え、あいつは奈落に落ちて死んだはずだぞ」
驚愕に目を見開くヴォルグたち。
その隣で、俺はエステルの肩を抱き、あえて無関心を装って歩き出す。
「……エステル。あそこに立っている『ゴミ』を認識できるか?」
「はい。マスター。……廃棄、しますか?」
エステルの瞳が紅く輝き、背部から超高出力の熱線が漏れる。
その圧倒的なプレッシャーに、Sランクパーティの面々が、まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直した。
「いや、まだいい。ゴミは溜まってからまとめて捨てる方が、効率がいいからな」
俺たちは、腰を抜かして座り込むかつての仲間を、ただの風景として通り過ぎた。
ここからが、真の「清掃」の始まりだ。
奈落から無傷で、しかも最強の美少女と「無限の宝」を抱えて帰還したレイン。
ヴォルグたちの「ありえない!」という顔、スカッとしていただけましたか?
「この先のざまぁ展開が気になる!」「エステルのビームをもっと見たい!」
そう思った方は、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価】をお願いします!
皆さんの評価が多ければ多いほど、レインの「未定義データ」が溜まり、
次回、さらなる驚愕の「システム・ハック」が炸裂します。
第4話からは、いよいよ地上での「拠点作り」と「ギルドの価値観破壊」編に突入です!




