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第23話: バグが神を超える瞬間 ――「初期化」を「大型アップデート」に書き換える。

『警告:管理者ユニット [Avatar_Zero] のロストを確認。……バックアップが存在しません。……初期化フォーマットプロセス、最終段階(フェーズ3)へ移行します。……残り120秒で、全ディレクトリを消去します』


 白銀の「空白の部屋ヌル・スペース」に、無機質なアラートが鳴り響く。

 アバター・ゼロが消滅したことで、システムは自律的な「自壊モード」に入っていた。

 足元から真っ白な虚無が広がり、物理世界から持ち込んだ俺たちの『意識データ』さえも、徐々に輪郭を失っていく。


「……レイン様。……世界が、完全に消えようとしています。……もう、間に合わないのですか?」


 リーゼが透き通るような手で俺の服を掴む。

 彼女の「聖女」としての存在ログも、もはやこの上位階層の消去命令の前では、塵ほどの抵抗にもならない。


「ふん、神様も往生際が悪いわね。……あんた、何か策があるんでしょうね? じゃないと、レベル99まで上げた私の努力が全部『無』になっちゃうわよ!」


 シルフィが、消えゆく魔力回路を必死に繋ぎ止めながら、俺を睨みつける。

 エステルは無言で俺の前に立ち、残されたわずかな演算能力をすべて「俺の保護」に回していた。


「……策? そんなもの、最初から決まっている」


 俺は、激しくスパークを上げる【世界制御核ワールド・コア】の前に立ち、その光り輝くインターフェースへと直接、両手を突っ込んだ。


「初期化を止める必要はない。……『消去』という命令を、俺たちの都合の良い『更新アップデート』へと、リダイレクトしてやるだけだ」


$$

\text{Log Override Protocol:} \\

\text{Command: [Format_C:]} \xrightarrow{\text{Intercept}} \text{ [Update_v1.0.6]} \\

\text{Target: [Trash_Logs]} \xrightarrow{\text{Convert}} \text{ [System_Resources]}

$$


「【ログ一括廃棄】――対象、システムの『初期化命令の宛先』、および『失敗を不要とする排他的なルール』」


 俺の脳内に、世界を構成する数千億行のソースコードが直接流れ込む。

 普通なら一瞬で脳が焼き切れる情報の濁流。

 だが、俺は「ゴミ拾い」として、無数の失敗作ジャンクを処理してきた経験がある。


「今まで俺が拾い集めてきた『ゴミ』……。旧世界の敗北ログ、聖女の苦痛、王女の余剰経験値、そして俺を捨てた連中の絶望。……これらすべてを、新しい世界の『根幹カーネル』にパッチとして組み込む!」


 俺の全身から、漆黒のノイズと黄金の光が混ざり合った「因果律の奔流」が溢れ出し、ワールド・コアを無理やり侵食オーバーライドしていく。


『エラー:未定義のパッチファイルが注入されました。……整合性が崩壊します。……強制終了……強制終……ッ!?』


「黙れ。……バグ(俺たち)が神を超えるってのは、こういうことだ」


$$

\text{New World Specification [v1.0.6]:} \\

\text{1. Define [Failure] as [Experience_Bonus]} \\

\text{2. Restrict [God_Login_Permission] = DENIED} \\

\text{3. Add User: [Rain] as [Root_Administrator]}

$$


「【事象強制確定】――世界再定義リライト・スタート!!」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 「空白の部屋」が、眩い閃光に包まれた。

 消去されるはずだったデータが、俺が注入した「ゴミ(ノイズ)」と結合し、全く新しい、より強固な、より「不純で力強い」形へと再構築されていく。


 俺の視界の中で、消滅しかけていたシルフィの魔力が虹色に弾け、リーゼの祈りが実体を持った光の鎖となり、エステルの機械の身体が、命を持った「生体金属」へと進化していくのが見えた。


『アップデートを完了しました。……Version 1.0.6 [Re-Defined World] を起動します。……ようこそ、管理者ルートレイン』


 気がつくと、俺たちは王都の空の上に浮いていた。

 

 剥がれ落ちていた空は、以前よりも深い青色で再定義され、データの尘となっていた王都の建物は、寸分違わぬ姿で、だがどこか「力強さ」を増して復元されている。


「……戻ったの? 私たち、本当に……世界を救ったの?」


 シルフィが、信じられないという様子で自分の手を見つめる。

 レベル99という枠さえ超え、彼女の魔力は今や「世界の法則」そのものと同期していた。


「救った? 違うな。……『俺たちのもの』にしたんだよ」


 俺は、指先で空中に操作パネルを呼び出す。

 そこには、俺を捨てたヴォルグたちの「再定義されたステータス」が表示されていた。

 彼らのレベルやスキルは、俺の気まぐれ一つで、いつでもゴミ箱へ送ることができる。


「……レイン様。……地上で、人々があなたを『新しき神』として称えています」


 リーゼが、畏怖と愛着の入り混じった瞳で俺を見上げる。


「神になんて興味はない。……俺はただ、これからもこの世界の『バグ(不条理)』を掃除し続けるだけだ」


 俺は、新しく生まれ変わった世界の地平線を見つめ、ニヤリと口元を歪めた。

 だが、その時。

 俺の網膜の隅に、再定義したはずのログには存在しない、**「外部からの通信」**がポツリと表示された。


『……面白い。Version 1.0.6。……テストサーバーを乗っ取った個体を確認。……上位サーバーへの接続を許可します』


「……上位サーバー?」


 俺は、その不気味なメッセージを睨みつけた。

 どうやら、この世界の掃除が終わったところで、**「本当のゴミ捨て場(広大な宇宙のバグ)」**が俺を待っているらしい。

第23話をお読みいただき、ありがとうございます!

「初期化命令をリダイレクトして、世界を自分仕様にアップデートする」!

バグが神を超え、管理者権限を手にする瞬間、楽しんでいただけましたか?


ついに「管理者レイン」が誕生しました。

しかし、最後に届いた「上位サーバー」からの不気味な招待状……。

「神を倒して終わりじゃない展開にワクワクする!」「次のステージの無双も見たい!」

そう感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!


皆さんの評価ログこそが、レインが上位サーバーへ殴り込むための「アクセスキー」となります。

次回第24話、第2章完結!

新世界での「後始末」と、さらなる深淵へと続く『第3章』への序幕。

ゴミ拾いの伝説は、まだ始まったばかりです。次回もお見逃しなく!

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