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第20話: 棄てられたプロトタイプ ――数千億の「敗北」を束ね、世界の処理能力をパンクさせる。

視界の全てが、光り輝く文字列の奔流に埋め尽くされている。

 【根源階層ルート・レイヤー】。物理的な肉体を脱ぎ捨て、情報体データへと変換された俺たちにとって、この場所はもはや「世界」ではなく、巨大な「コンソール画面」に過ぎなかった。


「……マスター。前方1.04テラ・ユニット先に、巨大な『データ・ジャンク』の堆積を確認。……Version 1.0.1、1.0.2、及び1.0.3の残骸です」


 データの海を高速で泳ぐエステルが、指を差す。

 そこには、幾何学的な光の川を堰き止めるように、巨大な「黒い塊」が浮かんでいた。

 それは、今のVersion 1.0.5が完成するまでに創造主が「失敗」と断じて消去した、かつての世界の記憶。

 魔王に滅ぼされた都。英雄が死に絶えた荒野。進化に失敗した異形の生物群。


「……うわ、何これ。見てるだけで吐き気がするわ。……何千億人分の『死にたくない』ってログが、ヘドロみたいに固まってる」


 シルフィが顔を青くして、自らの魔力膜を強化する。

 情報の密度があまりに高すぎて、触れるだけで意識ログが汚染ノイズされそうになる。


「……レイン様、あれを『廃棄』するのですか? あまりに巨大すぎて、今の私たちの処理能力では……」


「いいや、リーゼ。廃棄はしない。……むしろ、これらを一時的に『復元ロード』して、システムに再認識させる」


 俺は操作パネルを広げ、その「黒い塊」に手をかざした。

 普通のプログラマーなら、こんな汚染されたジャンクデータは二度と触らないだろう。

 だが、俺は「ゴミ拾い」だ。


「創造主は、失敗作を消去してメモリを空けたつもりだろうが……パッチの当て方が甘い。消去されたログの『インデックス』だけは、まだこの階層に残留してるんだよ」


 俺は【残滓抽出】と【管理者権限】を全開にする。

 狙うのは、ゴミの消去。ではなく――**「ゴミの再定義リネーム」**。


「【ログ一括再定義】――対象、Version 1.0.1から1.0.3の全廃棄ログ。……これらを『現在進行中の重要プロセス』として、システムに強制報告レポートしろ」


$$

\text{System Overflow Logic:} \\

\text{Step 1: Aggregate(Deleted\_Logs[v1.0.1..1.0.3])} \\

\text{Step 2: Rename as [Active\_System\_Task]} \\

\text{Step 3: Force Inject into [CPU\_Scheduler]}

$$


「【事象強制確定】――『失敗の再起動リブート・オブ・フェイラー』!」


 ゴォォォォォォォォォォォォォォン!!


 データの海が、激しく波打った。

 俺がゴミの山に「これはゴミじゃない、今すぐ処理すべき超重要案件だ」という偽のラベルを貼ってシステムに送り込んだ瞬間。

 世界を初期化しようとしていた創造主のメインプログラムが、突如出現した「数千億人分の未処理データ」を計算しようとして、悲鳴を上げた。


『警告:処理能力リソースが不足しています』

『警告:スタック・オーバーフローを検知。……初期化プロセスを一時停止します』


「……やった! 空の剥落が止まったわ! 世界の初期化が、フリーズしてる!」


 シルフィが歓喜の声を上げる。

 王都を飲み込もうとしていた消去コマンドの光が、処理落ちを起こしたゲームのようにカクつき、停止していた。


「……マスター。……システム全体のクロック数が、通常の0.0001%まで低下。……防衛プログラムの動きも完全に止まりました」


「今のうちに、このゴミの山の中に隠されている『管理者用バックドア』を探す。……創造主がこのサーバーにログインするための、唯一の入りポートだ」


 俺は、フリーズした情報のゴミ山の中へとダイブした。

 数千万の死。数億の絶望。それらが、俺の脳内に直接流れ込んでくる。

 だが、そのノイズの合間に、一箇所だけ――不自然なほど「整った」コードの塊を見つけた。


$$

\text{Port Identified: [Admin_Entrance_#000]} \\

\text{Security: [Read-Only (書き換え不可)]}

$$


「見つけた。……ここが神の座への入り口だ」


 俺は、エステルとリーゼ、シルフィを呼び寄せる。

 書き換え不可リードオンリーのロック。

 だが、そんなものは俺の【ログ廃棄】にとっては、「ロックが掛かっている」という事実を捨てるだけで済む話だ。


「さあ、お掃除の時間だ。……神様、あんたが捨てた『失敗作』のせいでシステムがパンクした気分は、どうだい?」


 俺たちは、フリーズした世界の裂け目から、創造主が座る「真の最上階」へと足を踏み入れた。

第20話をお読みいただき、ありがとうございます!

「ゴミを無理やり重要案件として再起動させて、神のPCをフリーズさせる」という、

デバッガーならではのエグすぎる攻略法、楽しんでいただけましたか?


ついに「神の座」への入り口を見つけたレインたち。

そこは、この世界の全ての運命が決定される場所です。

「ゴミの山を武器にする発想が最高!」「フリーズしてる隙にダイブするの格好いい!」

そう感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!


皆さんの評価ログこそが、フリーズしたシステムをこじ開ける「管理者パスワード」となります。

次回第21話、ついに創造主が送り込んだ「究極の代弁者」との対面。

そして、レインの論理が「書き換え不可」のルールをブチ壊します!

次回もお見逃しなく!

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