表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

第17話: 論理(ロジック) vs 幸運(フォーチュン) ――「100%の必然」を「0.0001%の偶然」が踏み躙る。

「あー、やっと着いた! ここが王都のコントロール・センターってやつ? 意外とボロい工場なんだなー」


 静寂に包まれていた廃工場のエントランス。

 俺が張り巡らせた、侵入者の『存在ログ』を1ビットの狂いもなく検知する超高度セキュリティ・グリッドを――そいつは、鼻歌混じりに通り抜けてきた。


「マスター。……個体名:カイ。職業:【幸運の勇者】。……不可解です。彼は現在、第3障壁の自動迎撃レーザーを『靴紐を結び直すために屈んだ』という動作のみで回避しました」


 エステルが困惑したように報告する。

 モニターに映るその男、カイは、見た目こそどこにでもいる軽薄な少年だが、その周囲の「因果律」が異常なまでに歪んでいた。


「……計算が合わん。あのレーザーの射線は、屈んだ程度で避けられる角度じゃないぞ」


「たぶん、たまたま地面が数ミリ沈んだか、レーザーの発振器が一瞬だけ熱膨張で歪んだのかもね。……嫌な予感がするわ、レイン。あいつ、理屈が通じないタイプよ」


 シルフィが忌々しそうに魔力を練り上げる。

 俺は椅子から立ち上がり、エントランスへと向かった。

 

 扉が開くと、そこには抜けたような笑顔を浮かべたカイが立っていた。

 背負っているのは、伝説の聖剣ですらない、その辺の道具屋で買ったような「なまくら」の短剣。だが、その短剣には『何故か一度も刃毀れしたことがない』という異常なログが蓄積されていた。


「よお、あんたが新しい管理者のレインだろ? 王宮の偉い人たちが困ってたぜ。勝手に金を鉄くずに変えたり、天使を壊したりしてるってさ。悪いけど、ちょっとお仕置きしに来たわ」


「お仕置き、か。……【幸運の勇者】。お前のログを解析させてもらったが、レベルはわずか30。ステータスも平凡。……本来なら、エステルの一撃を待たずとも、俺が『存在を廃棄』して終わる話だ」


「へへ、よく言われるよ。でもさ、俺、今まで負けたことないんだよね。……なんか、運がいいから」


「……試してみるか。……【ログ一括廃棄】――対象、カイの持つ短剣の『物理的結合ログ』」


 俺が操作パネルを叩き、因果を確定させる。

 本来なら、彼の短剣は一瞬で塵となって消えるはずだった。


$$

\text{Causality Execution:} \\

\text{Target: [Iron Dagger]} \xrightarrow{\text{Discard [Structure Log]}} \text{Status: DESTROYED} \\

\text{Success Probability: } 100\%

$$


 だが。

 

 カチッ、と。

 俺の指先が操作パネルを叩いた瞬間、何故かパネルの表面に一粒の埃が挟まり、信号が0.01ミリ秒だけ遅延した。

 さらにその瞬間、カイが「あ、くしゃみ出そう」と鼻を擦った。

 そのわずかな姿勢の変化と信号の遅れが重なり、俺の『廃棄ログ』の座標が、わずか1ピクセルだけズれた。


『ミス:対象を見失いました』


「……なんだと?」


「おっと、今の危なかった? なんか空気がピリッとしたなー。あ、そうだ。お返しにこれ、受けてみてよ!」


 カイが適当に短剣を振り回す。

 技術も、魔力もない。素人の滅茶苦茶なスイングだ。

 

 だが、その刃先が、俺の拠点の『絶対防御障壁』の、10万年に一度だけ発生する「魔力の干渉縞が重なる瞬間的な盲点」を、針の穴を通すような精度で貫通した。


「……ッ!? リーゼ、防御!」


「はい! ……えっ、障壁が、すり抜けて……!?」


 リーゼの聖なる盾さえも、カイが「たまたま足元の石に躓いた」ことによる不規則な挙動で回避され、そのなまくら刀が俺の胸元に迫る。


$$

\text{Probability Anomaly:} \\

\text{Attack Hit Rate: } 0.000001\% \xrightarrow{\text{RNG Roll: 000001}} \text{Status: CRITICAL HIT}

$$


「……チッ。エステル、弾け!」


 キィィィィィィィン!!


 エステルが割り込み、間一髪で短剣を弾き飛ばす。

 だが、弾き飛ばされた短剣は、放物線を描いて天井の『非常用スプリンクラーのスイッチ』にたまたま直撃した。


 降り注ぐ水。

 精密機械の塊であるコントロール・センターが、ショートを起こして火花を散らす。


「……あはは、ごめん! なんか大変なことになっちゃったな!」


「……なるほど。これが『幸運』。……ロジックを無視した、システム上の『乱数バグ』そのものか」


 俺は濡れた前髪をかき上げ、冷徹な瞳でカイを見つめた。

 

 こいつは強いのではない。

 世界という計算機が、こいつに対してだけ、常に『最も都合の良い乱数』を吐き出し続けているのだ。

 

「面白い。……確率のゆらぎ程度で、俺のデバッグが止まると思うなよ」


 俺の脳内演算が加速する。

 100%の必然が効かないなら、**『幸運というリソースそのもの』**を枯渇させてやるまでだ。


「第ニ回戦だ、勇者。……お前の運が尽きるのが先か、俺の論理が世界を上書きするのが先か……証明してやる」

第17話をお読みいただき、ありがとうございます!

「靴紐を結び直してレーザーを避ける」という、

ロジカルな主人公が最も嫌う『運ゲー』の体現者、カイ。

レインの緻密な計算が「埃ひとつ」で狂わされる展開、いかがでしたか?


「この勇者、イラつくけど強い!」「レインがどうやって運をハックするのか見たい!」

そう感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!


皆さんの評価ログが、レインの次なる作戦「幸運の強制消費」の成功率を100%に固定します。

次回第18話、論理vs幸運、決着!

「運がいいなら、その運を今すぐ全部使わせてやるよ」

レインのえげつない『確率デバッグ』が炸裂します。次回もお見逃しなく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ