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第15話: 過去ログの呼び声 ――「敗北した世界」の残骸を、最強のパッチに変換する。

「……マスター。その区画へのアクセスは推奨されません。論理汚染ロジカル・エラーの濃度が、致死量を超えています」


 コントロール・センターの最深部。

 エステルが、警告灯のように赤く光る瞳で俺を制した。

 俺の前には、第3話で「座標の目詰まり」を直して以来、放置していた【無限の宝箱】が鎮座している。

 だが、今の俺には見える。この箱の底に、今のシステムが「なかったこと」にした、膨大な**『旧世界のゴミ(削除済みログ)』**が沈んでいるのが。


「大丈夫だ。……俺は『ログ廃棄係』だぞ。ゴミに呑まれるようなヘマはしない」


 俺は操作パネルを展開し、箱の最下層ディレクトリへと強制アクセス(ルート・ダイブ)を仕掛けた。


『警告:未定義のアーカイブ・ファイルに接触』

『注意:このデータは [Version 1.0.4 - World_End] の残滓です』


「……Version 1.0.4? 今の世界は 1.0.5 か。……やっぱりな。この世界は何度も『やり直されてる』んだ」


 俺は暗闇の中に手を突っ込み、一つの「塊」を引き抜いた。

 それは、真っ黒に錆びつき、刀身の半分が砕け散った――かつての『聖剣』だった。

 だが、ヴォルグが持っていたような現行の聖剣とは、放つ「重圧」の桁が違う。


「……ひっ!? な、何よその剣……。見てるだけで、魂が削られるような……」


 レベル99のシルフィでさえ、その剣が放つ『絶望のログ』に顔を青くして後ずさった。

 リーゼは反射的に祈りを捧げているが、その聖なる魔力さえも、剣の周囲ではノイズとなって霧散していく。


「これは『前の世界線』で魔王に敗北し、世界ごと消去された勇者の終焉ログだ。……システムはこの敗北を『ゴミ』として捨てたが、そこには数千万人の死と、一人の英雄の全力が詰まってる」


$$

\text{Item Analysis: [Broken Holy Sword of Despair]} \\

\text{Status: [Deleted Data]} \\

\text{Attached Log: [Absolute Defeat] / [Extinction of Humanity]}

$$


「マスター。……その剣をどうするつもりですか? それはもはや、武器として機能しません」


「いや、エステル。……この剣が『壊れている』のは、勇者が『負けた』という結果が固定されているからだ。……なら、その『敗北した』という事実ログだけを廃棄すればどうなる?」


 俺は【ログ一括廃棄】を発動した。

 対象は、剣にこびりついた「絶望」と「敗北の結果」。


「【ログ廃棄】――『勇者が死んだ』という過去を捨てて、『勇者が最後に放った一撃』というエネルギーだけを抽出サルベージしろ」


$$

\text{Causality Salvage:} \\

\text{[Final Strike Energy]} \cancel{ + \text{ [Result: Defeat]}} = \text{[Pure Potential Power]} \\

\text{Attribute: [Dimensional Erasure (次元消去)]}

$$


 ドクン、と黒い剣が脈動した。

 錆が剥がれ落ち、中から現れたのは、光さえも吸い込む「虚無の刃」。

 それはもはや剣ではない。**『切るという事象を強制実行するプログラム』**そのものだ。


「……エステル。これを、お前の右腕(再構築アーム)にインストールする。……お前はこれから、物理法則を斬るんじゃない。……敵の『存在ログ』そのものを直接、次元ごと消去できるようになる」


「了解。……パッチを適用します。…………ッ!?」


 インストールが完了した瞬間、エステルの右腕から黒い閃光が走り、コントロール・センターの空間がミシリと軋んだ。

 彼女のステータス画面が、一瞬で『管理者専用アドミン』の黒い配色に書き換わる。


「……凄まじい。……マスター。これなら、先ほどから接近している『システムの防人アンチウイルス』も……『無』に帰せます」


「ああ。……さあ、来たぞ」


 天井を突き破り、白銀の光が降り注ぐ。

 そこには、翼を持たない、幾何学的な結晶体で構成された「天使」のような存在が浮かんでいた。

 

『個体名:レイン。……世界の整合性を著しく乱すバグと判定。……強制終了シャットダウンを開始します』


 感情のない、機械的な合成音声。

 それこそが、世界システムが「不都合な真実レイン」を消すために送り出した、アンチウイルス――**【聖域の執行者:セラフィム・ルート】**。


「シャットダウン、か。……悪いが、俺の辞書ログに『敗北』という単語はもう入っていないんだ。……ちょうどいい、旧世界の『ゴミ』の威力を試させてもらうぞ」


 俺はエステル、リーゼ、シルフィに合図を送る。

 

 システムの最高傑作と、システムの落とし子たち。

 どちらの論理が、この世界を支配するに相応しいか。

 

 第2章・最初の頂上決戦。

 ――その幕が、上がった。

第15話をお読みいただき、ありがとうございます!

「過去の敗北ログを捨てて、最強のエネルギーだけを取り出す」という

レインならではの超次元的なデバッグ術、いかがでしたか?


ついに現れた「世界の防人」。

彼らは魔法も物理も通じない「システムそのもの」の化身です。

果たして、旧世界の遺産をパッチしたエステルの『次元消去』は通用するのか!?


「設定のスケールがどんどんデカくなるのが最高!」「エステルの新武装にワクワクする!」

そう感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!

皆さんの評価ログが溜まるほど、レインの論理は「神」の領域へと近づきます。


次回第16話、VSアンチウイルス!

「存在すること」自体を禁じられたレインたちが、

世界のルールを逆にハックして、神の使いをゴミ箱へ送ります!

次回もお見逃しなく!

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