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第13話: 国家のデバッグ、開始 ――「利権」という名の不要データを一括削除する。

「認めん! 断じて認めんぞ! あのような『ゴミ拾い』に、この国の管理を任せるなど!」


 王城の円卓会議室。

 豪奢な服に身を包んだ大貴族たちが、顔を真っ赤にして叫んでいた。

 中心に座るバルナバス公爵は、肥え太った腹を揺らしながら、目の前に座る青年――レインを汚物でも見るかのように睨みつける。


「陛下も御乱心だ。魔王軍を追い払った手柄は認めよう。だが、国政は『システム』を知る我々貴族の特権。ログ廃棄係ごときが首を突っ込む領域ではない!」


 彼らの背後には、王国の経済を支える巨大な金庫の鍵や、領地の利権を記した魔導書が積み上げられている。

 彼らは信じているのだ。たとえ王が権限を譲渡したとしても、実質的な「富」と「コネクション(接続ログ)」を握っているのは自分たちであると。


「……終わったか?」


 俺は、会議室の隅でエステルが淹れた茶を啜りながら、淡々と問いかけた。

 横には、レベル99の魔力を隠そうともしないシルフィが退屈そうに爪を眺め、リーゼが慈愛に満ちた(だが、どこか冷徹な)微笑みを浮かべて控えている。


「貴様……! 聞いているのか! 我々が資金提供を止めれば、この国の運営ログは一日で停止するのだぞ!」


「ああ、聞いている。……君たちの言う『資金』や『利権』。それはシステム上、非常に効率の悪い『重複データ』だ。……だから、今この瞬間、すべて廃棄デリートした」


 俺が指先で空中に展開した【管理者・操作パネル】を軽くタップする。


「な……何を言っている?」


「エステル。解析結果を」


「了解。マスター。……バルナバス公爵を含む大貴族三十三名の『個人資産ログ』、及び『土地所有権の接続パス』を特定。……全てのデータに『破損コリジョン』属性を付与。……廃棄準備、完了しています」


 俺はニヤリと口元を歪めた。


「バルナバス公爵。君が地下金庫に隠している三千万ゴールド。あれ、今はただの『輝く石のゴミ』に書き換えておいた。……システムが、あれを『通貨』として認識するのを止めたからな」


$$

\text{Economic Re-Definition:} \\

\text{Currency [Gold]} \xrightarrow{\text{Owner: Noble}} \text{Status: [Discarded Data]} \\

\text{Currency [Gold]} \xrightarrow{\text{Owner: Kingdom}} \text{Status: [Valid Log]}

$$


「ば、バカな!? 金は金だ! 誰が持っていようと価値は変わらん!」


「それは『旧OS(古い常識)』の話だ。……俺が管理者である以上、俺が『価値がない』と定義したものは、この世界の演算式から除外される」


 バルナバスが慌てて懐から金貨を取り出す。

 だが、その瞬間。金貨に刻印されていた王国の紋章が消え失せ、ただの「ただの金属の塊」へと変質した。

 ギルドの決済システムも、商人の帳簿も、今この瞬間、彼らの資産を『存在しないエラー』として処理し始めたのだ。


「ひ、ひぃぃ!? 私の、私の全財産が……!?」


「安心しろ。消去したんじゃない。……『国庫』という、より効率的なディレクトリに移動ムーブさせただけだ。……君たちが民から吸い上げ、淀ませていたログ。それを、インフラ整備と魔導障壁の維持に再割り当て(リビルド)させてもらった」


 俺は立ち上がり、絶望に膝をつく貴族たちの間を悠然と歩く。


「暗殺計画も無駄だぞ。君たちが雇った暗殺者の『殺意(攻撃ログ)』は、発動する前に俺の拠点が自動で検知して廃棄する。……君たちはもう、この世界に干渉する権限(アクセス権)を持っていないんだ」


「レイン……貴様、人間じゃない……! 悪魔だ……!」


「デバッガーと呼んでくれ。……不具合バグを放置できない性分でね」


 俺は、震える手で俺を指差す彼らを無視し、シルフィに向き直った。


「シルフィ。次は王宮魔導師団の再編だ。……無能なコネ入隊者たちの経験値を一括廃棄して、やる気のある若手に分配するぞ」


「いいわね! 才能の再分配、最高に楽しそうじゃない!」


 一国の経済と階級社会が、わずか数分の「作業」で崩壊し、再構築されていく。

 かつて俺をゴミと呼んだ世界は、今や俺の手のひらで、たった一ビットの狂いもなくデバッグされていた。


 だが、その時。

 俺の網膜に、第1章のラストで見たあのアラートが、より鮮明に表示された。


『警告:システムへの過剰介入を確認』

『セキュリティ・プロトコル:[聖域の執行者] を解凍ロード中……』


「……来たか。システム側の『アンチウイルス』」


 俺は、窓の外に広がる青空の向こう側に、次元の裂け目が生じているのを見逃さなかった。

 世界そのものが、俺という「異物」を排除しようと動き始めている。


「面白い。……プログラムのバグを直すだけじゃ飽きていたところだ。……システムそのものと、どちらの論理が上か、決着をつけようじゃないか」

第2章・第1話(第13話)をお読みいただき、ありがとうございます!

「金貨をただの鉄くずに変える」という、管理者権限ならではのえげつない無双。

経済的に詰ませるカタルシス、楽しんでいただけましたか?


ついに「世界システム」が、レインを正式な脅威ウイルスとして認識しました。

ここからは人対人を超え、世界そのものとの「論理の奪い合い」が始まります!


「内政無双のテンポが良い!」「アンチウイルスの正体が気になる!」

そう感じていただけましたら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で応援をお願いします!

皆さんの評価ログが、レインの「管理者レベル」をさらに上昇させます。


次回第14話、利権を奪われた貴族たちの最後あがき……と思いきや、

レインが用意した「物理的なゴミ箱(収容所)」への一括転送が炸裂します!

お楽しみに!

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