表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

第12話: 因果の清掃人(イレイザー) ――「世界」というシステムを、僕の色に書き換える。

「……許可する。レイン、貴殿にこの王国の『管理者権限』を、暫定的に譲渡しよう」


 国王の、震えるが、覚悟を決めた声が競技場に響いた。

 大貴族たちから悲鳴のような反対の声が上がったが、王はそれを手で制する。目前に迫った魔王軍という「滅びのバグ」を前に、プライドを捨てて実利を取ったのだ。


「賢明な判断だ、陛下。……では、デバッグを開始する」


 俺はコントロール・センター(元・廃工場)へ意識を飛ばし、王国の基幹システムへとアクセスした。


$$

\text{System Authorization: [Royal Family]} \xrightarrow{\text{Transfer}} \text{ [Rain]} \\

\text{Authority Level: [Administrator (Temporary)]}

$$


『警告:未知の管理者による、システムの再定義(パッチ適用)が開始されました』


 俺の脳内に、世界を構成するソースコードが流れ込んでくる。

 地形、天候、因果律、そして個体の存在確率。

 俺は、その膨大なデータの中から、王都に迫る「魔王軍」の魔力波形ログだけを抽出した。


「エステル、リーゼ。……そしてシルフィ。お前たちの力を、俺の『権限』で結合リンクさせる。……準備はいいか?」


「オールグリーン。マスター。……いつでも『殲滅』できます」

「はい、レイン様。……皆様の命のログ、私が守り抜きます」

「ふふ、王女としての初仕事ね。……全属性の極大魔法、充填完了よ!」


 3人が俺の周囲に集まり、手を重ねる。

 俺を中心とした、前代未聞の【因果律・デバッグ・パーティ】の結成だ。


---


 王都の外壁。

 そこでは、数万の魔王軍の尖兵が、地平線を埋め尽くしていた。

 王国の騎士団は絶望に顔を青ざめ、誰もが滅びを覚悟していた。


「な、なんて数だ……! これが、本物の魔王軍……!」


 だが。

 魔王軍が突撃を開始しようとした、その瞬間。


「【ログ廃棄デリート】――対象、魔王軍の『存在確率』および『熱力学法則』」


 王都の中心から、誰の耳にも聞こえない、だが世界を震わせる「声」が放たれた。


$$

\text{Causality Refinement: [War]} \\

\text{Step 1: } \text{Apply [Log Erasure] to [Enemy Existence Probability]} \\

\text{Result: } 100\% \to 0.000000001\%

$$


 ドォォォォォォォォォォォォォン!!


 爆発音すらなかった。

 ただ、数万の魔王軍のうち、99.9%が、一瞬にして「最初から存在しなかったログ」へと書き換えられ、霧のように消滅したのだ。


 残った数百の、辛うじて存在を保った上級魔族たちが、驚愕に目を見開く。

 だが、彼らに安息の時間は与えられない。


「第ニ工程(フェーズ2)。……シルフィ、リーゼ、エステル。行け」


「ええ、見てなさい! ――『全属性・同時展開エレメンタル・バースト』!」


 シルフィが指先を鳴らすと、上級魔族たちの頭上に、七色の極大魔法陣が、詠唱も充填もなく現出した。

 本来なら王都を灰にするほどの威力の魔法が、数百の魔族だけに集中して降り注ぐ。


「……? 攻撃が……効かない……?」


 一人の上級魔族が、リーゼが展開した「無効化の結界」によって、自分の攻撃ログが廃棄されていることに気づく。


「……『生存』という余計なログは、私が裁断デリートします」


 そして、生き残った魔族たちの背後に、エステルが音もなく現れた。

 彼女の義肢( re-defined arm)が、魔族たちの「物理的耐久ログ」を無視し、存在そのものを切断・廃棄していく。


 わずか一分。

 王都を滅ぼすはずだった数万の魔王軍は、レインたちが一歩も動くことなく、システムのゴミ箱へと「清掃」された。


---


 静まり返る王都。

 騎士団も、国民も、国王も、何が起きたのか理解できず、ただ呆然と空を見上げていた。


 俺は、競技場の中心で、結合リンクを解除した。

 シルフィはレベル99の魔力を使い果たして俺に寄りかかり、リーゼは祈りを捧げ、エステルは静かに刀を納める。


「……陛下。デバッグ、完了です。……『常識システムのバグ』は、綺麗に掃除しておきました」


 俺は、玉座に座る国王へと視線を向ける。

 国王の瞳には、感謝ではなく、本物の「恐怖」が宿っていた。

 一瞬にして数万の軍勢を消し去る力。それは王という「システム内の最高権力」さえも、一瞬で「ゴミ」にできる力だからだ。


「レ、レイン……貴殿は、一体……」


「ただのログ廃棄係ですよ。……さて、陛下。契約通り、この王国のシステム管理は、これより俺が引き受ける。……反論は、認めません(ログに残りません)よ」


 俺は、国王に背を向け、エステル、リーゼ、シルフィと共に、競技場を後にする。

 俺を見捨て、ゴミだと蔑んだ世界。

 これからは、俺という『管理者デバッガー』が、その歪んだシステムを根底から書き換えてやる。


 ゴミ拾いが、世界の因果律を支配する。

 俺たちの「世界の清掃」は、ここから本格化する。


---


 その夜。

 俺は、コントロール・センターで、今日廃棄した魔王軍のログを分析していた。

 数万の魔物の死骸から抽出したデータ。通常なら、それはただの「負の魔力残滓」だ。

 だが、その奥底に、不可解な『エラーログ』が隠されているのを、俺の【残滓抽出】が見逃さなかった。


$$

\text{Error Log: [Unknown Source]} \\

\text{Description: [Simulation\_Test\_#404] - Failure.} \\

\text{Causality Hash: [Corrupted]}

$$


「……シミュレーション、テスト……?」


 俺は、その英単語(未定義言語)を見て、背筋に冷たいものが走るのを禁じ得なかった。

 この世界は、神が作った聖域なんかじゃない。

 何者かが、何かを検証するために作った、ただの『実験場サーバー』に過ぎないのではないか?

 

 そして、魔王軍も、俺を追放した勇者パーティも、俺という『ログ廃棄係』さえも、その実験の一環として配置された、ただの「データ」に過ぎないのではないか?


「……なるほど。世界のバグを消すと思っていたら、俺自身が『最大のバグ』だったってわけか」


 俺は、口元を歪める。

 もしこの世界が、誰かの作った偽物のシステムだというなら、話は早い。


「俺の手で、そのシステム全体を『廃棄デリート』して、俺たちのための『新しい因果律』を再定義デバッグしてやるだけだ」


 ゴミ拾いが、世界のソースコードを書き換える。

第2章「世界のソースコード編」へ続く。

第1章『欠陥職【ログ廃棄係】の理論武装』、完結です!

数万の魔王軍を一歩も動かずに「存在消去」する、

第1章最大、かつ最も「理不尽」なカタルシス、楽しんでいただけたでしょうか?


「1話からの伏線回収が完璧!」「第2章の『世界の真実』が気になる!」

そう感じていただけたなら、ぜひ【ブックマーク】と【ポイント評価(★★★★★)】をお願いします!

皆さんの評価ログが溜まるほど、第2章の「概念破壊」はさらにエスカレートします。


第2章では、レインがこの世界の「管理者」を超え、

世界を作った「創造主プログラマー」へと挑む物語が始まります。

さらに凶悪になるレインの理論武装にご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ