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欠陥職【ログ廃棄係】の理論武装 〜「戦場のゴミ拾い」と追放された最強デバッガー、管理者権限で世界のバグ(勇者)を消去する〜  作者: 神崎ユウト


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1/6

第1話: 「ゴミ拾い」に用はない ――最弱職【ログ廃棄係】、Sランクパーティを追放される。

「ログ」とは、存在の証明だ。


誰かが剣を振れば「振った」というログが残る。

誰かが傷つけば「痛い」というログが残る。

その膨大なデータの集積が、この「世界」というシステムを動かしている。


普通の人間は、そのログを書き換えることはできない。

ただ流れるまま、運命という名の実行プログラムに従うだけだ。


だが、俺は違う。

俺の仕事は、そのログを「捨てる」こと。


……さあ、掃除の時間だ。

まずは俺をゴミと呼んだ、この腐ったパーティの「栄光」から廃棄してやろう。

「悪いがレイン。お前、クビだ」


 迷宮ダンジョン『蒼天の塔』第50階層。

 ボスを討伐した直後の、魔力の残滓が漂う静寂の中で。

 聖騎士ヴォルグの冷徹な声が響いた。


 黄金の鎧を纏った彼は、腰に差した聖剣の柄に手をかけたまま、俺を汚物を見るような目で見下ろしている。

 その背後には、彼を崇拝するパーティメンバーたちが並んでいた。

 治癒術師、魔導師、重戦士。誰もが、俺と視線を合わせようとはしない。


「……理由は、効率の問題か?」


 俺――レインは、足元に転がる『失敗した魔石の破片』を拾い上げながら、淡々と問い返した。

 俺の職業は【ログ廃棄係】。

 戦闘中に発生する「不発魔法の残滓」や「壊れたドロップ品」、さらには「死骸の処理」を行う、サポート職の中でも最底辺とされるゴミ拾いだ。


「効率? ああ、そうだ。それもあるな」

 ヴォルグが鼻で笑う。

「お前が『ゴミ』を片付けるたびに、経験値の取得ログが0.1%ほど減少しているというデータが出た。誤差だと思っていたが、Sランクを目指す俺たちにとって、その0.1%が積み重なれば致命的な遅れになる。わかるか? お前は俺たちの成長を『阻害』しているんだよ」


 それは、この世界の「システム」が導き出した一つの真実だった。

 ログ廃棄係が事象を消去する際、システムはそのプロセスを「無効化」と判断し、わずかに経験値をカットする。

 だが、その代わりに戦場が「清浄」に保たれ、魔力酔いを防いでいる事実に、彼らは気づいていない。


「それに、お前のステータスを見たか? 何度見ても笑えるな」


 ヴォルグが空中に【ステータス・共有表示】を展開した。


$$

\begin{array}{|l|l|}

\hline

\text{名前} & \text{レイン} \\

\hline

\text{職業} & \text{ログ廃棄係(ゴミ拾い)} \\

\hline

\text{レベル} & 18 \\

\hline

\text{攻撃力} & 5 \\

\hline

\text{防御力} & 3 \\

\hline

\text{魔力} & 0 \\

\hline

\text{保有スキル} & \text{【ログ廃棄】【残滓抽出】} \\

\hline

\end{array}

$$


「魔力0。攻撃力は一般人の半分。こんな奴を連れているだけで、Sランクパーティの格が落ちるんだよ。これまでは付き合いで置いてやったが、もう限界だ」


「……そうか。なら、荷物をまとめて街へ――」


「街? 行けると思っているのか?」


 ヴォルグの目が、冷酷な光を宿した。

 彼は足元にある、一際巨大な穴を指差す。

 それは、ダンジョンの管理システムが「不要になったデータ」を物理的に投棄する場所――『奈落のゴミ箱』と呼ばれる、帰還不能の竪穴だった。


「お前はログ廃棄係だろう? なら、最後は自分自身を廃棄してこい。それが、これまで寄生させてやった俺たちへの、せめてもの謝礼だ」


 重戦士が俺の肩を突き飛ばす。

 魔導師が拘束魔法を唱え、俺の自由を奪った。

 俺は抵抗しなかった。……いや、できなかった。


「じゃあな、欠陥品。お前のいた痕跡も、すぐにシステムが消してくれるさ」


 ヴォルグの蹴りが、俺の腹部にめり込む。

 身体が宙に浮き、真っ暗な穴へと吸い込まれていく。

 遠ざかる上層の明かり。嘲笑。蔑みの視線。


 落下しながら、俺はただ、自分の手のひらを見つめていた。

 そこには、先ほど拾った『失敗した魔石の破片』が握られている。


(……本当に、そうかな)


 俺の意識は、加速する落下の衝撃の中でも、恐ろしいほど冷徹に研ぎ澄まされていた。

 ヴォルグたちは言った。俺がログを消すと経験値が減る、と。

 だが、その減った経験値は「消滅」したわけじゃない。

 

 俺のスキル【ログ廃棄】の裏側には、説明文には書かれていない『隠し仕様』がある。

 俺が廃棄したデータは、消えたのではなく――俺の中に「未定義のエネルギー」として蓄積され続けている。


(検証を開始する)


 落下速度、約時速120キロメートル。

 到達予想時間、30秒。

 蓄積された『廃棄ログ』の総量、10年分。


 俺は視界に広がるシステムメッセージを、精神の力だけで強制的に書き換えた。


『警告:不正なログ廃棄が検出されました』

『警告:存在しないはずの「失敗」が、一箇所に集中しています』

『――再定義を開始しますか? [YES / NO]』


「YESだ。全部、ぶちまけてやる」


 俺の全身から、漆黒のノイズが溢れ出した。

 それは、世界が「無駄」だと断じた数億回の失敗、数兆の魔力残滓、そして何千もの死者の恨み。

 ゴミとされたそれらが、俺というフィルタを通じ、純粋な『事象ログ』として再構築されていく。


 奈落の底に激突する寸前。

 俺のステータス画面が、バグったように激しく明滅し、そして真っ赤な文字で固定された。


$$

\text{System Alert: Log Disposal Overdrive.} \\

\text{Skill Evolved: [Log Eraser] → [Causality Re-Definer (Candidate)]}

$$


 爆音と共に、奈落が揺れた。

 だが、俺の体は傷一つ負っていない。

 激突したという『負のログ』を、着地の瞬間に廃棄し、無効化したからだ。


 暗闇の中で、俺は立ち上がる。

 目の前には、廃棄されたガラクタの山と、そして――。


「……あ、なた……が……マスター……?」


 銀色の髪を泥にまみれさせ、壊れた機械のように瞳を明滅させる、一人の少女が倒れていた。


 俺は口元を歪める。

 

「ああ、そうだ。今日から、ここが俺たちの『ゴミ捨て場』じゃない。……世界のバグを、修正する拠点だ」


 復讐なんて、生易しいことはしない。

 俺を捨てたあいつらが、俺が捨てた「ゴミ」を這いつくばって欲しがるような――そんな、理不尽なまでの絶望を見せてやる。

もし「この理論、面白いな」「続きの無双シーンが見たい」と思っていただけましたら、

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皆さんの評価が、レインの「廃棄ログ」を強力なスキルへと進化させるエネルギーになります。

第2話は、この奈落に眠る「最強の欠陥品」との出会い、そして初戦闘です。

当面の間は1日3話を投稿予定です。お楽しみに!

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