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悪役令嬢は断罪回避に尽くします  作者: 夜桜 舞
2章 断罪に向かって

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11話 入学式

張り詰めた空気が入学式の会場全体を包み込み、私も緊張でカチコチに固まってしまう。


これまでの出来事はあくまで前座。物語の本番は、ここからなのである。


そう。今日は待ちに待った魔法学園の入学式。そして、乙女ゲーム「5色の魔法と王子様」略して「まほ王」のゲームが始まる日。


私は先日の実力調査の件で入学を取り消されると思っていたが、私が部屋に籠っている間にルイシュアが奔走してくれていたらしく、私は今日という日を無事に迎えることができた。


新品の制服に身を包み、私は本来であれば断罪への道を歩むこととなる。

しかし、決意を固めた私はもう、卑屈になることなんて無いのだ!!


「よし、頑張ろう!」


グッと握りこぶしを作りながら騒がしい会場内で自分に活を入れ、胸元のリボンをキュッと固く結ぶ。


さぁ、クッソ長い入学式よ、私に敵うなんて思わないことね!!






「……姉さん、なんで入学式で寝てんの?」

「はへ……?」


パチッと目を開けると、まつげが腹立たしいほどに長く、顔の良い男子生徒が目に入ってきて、私は間抜けな声をあげる……って、ルイシュアじゃん。


「寝てた……? 私が、入学式で?」

「うん。思いっきり寝てたよ」


マジか……そういえば、入学式冒頭以降の記憶がないな……。え、てかすごくね!? 私の記憶が正しければ、入学式が始まってすぐに眠りについたってことでしょ? 私、睡眠の才能があるのかも!!


「ほれ、姉さん移動するよ。振り分けられたクラスの確認をしなきゃいけないんだから」

「は~い」


まだ寝ぼけている目をこすりながら、私はルイシュアに手を引かれて入学式の会場から脱出する。


「眠た~い!!」

「眠いっつったって、入学式中に寝てたのが悪いんじゃん」


いつも通りの軽口の叩き合いに心地よさを感じながら、私は大きなあくびを一つするのであった。






「え~と、僕のクラスは……あ、B組だ」

「私もB組だ。姉弟そろって同じクラスだなんて珍しいね」

「まぁ、魔法学園は実力別で振り分けられるから、身内を分けようっていう考えはないんだろうね」

「へぇ……というか、私やルイシュアは優秀な生徒なんだから、B組じゃなくてA組にするべきじゃない?」

「A組は問題児が集められていて、B組が学園で一番優秀な生徒が集められているらしいよ」

「なるほど……私って問題児じゃないんだ」

「自覚があったんだね」


私のつぶやきに苦笑いを浮かべながら、ルイシュアは同じクラスの他の生徒を確認する。


「やっぱり、B組には殿下とか公爵家のご子息・ご令嬢も多いね」

「ま、私たちだって侯爵家だし?」

「読み方は一緒でも身分は違うけどね」


ルイシュアのまねをするようにクラスメイトを確認してみると、なんとB組にhs全員、まほ王の攻略対象が入っているではないか。……まぁ、大体予想できていたことだけど。


「ルイシュア、別に学校に入ったらわざわざお姉ちゃんのそばにいなくてもいいからね?」

「え? 言われなくても、元々そうする気だったけど?」

「あら、そう……」


せっかくルイシュアを気づかって言ったのに、キョトンとした顔であっさりとそう言われてしまい、私はちょっとだけ落ち込む。……ルイシュアだけは、お姉ちゃんを選んでくれると思っていたのに。


「友達出来るかなぁ……」

「姉さんは人前に出るのを嫌がって、社交界の場に出たことがないからねぇ」


そうなのだ。どうせ断罪されて国外追放を言い渡されたら、社交界の場で得た経験も意味をなさなくなると自分の中で言い訳を作り、色々理由をつけてこれまで社交界の場に出席したことがなかったのだ。


一方、ルイシュアは持ち前の猫かぶり時の人の好さと生まれつきの顔の良さで社交界の場で人気を博し、今も女子生徒から憧れの視線を向けられている。……その分、私はあの女誰よと言いたげな嫉妬の視線を向けられていた。

ルイシュア、あんたは自慢の弟だけど、お姉ちゃんは居心地が悪くて仕方がないよ。


「ま、ルイシュアは大好きな弟だし、私のポジションは誰にも譲る気はないけどね」

「急に何言ってんの」

「ありゃ、聞かれちゃってたか」


私に冷ややかな目を向けるルイシュアをクスクスと笑いながら、密かにゲームヒロインであるシャイリンを探す。


本来のゲームであれば、シャイリンは悪役令嬢のスティラに入学早々目を付けられ、階段から突き落とされることになり、そこでまほ王のメイン攻略対象であるティルセラに助けられて攻略対象たちとのかかわりができるのだが……。


私の意思だけであればシャイリンを階段から突き落とすだなんて絶対にありえない。だが、無意識下のうちにゲームのスティラと同じ行動をとったり、何かの不注意でシャイリンとぶつかり、階段から落としてしまう可能性もある。だから、注意だけはしておこう。


ただ、なかなかシャイリンが見当たらない。先日の実力調査ではその姿を確認できたから、この場にいないという可能性は低いと思うんだけど……。まさか、もうすでに教室へと移動してしまっているのか?


「姉さん……?」

「うん? どうしたの?」

「いや、なんか珍しく難しそうな顔をしてたからさ」

「珍しいは余計よ、珍しいは」


手をひらひらと振りながら本当に何でもないと主張すると、ルイシュアは疑心にまみれた目で私を見つめる。


「ま、もうここには用がないんだし、早く教室に移動しよ!」


笑顔でそう言いながら、ルイシュアの疑心暗鬼な目に気が付かないふりをして、私は教室に向かって歩き出した。






「ここがB組の教室、か」

「何やってんの、さっさと教室に入るよ」


せっかく雰囲気を出していたのに、ルイシュアにあっさりとそう言われて私はとぼとぼと教室へ足を踏み入れる。


教室を見回してみるとさすが貴族が通う学校というべきか、華やかで広々とした室内で私は感嘆の声をあげる。


おっと、感動している場合ではない。今はシャイリンを見つけるのが最優先事項だ。


圧倒的ビジュの良いシャイリンを探すのにここまで時間がかかるだなんて予想外で、正直ちょっと焦っていたりする。


「あ……」


教室の隅で暗~い雰囲気をまとっている少女。その少女をよく見てみれば、ゲームで飽きるほど見たシャイリンではないか。


ゲーム内の華やかなシャイリンとは打って変わり、人をより寄せない雰囲気のシャイリンに、私は拍子抜けする。


「あぁ……あの子、この学園唯一の平民の子だからなかなかなじめず、あんな感じになっちゃったらしいよ」

「そうなんだ……」


……もしも私がゲームのシナリオ通りの行動をとれば、シャイリンはこの国の王子であるティルセラとのかかわりを持て、この学園になじめるようになるかもしれない。


でも、私は別にそこまで優しいわけではない。なんで他人のためにわざわざ断罪への道を歩まなければいけないのか。


「気になるなら、姉さんがあの子と関わってあげればいいじゃん」

「嫌だよ。私人見知り凄いし」


ルイシュアの提案をバッサリと断り、私は適当に開いていた席へと座る。


……それに、シャイリンと関わるべきなのは、悪役令嬢の私じゃなくて、攻略対象のルイシュアの方だしね。

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