00話 - プロローグ
誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。
猛烈な電波を受信したので書いてみた、ヒャッハーwww
視界は薄暗く、手元は計器や操縦桿、多様なスイッチで溢れていた。
欝になりそうな感情を押さえつけ、目を閉じる。
「くそっ……」
「元気を出してください、マスター」
俺の悪態に反応する声があった。
「冬か……」
「もし今回の作戦が成功すれば、この戦争も終わります」
俺の相棒、冬月の声だ。
「そう……そうだな……」
「はい、教授も戦争の早期終結を願って私を生み出したのですから」
「ああ……」
彼女の励ます声にも力が入らない。
これから俺は人を殺しに行く、それも大勢の人間を。
いくら大義名分を掲げようと、大量虐殺者になることには変わらないのだ。
これで欝にならない人間がいたなら、もはや人間じゃない。
……。
「……ああ!くそ!」
やはり口から漏れる悪態は止めようが無かった。
この星を覆う大戦争が始まってから既に十数年。
極東帝国とロドニア共和国の戦争は既に泥沼状態にあった。
各地で飢餓や貧困が発生し、国の上層部では汚職や腐敗が絶えない。
帝国と共和国の戦争に巻き込まれて、消えてなくなった国々ももはや両手の指を使っても数え切れないだろう。
それでも、けして負けることは出来ない。
もしここで負けたのなら、明日にでも祖国は蹂躙されてしまう。
……。
元々は共和国の横暴が原因だった。
共和国はこの世界で最も広大な土地を持ち、その土地から得られる食料やエネルギーを持って周辺の国々に服従を迫ったのだ。
いくら抗おうにも、国力の違いの前に膝を折るしかなかった。
けれど、そんな世界で共和国に抗うことの出来た国が一つ。
……。
それが我が祖国である極東帝国であった。
我が祖国は、共和国ほどではないが広大な土地、そして何より遥かに進んだ技術を持って平和に暮らしていたのだ。
しかし、それを頼って共和国周辺の国々が頼ってきた。
もちろん、国主である皇帝陛下は周辺諸国のその惨状に嘆き、救いの手を差し伸べた。
だが、それを知った共和国が理不尽にも戦争を仕掛けてきたのだ。
曰く、我々の従僕に手を出すのはけしからん、と。
……。
我々の技術と共和国の物量、そこから生まれる泥沼な戦争。
もはや、頼ってきた国々でさえ知らん顔をする始末。
皇帝陛下が何度も共和国大統領に停戦の申し入れをするが、聞き入れてもらえない。
度重なる戦争に、民は疲弊し、気力をなくしている。
……。
……。
開戦から十と数年。
我々帝国は、新兵器の投入を持って戦争の終結をはかった。
スピーカーからオペレーターの声が響く。
《藤宮大尉、出撃命令が出ました。カウント600!》
同時に、目の前のスクリーンの片隅に600秒のカウントが刻まれる。
「……いよいよか」
感応式の操縦桿に手を置き、気持ちを整える。
と。
《作戦内容を確認します》
再度、スピーカーからオペレーターの声が聞こえてくる。
《現在、この空母『リンドブルム』は当該作戦地より北方3000キロの地点を航行中です。大尉はカウント0と同時に発艦し、そのまま目標地点まで飛翔。後に新兵器での敵拠点の制圧が任務となります》
「了解!」
……分かっている。
《……》
「……」
俺とオペレーターの間で僅かな沈黙が流れる。
やがて。
《…………大尉。大尉の働き次第でこの戦争が…………。いえ、すいません……》
「構わない。皆、同じ気持ちだ」
《…………すいません》
心の底の本音が漏れたらしいオペレーターにフォローを入れる。
帝国の全住民が今回の作戦の成功を望んでいる。
《……》
「……」
しばしの沈黙の後。
《カウント100をきりました》
「ああ、確認している」
《…………大尉、その、どうか御武運を……》
「……ああ。ありがとう」
……。
《カウント80!ハッチ解放、カタパルト展開!システム・オール・グリーンです!》
オペレーターの声が響く。
……。
「……冬」
「なんでしょうか、マスター」
「教授は戦争が終結したなら、お前を俺にくれると言ってくれた」
「まぁ!」
「事実、既にお前は軍属ではなく俺の所有物になっている。教授のお前に対する僅かばかりの心遣いなのだろうさ……」
「……教授」
「お前の姉妹機は皆、非業な最後を遂げた。だからこそ、お前には幸せになってもらいたいのだろう……」
「……う」
すすり泣くような声が聞こえる。
「この戦争が終わったら、二人で静かなところで暮らさないか?おれも、テストパイロットと軍属としての給金がある。どこかの静かな田舎に家でも買って二人で静かに暮らすんだ、どうだい?」
すすり泣きの合間に、途切れ途切れに聞こえる。
「……私でも……いいんです……か?私は……人間じゃ……」
「構わないさ。俺には将来を誓った嫁なんかいないからな」
冗談めかしたセリフで、冬月のセリフを最後まで言わせない。
「教授の話じゃお前だって人と結ばれることは出来るはず、どうだ?」
「……その、本当に?」
「ああ」
「……」
「……どうだい?」
「……その、私でよければ…………、その貰ってくれると……」
「ああ。二人で暮らそう」
「……はい」
人間と機竜。
人と人ならざるもの。
……けれど、ここには確かな絆が存在した。
《カウント20!》
再度、オペレーターの声が響く。
そろそろか……。
「では、お前の最初で最後のお勤めを果たそうか」
「はい」
「「……」」
……。
《カウント10!》
よし!
「Ds-X09 GAIA!固体識別名・冬月!」
《カウント5!》
「出撃する!!」
《カウント0!!》
複翼式高出力特大型スラスター『ラピスラズリ』から膨大な推進力が発され……。
僅かな浮遊感の後に、視界一杯に暁の夜空が広がった。
新兵器の名は竜機神。
人が創りし機械の竜神。
共和国との戦争を終結させるために帝国が生んだ切り札。
……。
そして……。
神の如き力を持ち、同時に人間以上に優しい心を持った、一人の娘。
「マスター。現在、マッハ10で航行中。同時に『ガーネット』起動中。おおよそ15分程度で目標地点に到着します」
「了解。『アズライト』と『スピネル』を起動。同時に『オブシディアン』の起動準備」
「イエス・マイ・マスター!」
脳内に埋め込んだマイクロチップを通して、肩部の高出力エネルギー砲塔『アズライト』と腰部の電磁投射砲『スピネル』の起動が確認される。同時に胸部に在る戦略級ナノマシン放射制御装置『オブシディアン』にエネルギーが充填され始める。
……これで、この戦争を終わらせる!
「行こう!全てを終わらせに!」
願いと祈りを込めて、スロットルを踏み込んだ。
「流石は星の五分の一を占める大国だな……」
朝日が照らし始めた眼下の地には、ロドニア共和国首都が広がっている。
そして、その都から東に50キロ。共和国の兵器・兵站生産基地がある。ここが今回の目標地だ。
ここを完全に破壊してしまえば、均衡状態の戦線が大きく傾く。
情報部によれば、共和国側の新兵器が開発されている地でもあるとのこと。
……。
極超音速で飛翔し、なおかつ『ガーネット』の迷彩を纏っているのだ。敵の警戒線に侵入しようと一切反応はなかった。
「……」
大きく息を吸い、吐く。
今から俺は大量虐殺者になる。
「…………ふぅ……」
コックピットに備え付けの多目的キーボードを引っ張り出す。
冬のセンサーが観測したデータを処理していく。
観測した限り地対空ミサイルやレーザー砲はそんなに多くはない。
元々この基地自体が共和国の奥深くに存在している。ここにたどり着くまでも多くの警戒線と地対空兵器が無数ある。そんなに警戒は厳しくないのだろう。
……。
レーザー等のエネルギー系の攻撃は『ガーネット』で完封が可能なはず、ミサイルなどの物理的な攻撃も『カルセドニー』で防げるはずだ。
「……よし!」
キーボードを収納し、操縦桿に手を置く。
「マスター……」
「……大丈夫。俺はやるさ」
宣言で自らを鼓舞し、兵装を解放した。
……。
瞬間、辺り一帯に轟音が響き渡った。
機体に備わった『アズライト』と『スピネル』が火を噴く。
帝国技研の長である教授が丹精を込めて創り上げた兵装だ。
その威力は折り紙つき。
……。
一瞬で基地の迎撃装置を破壊していく。
さらに言うなら、基地上空に侵入できた時点で半分以上は俺達の勝ちだ。
基地のハッチが開きヘリや戦闘機が出現するが、それらが飛び立つ前にレールガンを叩き込む。
と。
「マスター!7時の方向から敵機の接近を確認!」
「……くそ」
竜機神の左腕部を操作して腰に背負っていた大型ビームライフル『サーペンティン』を構え、連射する。
「他の基地から応援が来たか……」
「はい!敵性反応、依然と増加」
「……そろそろ、か。冬!『オブシディアン』の起動準備を」
「イエス・マイ・マスター」
機体を上下左右と自在に動かし敵のミサイルをかわしていく。
物理攻撃は『カルセドニー』で防げるとはいえ、冬にはなるべく傷を付けたくはない。
地上の基地は完全に破壊した、だが周囲には敵機の大群が取り囲んでいる。
『ラピスラズリ』の推力や加速力ならこの場から遁走することもかのうだ、が。
「ここでこの戦力を削れば、共和国は少なくないダメージを負うはず!」
「マスター、『オブシディアン』の起動、いけます!」
……よし!
「『オブシディアン』起動」
……。
宙を舞っていた竜機神の機体から漆黒の光が放たれた。
光は触れたもの全てを塵に変えながら広範囲に広がっていき、この場に集まっていた共和国の全空軍の約半分を消滅させた。
……。
「周囲に敵性反応無し。問題ありません、マスター」
「……ああ、そうだな」
今の一撃でどれほどの人間が亡くなったことだろうか……。
もはや俺の手は血にまみれて、洗い流すことは生涯かなわないだろう。
……。
そんなことを考えていたからだろうか、一瞬の反応に遅れた。
「マスター!!下方の敵基地跡地から異常な重力反応を検知!!」
!
「この反応は!まさか、重力子の暴走!?」
冬が悲鳴のような声を上げる。
「なに!」
余りの単語に思わず聞き返してしまう。
「では情報部の言っていた共和国の新兵器って、まさか重力爆弾!?」
「馬鹿な!!」
だが、その後の会話は続かなかった。
音も無く、光も無く、闇が広がり。
……。
光速で広がった重力の闇は、離脱を許さずに帝国の機竜を飲み込んだのだ。
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ちなみにこの竜機神ですが、形としては遊○王のレッドア○ズを想像していただければ近いかなぁ……とwww