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第4話 問題児

承平5年にタイムスリップした俺は、貞純親王の養子となり、あの六孫王源経基として生きることとなった。逃れられない運命ではあるものの、どうにかしてこの状況を打破できないだろうか....

清和源氏の開祖源経基として生きることになった俺もこの時代に来て1ヶ月が経った。徐々にここでの暮らしにも慣れ始めたが、正直逃げ出したい。ご飯は現代と比べると少し劣り、お風呂も毎日入れない。とにかく現代に戻りたいという願望を抱えつつ、俺の頭の中には一つの疑問があった。それは親王のあの言葉だ。


「所謂問題児でね、このままだと棟梁にはさせづらいんだよねー」 と、この一言から俺には義理の兄弟がいることになる。しかも問題児と呼ばれていることからきっと面倒な人なのだろう。


「でも臣籍降下したら共に各地を転々としたり、戦うことになるんだろうなぁ。でも俺はその人の顔も知らなければ名前さえ知らないな。今度親王様を介して会ってみるか。」

俺は本来家督を継ぐはずの問題児に会うことにした。

その事を親王に告げるとあっさり許可され、俺は親王と共に屋敷へ向かった。


「さぁ着いたぞ。ここが息子の経生の館だ。」


経生。それが問題児とされる義理兄弟の名前だ。未来でも聞いたことのない名前だ。恐らくそこまで有名な人ではないのだろう。


「お、おじゃましまーす。」

そう言うと俺は玄関の敷居を跨ぎ、屋敷の中へと入った。すると中から、


「い、いらっしゃぁい」

と掠れた声が聞こえてきた。問題児と呼ばれているからもっと荒々しい声をしていると予想していたがそうではないらしい。


声のする部屋の方へ進むとそこには寝たきりの病人と俺と同じくらいの男がいた。


「は、初めまして。私は経基、いや本名渡辺優と申します。」


病人が口を開いた。

「話は全て父上から聞いているよ。ゴホ、私は経生だ。そして、ここでずっと私の看病をしているこの男は息子で、ゴホ、嫡男の満仲だ。」


「経生の嫡男、満仲です。」


満仲!?もしかしてあの源満仲か?まさか経基ではなく経生の子だったとは....


歴史の偉人に対面し、驚いていた俺だったが、咳まじりの声をした経生が本題を触れた。


「早速だか例の話をしよう。我々は皇族の位から降下することとなり、源姓を賜う事が決まった。だが見ての通り私は問題児だ。見ての通り体が弱く、棟梁としては向かん。私にはわかるがもう長くはないだろう。」

「そこでだ。君を義兄として受け入れ満仲を君の養子として欲しい。そうすれば一門は何とか続いて行けるだろう。」


俺はキョトンとした。荒くれ者の姿はここにはなく、ここに居るのは一門の行く末を心配した病人1人とその家族だ。命が尽きそうな身体であっても家を気にしている。なんて人だろうか。


「お話はわかりました。しかし満仲さんはご了承なのですか?遠い親戚とは言え急に来た人間の養子になるなど...」


満仲は口を開き、

「本来ならば父上を棟梁にしてあげたい。ですが其れは叶いません。いっその事私が棟梁を都合と考えましたが、私はまだまだ未熟者でございます。でしたら丈夫そうな貴方を義父とし、その元で実力をつけその後家督を継ごうと思います。」



待て待て待て。一体何処が未熟なんだ。もうあんたが家督着いじゃえよと言いたくなった。

「未熟だなんてそんな...失礼ですが歳は幾つでしょうか?」


すると驚きの一言が放たれた。

「今年で23歳です。」


おいおいおい歳上じゃぁないか。普通俺が子だろ。なんで父方が子より若いんだよ....これじゃあ兄弟の方がしっくりくるよ...


「んーよしっ、じゃあこれで決まりだ!家督は先ずは優が継いでその後満仲が継ぐことにしよう。」


親王様は本当に楽観的な人だ。ここで俺が駄々を捏ねて嫌々言っても意味ないだろう。


「予定だと3日後私の屋敷に朝廷から臣籍降下に関する書状が届く。そして初めて君たちは源姓を名乗ることとなる。」

「源姓を賜った後、優と満仲は仕事が山のようにあるから覚悟しといてね〜」


親王様がそう言うと経生さんは笑い、俺と満仲さんは

『...はい』

と小さな声で返事をした。

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