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第38話 再会

「おいおいおい、何だこの死体丸焦げじゃねぇか」

「それにコッチは首が無いじゃないか...」


時は少し遡りここは三条殿。義朝の襲撃の的となり、甚大な被害を受けた場所である。


「ったく、派手に暴れたな。これじゃ誰が誰だか見分けつかねぇよ」

「焼き討ちなんて惨い事しやがる。火の手から逃れるた女官達が井戸に飛び込んだ形跡が有る。」


襲撃直後の三条殿は正に地上の地獄だろう。

建物のほぼ全ては炎に煽られ倒壊、迫り来る炎や熱さから逃れるため、井戸に飛び込む人間までもいた。無論生き延びた人間は僅かしかいない。


「なぁ、上皇様や帝は信頼殿によって幽閉されてるんだろ?これからこの国はどーなるんだよ?」

「知るかよ、それは俺らのような下級武士にはわからんよ。どうするかは身分のお高い方が決めるだろうさ。」


現場処理を任された者たちの様子は様々であった。

だがその大半は今後の国の行く末に戸惑う者達だった。


そしてこの戦で藤原信頼と源義朝のヘイトが高まった事は誰の目にも明らかだった。



そして時は今に戻り、義平が処刑されて2日後、優と親王は京へたどり着いた。


「親王様、鴨川が見えてきました!あともう少しです!」

「あぁ、あとは何処かに身を隠している義平や頼朝と合流しなければだけど...」

「二人とも変な気を起こしていなければ良いが...」


都へ向かう途中で二人は義朝の死を知った。そのため息子である義平と頼朝は親の仇を討つべく無茶を侵す事は十分考えられた。特に血気盛んで勇猛果敢な義平は既に実行していてもおかしくないと二人は考えていた。


「しかし優、君も今は逃亡犯の一人なんだ。見つかり次第首を斬られてもおかしくはない。どうするつもりだい?もはや義朝の館に帰ることすら不可能となった今、都で隠れるのは危なくない?」


優は少し考えた後、ゆっくりと口を動かした。


「...先ず、第一の目標は義平と頼朝を回収することです。二人を此処で失うと、源氏は二度と日の目を浴びることは無いでしょう。」

「二つ目の目標は、東国へ落ち延びること。東国にも平氏縁の者もいますが、義朝殿は東国で顔が広い人でした。何処か我々を匿ってくれる方が必ずいるはずです。ですが第一の目標が果たせないと誰も我々を匿うものはいなくなるはずです...」

「それに最早義朝殿の館に帰ることも叶いません。行ったら即捕縛されます」

「まさに四面楚歌って感じか」


親王の言う通り正に四面楚歌の状況だ。全方位から指名手配されてる今、頼りになるのは義朝が築き上げた関東武者の軍勢のみ。しかし義平と頼朝と合流出来なければ、一家来の位置づけである二人を助ける必要がないのだ。


「ならば急ぎ二人を回収しなければ、二人は何処に潜んでいると思う?」

「何処かの寺社に居るはずです。ただ平家がそれを見逃す筈が無いと思いますが....」

「一先ず都中を歩き回ろう。それしか方法は無さそうだ」


それから二人は右京の方面から歩み始めた。道中平家の兵士が巡回していたが草むらや木々、廃屋に身を潜めながら義平と頼朝を探し回った。

そして後数時間で日が暮れる頃五条大橋に二人はたどり着いた。


「全っ然見つからん!!何処だよ!」

「まー誰かに聞くこともできないしさ、仕方ないよ。」

「今ここで義平や頼朝の場所を聞くと源氏方だと疑われてしまうからね。」

「一旦本日は諦めて明日また探します?今日はもうダメな気がしてきましたよ」


ほぼ丸一日かけて二人を探し回ったが見つからない。きっと誰も予想がつかない様な場所に隠れていると二人は予想していた。そして間もなく日没、今日のところは諦めようとしていたその時であった。


「いやぁ〜お公卿様なのにまさか打首とはなぁ。驚いたもんだな。貴族の晒首なんてオラ初めて見たな」

「間違いねぇべ。それになんて言ったっけな?ほら、源?なんとかっていう武士がおっただろ?ソイツの首もいっしょに並べてあったが呆気ない最後だったらしいべな。」


「(ま、まさか....!!!)」

優の脳内にひとつの考えが過ぎった。


「す、すまないそこの二人!その公卿様の首は何処で晒されているんだ!?」

「んん?あんた知らんのかいな。六条河原だよ、そこで確かぁ、藤原信頼とその家来?だったかな。首がされされとるんじゃ。」

「!!...あ、ありがとう!兎に角そこへ急ぎましょう!!」

「あぁ!」


「.....?なんじゃアイツら、そんなにお偉いさんの首が見たいのか?変わった奴もおるようだなぁ。」


急いで二人は六条河原へ向かった。男たちの情報が正しければ源氏の誰かの首が晒されている。それを確かめるために全速力で向かった。


「し、親王様、彼らの情報が合っているとすると、ハァハァ、義平か頼朝は既に...」

「いや、義朝の首かもしれないッ、まだ、まだ希望はある!二人はきっと生きているさ!」


しかしそんな僅かな希望も打ち砕かれることとなる


「ハァハァッ、し、親王様、あ、あそこ、首が、並べられていませんか?」

「んん?、だがあれは、四つだ、四つ並べられている様に見えるが...」

「た、確かに、でも四つ?ま、まさか....!!」


優はスピードを上げ親王を置き去りにした


「(ま、まさかそんなハズ...まさか、まさか!!!)」


刹那の出来事だったが脳内に色々な考えが駆け巡った。

希望と絶望が交互に過ぎり、感情がぐちゃぐちゃになる。

そして答え合わせの時がきた。


「ハァハァっ、ハァ、...」


優は一人ずつ眺めた。


「ち、中宮権大夫、藤原、あ、朝臣、信頼...」


初めに確認したのは信頼の首だ。処刑されてから日にちが経っているためか腐敗が進んでいた。


「は、播磨守、みなもと、朝臣、義朝、...義朝殿」

信頼同様死後時間が経っているため腐敗が進んでいた。


「そ、そして」

優は少しでも視界から流れる情報を遮断するため、手で視界を隠しながら次の首を見た。


「なんだこの首、かなり腐敗してるぞ..一体誰だ?」


疑問に思いながら立札で名前を確認すると愕然とした

「お、おい、なんで...そこまですんのかよ..」

「...こ、これは、嘘だろ」


ようやく着いた親王も"その者"を見て動きが止まってしまった。


「と、朝長、バレん様に埋葬したのに...」

「恐らく源氏方の誰かが密告したんだ。そして掘り返されてから首を...」


そう告げて、ふと横目にした時親王は"彼に"釘付けとなった。目は見開き体は震え優の肩をゆっくりと触れた。


「..?な、何ですか」


親王はゆっくりと指を指した


「あ、あ、う、嘘だろ、おい、おいおいおい....」


"源朝臣義平此処に誅す" 立て札にはそう書かれていた


「.....ッッッッ!!!クソッ!!!」


優はその場に崩れ落ちた。そして少しして現実を受け止め手を合わせた。


「南無阿弥陀仏....」


四人の男にせめてもの安らぎを届けるため念仏を唱えたのだ。だが念仏を唱えている最中に誰かが後ろから近づいてくる音がした。


「...今取り込み中なんだ、後に...」

優はゆっくりと後ろを振り返った。


「....あ、」


「何れ此処へ来ると思い、毎日訪れた甲斐があった。お久しぶりです親王様、そして...優」


二人の前に現れたのは平重盛だった。

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