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第35話 凶報

義朝は息子頼朝と合流するため、尾張の家臣の館へ身を潜めることにした。しかしそこで裏切りに会い、命を落としてしまう。頼朝や義平の同行も未だに掴めず、親王と優は心身を癒すため伊豆へ立ち寄る。直ぐに伊豆を発ちたい反面、親王はまだ満喫したい様子で....

義朝の死ぬ数日前のことだった。俺と親王様は東国鎌倉へ逃れるため、ひたすら東海道を馬で駆けた。そして途中体を癒すために伊豆に立ち寄った。

本来は1日程休憩してから鎌倉を目指す予定だったが、今日で伊豆に来てから3日程経った。


「親王様、もう温泉には行きません!!早く鎌倉へ行きましょうよ!」


「えーもう少し居たいのになぁ...」


原因はこの親王様であった。親王様は東国へ何度も行ったことがあるものの、伊豆へ来るのは初めてだったらしい。温泉街という独特の雰囲気に俺たちは当初のめり込んでいたが、未だに親王様は浸かっている、。


「もうちょっとだけここに居ない?飯もうま...」


「親王様!いい加減にして下さい!!我々は仮にも敗走兵なのですよ?二人とも見つかったら仲良く首チョンパなんですよ!?」

「それに先に行った義平が既に着いてるかもしれません!早く行きましょうよ...」


親王は渋々「わかった」と、返事した。


俺たち(親王様だけ)は重い腰を動かして再び鎌倉を目指すことにした。


「いやぁ気持ちのいい温泉だったね〜。まだ入っていたいよ。」


「何言ってるんですか、もう行きますよ。馬を連れてくるのでここで待ってて下さいね。」


「わかったよ。」

「しっかし義朝と頼朝は無事合流できたのかねぇ...」


義朝達の安否を気にしていると、とある宿屋の横に人溜まりができているのが見えた。馬を待つのが暇な親王はちょっとの間だけと、抜け出した。


「おいおいまじかよ!?」

「やっぱ死んじまったか...」

「なんでも貴族のやつは首を斬られるらしいぜ」

「全く物騒な世の中になったものだねぇ...」


住民らの会話は興味の唆る話だった。


「す、すみません、一体なんのお話を?」


「おやおや貴方様は京から来たお偉いさんじゃあないか。実はな、この前都で戦があったらしくてな。その際賊軍の頭だった源義朝が殺されたらしいんだよ。」

「しかもその息子達が逃走していて、更に名前不明の背の高い兵士がここらに逃亡してるって噂なんだよ。」


親王の脳内に電流が走った。まず義朝が殺された事実を受け入れ、現時点で義平や頼朝が無事であることを認識し、恐らく今自分と同行している優が平家から狙われている事を察知した。


「へ、へぇなんとも物騒な話しなこ」


「し、ん、の、う、さ、ま、!!何油を売っているのですか!?さぁ行きますよ!」


優の叫び声を聞いて住人らは驚いた


「し、親王様だって!?」

「と、とんでもなく身分の高いお人じゃねぇか!!」

「それよりあの兵士背がデカくねぇか?もしかして指名手配されてるあの兵士じゃ!?」


(ま、マズイ!!)「あーわ、わかった!!今行く!!」


親王はダッシュで優の元へ行き、馬に乗り駆け出した


「あ、待って下さいよ!!」


そう叫ぶと優も駆け出した。


「一体どうしたのですか、親王様?」


「いいかい?落ち着いて聞くんだよ?まず義朝が尾張で殺されたらしい」


「な、なんだって...、それじゃあ頼朝や義平は?」


「住民らの噂によると現時点で捕らえられたなどの話は出てない。それよりも優、君が狙われているっぽいんだよ!」


「ど、どうして俺を!?」

実は俺は戦いの最中一切自分の名前を名乗らなかった。理由は簡単で俺の本名が歴史に名を残す可能性があるからだ。もし残った場合、本来の正しい歴史が改竄され、日常生活が多大な影響を及ぼすかもしれないからだ。

俺は以前源経基という偽名で生きてきたが、本名を名乗った今、そう簡単に身動きが取れないのが現状だ。


「俺は戦いの最中一切名乗りはあげませんでした!一体なぜ...」


「恐らく清盛だろう。清盛とは保元での戦で顔を合わせている。恐らくそれで...」


「成程、完全に義朝さんの直近を殲滅させるつもりですね...ですがそうなると今度は頼朝や義平も危ないんじゃあないですか?」


「あぁ。それに源氏の地盤である鎌倉には既に兵が手配されているかもしれない...今更だけど鎌倉を目指すのは止めた方がいいのかもしれない」


「し、しかしそれじゃあ鎌倉で合流する作戦が..」


「あぁ、最初から破綻していたんだよ。先に辿り着いていたなら話は別だったかもしれないけど...」


お前が温泉に浸かっていなければ良かっただろ!と言ってやりたかったが、グッと堪えた。身分が高くなければグーパンチをオマケにつけていただろう。


「...こうなったら我々は一旦都方面へ戻りましょう、途中頼朝か義平のどちらかさえ回収出来れば良いのですが。」


「正直頼朝がどこに向かっているか全く掴めない。あの雪道の中、到底一人で鎌倉へ向かえるとは思えない。恐らく尾張周辺で迷っているに違いない...」


こうして俺たちは東山道を歩んでいる義平と合流する事を目的とした。そして数日後、信濃国(現在の長野県)へ入り、とある宿で泊まることにした。しかしそこの宿の女将から最悪の情報を聞いてしまった。


「い、いつ、いつの話ですか??」


「い、いつかは知らないけどサ、数日前に義朝の子どもの頼朝って兵士が捕まったらしいのよ。なんでも歳がまだ13くらいだったかしら...」


信濃国にて遂に源頼朝が捕縛されたとの情報を耳にしたのだ。これは今の俺たちにとって最悪の情報であった。もしこのまま京都へ輸送されれば打首は避けられない。こうなると残る希望は義平ただ一人になるのだ。


「ち、因みにですが、頼朝の兄である源義平について何か知りませんか?今実は彼を追っておりまして..」


「あーわかった!あんた達源氏の兵士だろ?」


「え、そ、それは...」


「ははーん。その顔は本当って顔してるね。でも安心しな、この周辺は信濃源氏のお侍さんの土地だからね。勿論源義平の情報も掴んでいるよ!」


「ほ、本当ですか!、一体今どこに!?」


「なんでも飛騨国に入ったって噂でね。兵士を集めたけど何だか解散したらしくてねぇ、どうやら都に行って清盛を討ち取りに行くって話だよ。」


女将の話が本当なら、残る希望ももうすぐで潰えてしまうかもしれない...


「親王様、」


「あぁ。すみません女将さん、我々は直ぐにここを発ちます。我々がここに来たことは内密に...」


「安心しなって!平家に言いやしないよ。でも都に戻って大丈夫なのかい?あんた達名のある兵士じゃないのかい?」


「そこは賭けです。とにかく今清盛を討てるはずがない。早く義平を止めなければ...」


「そうかい、じゃあ行っておいで!ちゃちゃっと仲間を救っちゃいな!」


そうして俺たちは宿を発ち、急いで都へ馬を走らせた

読んで頂きありがとうございます!数日後に国家試験の予定があるので更新遅れます。

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