第34話 野間
父の役目として尾張にて息子頼朝を待つと決めた義朝。幸いにも無事目的の野間へ辿り着くことができ、休憩することに。平家の手先が来る前に頼朝と合流し、東国へ落ち延びたい義朝であったが....
「はぁ、はぁ、や、やっと、辿り着いた....」
馬も失い、履き物も無くし、素足で野間まで辿り着いた義朝は既にボロボロであった
「よ、頼朝、待ってろよ...」
「義朝殿、良くぞ耐えられましたな...さぁ、長田親子の待つ館へ参りましょう」
この男は鎌田政清と言い、義朝の乳兄弟である。
義朝が京から脱出する際から共に行動していた一人だ
「おーい長田忠致殿!景致殿!門を開けてくだされ!!!」
政清が親子の名を呼ぶと固く閉ざされていた門が音を立てて開いた
「......どちら様で?」
「わ、私は鎌田政清と言います。そしてこの方は私の主君である、」
「源義朝だ。」
「....!、義朝様でしたか!良くぞ参られました。ささ、どうぞ此方へ...」
「すまない、失礼する。」
二人が館の中へ入った時、忠致がニヤリと笑った様に見えた
「.........?」
「どうされましたかな、政清殿。」
「い、いえなんでもございません。」
「それにしても良くぞ京からこの野間まで落ち延びられた...さぞかし大変だったでしょうなぁ。」
「あぁ、途中落ち武者狩りに出くわしてな、次男の朝長が亡くなり、三男の頼朝ともはぐれてしまった。」
「その事で一つ聞きたいのだが、頼朝がここへ訪ねて来なかったか?一度ここに寄る話をしたのだが...」
「いえ、来ていませぬが」
「そ、そうか、わかった。それで、一つ頼み事があるのだが良いか?」
「なんでございましょうか」
「頼朝が個々へ訪ねて来るかもしれない、だから数日間ここに泊まらせてもらいたいのだが、良いであろうか?」
「と、当然でございます!是非何日でもお休みなさってください。」
「すまないな、ではまだ早い時間だが眠らせてもらうぞ。もうクタクタでな」
そして義朝は数日間待ったが頼朝は現れず、年が明けた平治2年 1月3日 運命が訪れる
「...来ませんね、頼朝殿」
「....東国へ先に行ったのかもしれんなぁ。だとしたここで時間を潰す訳には行かぬな。」
「忠致に景致!明日我々はここを発つことに決めた。世話になったな...」
「と、とんでもございません!では最後にお酒でもいかがですかな?」
「おーお酒ですか!?この政清酒には目がないものでしてなぁ...へへへ!」
「ったく、この酒野郎。まぁいい、先にワシは風呂に入るからな」
「ははは。ではお酒をお持ちする前に、先に風呂へ案内しますぞい。」
「あぁ頼んだ。」
「では少々お待ちを」
すると忠致は奥の部屋へと入り、襖を閉めた。
「.....酒はお前がやれ景致、その後風呂に来い。」
「わかりました父上。...抜かりなく。」
すると再び忠致は二人の前に現れ、義朝を風呂へと案内した
「ではでは政清殿、2人だけで先に始めちゃいましょうか!?」
「いいですなぁ景致殿!!ささ、一杯どうぞどうぞ...」
二人が酒を飲み始めた頃、風呂場では
「では義朝様、そちらの刀はお預かりします。」
「あぁ、頼んだぞ。」
義朝は風呂に入るので自分の刀を忠致に渡した
これが義朝にとって、藤原信頼と手を組んだ以上に最大の不覚であった
「うい〜、ヒック、じ、実は私は酔いが回るのが早い体質でしてなぁ、」
「そのようですな」
「ちょっとお水を頂けぬかな?」
「...お持ちします。」
すると景致は隣の部屋へと入って行った
「......にしても明日ここを発つのかぁ、こんなに呑んじゃってしっかりと寝れるであろうか」
「ずっとお眠り下さい、政清殿」
「へ?」
すると政清の後ろの襖が開き、景致が現れた
「!!、なんだその刀、一体なに」
政清が最後に何か話そうとした瞬間、刀は振り下ろされ、政清は絶命した。
「....?何か音がしたような、もう出るとするか」
義朝が浴室から出ようとしたその時、忠致が侵入してきた
「忠致、先程何か音がしたが何かあったのか?」
「......」
「忠致ッ!!何とか言え!!」
「.........源義朝、覚悟ぉおおおおおおお!!!」
ドスッ
「う、うぐぅうう、き、貴様、裏切りおったのか、」
そして浴室に景致も現れた
「父上、政清は仕留めました。」
「でかした。後はこやつの息の根を止め、清盛様に首を届けるだけよ。」
「き、清盛だとぉ....貴様ら繋がっておったのか...」
「く、クソォ...ま、まさか最期がこれとは」
「よ、頼朝、よ、義平、親王様に優殿、すまぬ...」
「親王様に優殿?誰のことだ?」
「....き、木太刀一本さえ、あ、あれば.....」
その瞬間義朝は倒れ込み、二度と動かなくなった
平治2年1月3日(1160年2月11日) 享年38
「.....全て終わりましたね、父上。」
「あぁ、最初ここに来た時まさかとは思ったが、まさかここまで来て家臣に裏切られるとは思ってもいなかっただろうよ。」
「とりあえず腐敗する前に二人の首を都に届けましょう。」
「そうだな。」
そうして政清と義朝の首は胴体から離された
そしてその頃....
「し、親王様!そんな寄り道していては...」
「せっかく伊豆に来たんだ!温泉に食べ物、何にしようかなぁ...」
「俺たち一応敗走兵なのですよ!指名手配ですよ!」
俺たち(親王様だけ)は伊豆で楽しんでいた
読んでくれてありがとう!次回は伊豆のお話です。




