第31話 嫡男同士
平重盛と源義平、二人の友は両家の未来のため戦うことになる。戦により二人の仲は裂かれ、殺し合いが始まる中、重盛はまだ覚悟を決められていない。避けては通れぬこの災難に重盛はどう立ち向かうか...
俺は生きたい
ここで死にたくない
かつての友に殺されたくない
自分も友を殺したくない
でも現実は残酷で、殺らなければいけない
「よせ!義平、お前たちはもう負けも同然、投降するんだ!!」
「はぁ、はぁ、随分と弱気じゃないか重盛!嫡男であろう者が覚悟を決めれてないのか!!同じ嫡男同士なんの不足があろう、さぁ俺と組め!!」
「クソ、俺はお前を殺したくないんだ!頼む投降してくれ!!」
その言葉を聞くと義平は動きを止めた
「.....投降だと?投降してどうなる?その先俺は斬首の未来以外ないだろう。お前の親父が源氏の嫡男をみすみす逃す事などしない。....俺はここで戦うしかねぇんだよおおおおおおお!!!!!」
義平は再び重盛に向かって切りかかった
「.....うらぁああああああああ!!!」
「お待ちください重盛様!!」
「誰だ貴様は!重盛との一騎打ちを邪魔するつもりか!!」
「...そなたは与三左衛門景安だったか?一体なんだ?」
「周りを見てくだされ、我々の方が数は多かったはずですが大半は討死しております。残念ながら予想以上に源氏が強いのです。」
「大半だと!なら今は500騎程しかいないのか?何に源氏の兵は全く減っていない....」
「左様。私の部下を数騎与えますので今のうちにお下がりください。悪源太義平は私が退治します。」
「....すまない景安、試合はお預けだ義平!!」
「な、待て!重盛ィ!!」
ドンッ!!
「何処を見ているのだ悪源太義平よ。貴様を主に近づける訳にはいかん!!」
「.........邪魔だ」
「んん?なんだ坂東武者よ。もういっぺん言ってみ」
ズバシュッッッッ
景安の首は勢い良く中を舞った
「.....景安!?」
「遊びは終わりだ重盛!!俺と戦えぇええ!!」
「ダメです重盛様お逃げ下さい!!」
迫り来る義平を主に近づけまいと、幾人もの兵士が義平の前に散った。その間に重盛は何とか窮地を脱出した。
「(すまない、お前たち......)」
内裏 郁芳門では
「や、やるではないか義朝軍の強者よ、名は何と言うか。」
「名乗る程の者ではない、今は貴方の首に用があるのだ!」
「....聞け我が頼盛軍の兵士達よここは勝てん!一旦退くぞ!!退却じゃあああああ!」
「え、た、退却!?おい俺との勝負は!?」
「すまんな、お預けじゃ!」
「えぇ、マジかよ...なんかしっくりこないなぁ」
「何をしておる優殿、何故追わないのですか!」
「義朝さん、しかし今頼盛軍を追えば内裏は平家に陣取られますよ!」
「いや内裏は捨てる。これから平家本陣の六波羅を攻め上げる!!」
「ここを捨てて六波羅を攻めるだって!?今の手兵じゃ無理です!せめて義平と合流を、」
「今の源氏の棟梁はこの義朝です。私の指示に従って下され優殿。」
「...わ、わかりました。」
義朝と優が頼盛軍を追随し始めると、ガラ空きになった内裏は平教盛が占領した。これにより義朝らは退路を絶たれてしまった。
そして義朝らが六波羅へ向かう途中、義平は1つの失敗を犯してしまう。
六波羅までの途中にある六条河原にて
「頼政さま、状況は以前変わらずです。」
「そのようだな。我が兵300騎は未だ動かずここにいる。そろそろ出すべきか....」
「しかし我らは六波羅を攻める役割があります。ここで戦火に飛び込めが六波羅攻めが失敗するかもしれませぬ。」
「確かにな。よし、我らはこのまま布陣するぞ」
中々動きを見せない頼政軍に対し、義平はしびれを切らした。
「何故だ何故動かぬのだ」
「まさか平家に寝返るつもりであろうか...」
「....ならば」
「んん?なんだこの音は?」
「よ、頼政様!敵が攻めてきました!」
「ついに清盛が打って出るか!」
「そ、それが、あの旗印は笹竜胆、つまり我ら源氏軍です!!!」
「な、なんじゃとぉおおおおおお!!!」
そう、義平は味方である頼政を敵だと勘違いして攻めてしまったのだ。この結果頼政の軍は壊滅し、頼政を結果的に平家方へと追いやる形となってしまったのだった。
「義朝様ーー!急報です!!!」
「なんじゃ!」
「ご子息の義平様が何故か源頼政軍を蹴散らしてしまいましたぁああああ!」
「何をしとるんだあの馬鹿息子ぉぉおおおおおお!!!」
負けだ。俺たちの負けだ。
退路を絶たれた状態で六波羅を攻めるのはただでさえ容易なことでは無いのに、道中の味方を失うのは正に袋の中のネズミだ。
「義朝さん、一度立て直しましょう。これじゃあ六波羅にたどり着いても勝てません!!」
「.......」
「一旦坂東へ行きましょう!あそこなら源氏方の兵士は沢山います。とにかく今は希望を持ってください!」
「....負けたのか?俺たちは」
「源氏の天下を創るのではなかっのか?」
「元より俺には戦の才がなかったのか?」
「何を言ってるんだ!敵がもう来ている!早く脱出しましょう!!!」
この日俺は初めて敗北を味わった




