第30話 時間切れ
何度も警備増強や増兵を提言する義朝、しかしそれを否定する信頼。二人の間に少しの亀裂が生じた。平家一門は帰京し、重盛は義平や優に情報を流した。重盛の情報が正しければ今宵動きがあるはずだが...
12月25日 夜
「どうして兵を増やさないのだ!!こうしている間にも平家は兵力を増しますぞ!!」
「だから言ったであろう、清盛が今朝私に仕えると書状を送ってきたと!それに我々は既に800騎の兵を集めておる。そんなに心配する必要など....」
「たかが800騎ですぞ!そんな状況何時ひっくり返されるかわかりませぬぞ!」
「ひっ!!」
信頼と義朝の喧嘩声が館の外まで響き渡る
「頼朝に朝長、ちゃんと兜の紐を締めるんだ。」
『はーい』
「それにしても本当に攻めてくるのか?どう思う義平?」
「...重盛が命をかけて嘘をつく必要はありません。恐らく本当のことかと。」
「だよなぁ、帝と上皇様は無事なのか?」
「其方については問題ないと信頼殿が。」
「..なぁ、もしも戦が始まったら俺たちは信頼殿と早々に手を切った方がいいのではないか?こんな言い方悪いけど足でまといになるぞ。」
「それは父上も薄々理解しているようです。今はとにかく警備を固めましょう。」
「そうだな、そうしよう。」
その頃一本御書所(後白河上皇の幽閉先)では
「今です上皇様、兵が向こうに行きました!」
「まさかこの私が幽閉されるとはな...でどうするのだ惟方?息子は無事なのか?」
「はい、帝も今宵脱出する計画です!とりあえず先ずは仁和寺へ急ぎましょう!!」
こうして後白河上皇は一本御書所を脱出し義朝・信頼陣営から離反した。
そして日付は変わり26日 午前2時頃
「なんと、この私におなごになれと言うのか?」
「声を抑えてください帝!!今はそうするしかないのです...」
「帝、こちらで簡易的に化粧を行いますので急いでください!」
「まさか我が人生に女装する時があるとはなぁ...」
数刻後
「おいおいおい、こんな時間に何処へ行くんだ?今夜中だぞ?」
「いやぁ身分の高い女が出かけることになりましてなぁ....ははは。」
「怪しいなお前、今一度牛車の中を見させてもらう」
そうすると警護人は牛車の中を確認した。そこには女装した二条天皇がポツんと座っていた。
「(頼む、バレないでくれえええええ!!)」
「..............................」
「(こっちを見るなぁぁあああ)」
「ん、問題ないな。さぁ通るがよい。」
「ははっ、」
「あ、危なかったァァァァ!!」
「もしかして私は綺麗なのか...?」
「とにかく清盛殿がお待ちしてる六波羅邸は急ぎましょう!」
こうして二条天皇も離反し、義朝や信頼にとっては最悪の事態となった。しかしこの時まだ2人は帝達が離反したことに気づいていなかった。
そして26日早朝
「....んん、すっかり寝ちゃったよ。ってなんか騒がしいな?」
「おいどういうことなんだ!」
「知るか馬鹿!俺に聞くな!」
「まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい」
信頼の館は騒乱としていた
「?なんかあったのか。敵が攻めてきた雰囲気でないような...」
首を傾げていると義平が急いでこちらに走ってきた
「はぁはぁはぁ、ゆ、優殿、はぁ、大変です!!」
「な、なんだよ...」
「帝と上皇様が行方不明となりましたァァあああ!!」
「.....は?」
「このぉ日本一の不覚人がぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ボコッ
「グハッ、この、義朝!貴族であるこの私を殴るとは何事か!!」
「黙れ!だからあれほど警備を固め兵を増やせと言ったではないか!!」
「それを貴様はあーだこーだと理由をつけ...この状況をわかっているのか!?」
「...また探し出せばよいではないか!!」
「この大バカ野郎!!今我々は賊軍なのだぞ!もう官軍ではないのだ!」
「賊軍だってぇ!?ま、待て義朝、私は一体どうすれば...」
義朝は凄い剣幕で振り返り、信頼の髪を掴んだ
「それは自分で考えろ!このマヌケ!!」
その頃六波羅 清盛の館では
「先程上皇様より義朝・信頼追討の院宣を賜った。これより敵を討つ!!」
「オオーー!!」
「....おおー!」
「遂に来てしまった、か。」
「すまない義平に優、俺はお前らを討つ!」
六波羅での戦を避けるため、平家方は平重盛と清盛の弟である頼盛が出陣した。
「叔父上、叔父上は友を殺したことがありますか?」
「何故今そのようなことをお聞きになる」
「私はこれから二人の友を殺さなくてはなりません。」
「....そうですか。それは耐え難いことですな。しかし貴方はいずれ棟梁になるのです。お父上の様に仲が良い者でも敵は敵、討たねばなりませぬ。」
「.....わかりました。覚悟を決めます。」
「急報です重盛様!御所に源義平率いる軍が現れました!敵は少数、勝てますぞ!」
「....くっ、わかった!これより我々重盛軍は源義平を討つ!行くぞぉぉおおおお!!」
「急報!!六波羅より平重盛の大軍が攻めてまいりました!!その数なんと1000騎!」
「(1000騎だと!?一体どこで兵を増やしたのだ...
しかしやるしかない)...わかった。我々は800騎で迎え撃つ!」
そして運命の時が訪れる
「.....義平」
「.....重盛」
「...っ、聞け我が平家の強者共よ!年号は平治、都は平安、そして我らは平家!三つ同じ平だ!!ならば敵を平らげようぞ!!!」
重盛が味方に激を飛ばし、敵が盛り上がった
「ふん、ならば同じ平がつくこの義平がお前たちを平らげよう、行くぞ重盛ぃぃぃいい!!」
「全軍行けぇぇぇええええ!!!」
遂に重盛と義平が衝突した。かつての友が刀を交えた
「何故だ、何故逃げなかった義平!?クッ、逃げろと言っただろうがぁあ!」
重盛は義平の首めがけて刀を振るった
「クソっ、俺は源氏の嫡男だ!逃げる訳にはいかねぇんだ!!」
「そんな誇りなど捨てちまえ!!」
義平は何度も重盛を追い回した、何度も何度も。
「逃げるな重盛、俺と一騎打ちをしろぉ!!」
「クッ.....うぁぁぁぁああああああああ!!!」
この日御所にて二人の仲は裂かれた




