第27話 消えた親王
源氏の棟梁源義朝が信西討伐のためクーデターを企てた。各々が戦の準備をする中、突如親王が館から姿を消した。戦の行方はわからず、親王は一体なぜ姿を消したのだろうか...
「ご、ご冗談を父上、源氏の世等と恐れ多いことを。」
「冗談では無い義平。平家が都を離れた今、この好機を逃す訳にはいかん。」
「それにこのまま源氏が今の地位に居たら先に逝った父上や弟達が報われん。」
「ですが父上、都で戦などと獄門にかけられたいのですか?帝や貴族が黙っているはずがございません。」
「....ふっ、」
義朝は奇妙に笑った
それはどこか心から嬉しい喜びというより、待ってましたって感じの笑い方だ。
「....!?ま、まさか」
「?どうされました優殿」
「まさか既に...」
俺は顔が真っ白になった。恐らく今俺が考えていることは起こりうることで最も悪手だと思うからだ。
「流石は六孫王。察しが良いですな。左様、既に帝や院近臣のもの達はこちらが 保護 している。言ってしまえば帝がこちら側にいる限り我々は官軍である。」
「な、なんと」
「そういえば朝長と親王様が見えないな。義平読んできなさい。」
「...はい」
「そうだ最初に言っておこう、おい頼朝。」
「!!は、はい!」
「今回はお前と朝長にも戦にでてもらう。これは源氏の一大勢力をかけた戦だ。心してかかれ。」
「わかりました父上。」
義平は部屋を出る直前頼朝の方を見て何かを感じとった。歳がまだ13であるためか、愚かながら目をキラキラさせ本当に源氏の世を作らんというばかりの顔であった。この弟をどうにか助けてやれないだろうかと。
「おい、おーきーろ朝長。いつまで寝てるんだよ」
「んがァ、帰ってきてたのですか、兄上」
「(こいつは長生きするよ)ははは....」
「?」
そして
「親王様、父上がお呼びです。」
返事がない
「親王様?今お取り込み中ですか?」
シーン、返事はやはり帰ってこない
「失礼します、って居ない!?」
親王は突然姿を消した。
義平は走り出し、親王のことを皆に伝えた
「...そうか。もう良い。先ほど頼朝にも伝えたがこれは源氏の一大勢力を用いる戦だ。よってお前達全員にこの戦には出陣してもらう。」
「....わかりました。していつ出陣するのですか?」
「四日後だ。四日後に源頼政や藤原信頼殿と合流する。その日に信西を討ち取るのだ。」
「平家はどうするのですか?」
「熊野詣からノコノコ帰ってきた所を討てばよい。若しくは討たずに部下として受け入れる。」
「無論奴らがそれを飲むとは思わんがな。」
それから二日経った
「どうする義平?重盛にこの事を伝えるか?」
「もう遅いでしょう。馬で奴の元へ駆けても書状が届くのは数日後、反乱の日には間に合いません。」
「だよなぁ、やるしかないのか...それに親王様は一体何処へ」
「もしかして優殿と同じく再び たいふすりっぷ
したのではないですか?」
「タイムスリップな。でもその線も否定できないな」
「もし親王様が未来へ行ったのならこの戦の結末がわかるやも知れませんね。」
「鍵は親王様ってことか.....不安しかねェ、、、、」
「と、とにかく今は戦の準備をしましょう、私は嫁や娘に会いに行ってきます、これが最期かもしれませんし。」
「...そうだな、行ってこい」
時間は刻々と迫っている。平治の乱まであと二日だ。
次回平治の乱 開戦




