第25話 未来の棟梁
時は平治元年、保元の乱が集結し平清盛と源義朝の勢力争いが日に日に増している今日、重盛の館で将棋を打つ義平であったが、二人の仲はいかに...
パチっ
「んでー新婚生活はどう?上手くやってるの?」
パチっ
「もう新婚じゃないし子どもも生まれたよ。男の子さ。」
「マジかよ。俺は女の子だったから次は男が欲しいなぁ。」
「しかし義平に子どもとはねぇ、それだけ時が経ったのか。」
「まぁ俺ら20なったばかりだし人生これからよ。」
パチっ
「あ、二歩だ。はいお前の負け〜」
「しまった、何時になったら重盛に勝てるんだよ」
平重盛は棟梁平清盛の嫡男で未来の平家の棟梁だ。
「まぁまぁ気を落とすなって。それよりも今日は本当に将棋をする為だけに此処へ来たのか?どうせ別の目的もあるんだろ?」
「バレた?」
「バレバレ。もうバレバレよ。」
「じゃあー正直言うか。今源平両家の棟梁がバッチバチに火花散ってる状態だけど大丈夫だと思うか?」
「やっぱりその話か。父上もなんで信西殿と手を組んだのかさっぱりだ。藤原なんて今は大したこと無いってのにさ。」
「父上の機嫌が最近すこぶる悪いんだよ。何とかならんか重盛。」
「んー俺は出世欲ないからなぁ。でも父上は出世欲の塊みたいな人だから、俺が何言っても聞かないんだよ。両家仲良く付き合えばいいのにさぁ面倒だよ。」
「父上は最近藤原信頼の館へ行ってる。何だか嫌な予感がするんだよなぁ。」
「まさか反乱とか?」
「帝に?流石に父上もそんな血迷ったことしないだろうさ。多分。」
「互いに父親には苦労しますなぁ。俺からももう一度話をしておくよ。」
「すまんな重盛、借りはいつか返すよ。」
「ったく、それより未来から来たお人はどこに行ったの?」
実は平重盛は俺が未来から来た人間だと知っている。平家の中でも良心と呼ばれる重盛には正体を現している。それに俺や義平と歳も近く仲も良好。余っ程の事が無い限り俺の情報は外へ漏れないだろう。
「あー暇だなぁ。あの二人将棋しかやらないから抜け出しちゃったよ。」
暇を持て余し外で散歩をしていた頃目の前から数人の武士が馬で駆けて行ったのが見えた。
「ん?なんだ事件か?」
「人だかりができている、ちょっくら行ってみるか。」
がやがや がやがや
「こーりゃ戦か?」
「みんな藤原信頼様の館へ向かっておるな」
「どうせただの逢瀬だろ、朝廷じゃ男色も珍しく無いって話だしよ」
「ちょいと失礼しますよ。この人だかりは一体なんですか?」
「んぁ?実はかくかくしかじかでな」
「なるほど、藤原信頼の館に....」
「(これは合戦の前触れか?逢瀬にしては人が多すぎる...5Pどころじゃないぞ)」
「あ、ありがとうございました。」
「んだぁ、わからん事があればなんでも聞いてくれ」
なんでもだって?
「じゃ、じゃあ最後に一つだけ、どうしたら未来に戻れるか知ってます?」
「はえ??」
平重盛の館
「それじゃあそろそろ帰るよ、清盛殿に何とか言っといてくれー」
「わかったよ。」
ガラガラガラガラ
「おーい義平もう終わった?」
「丁度今終わって帰るところですよ。」
「そっかそっか、なぁ重盛、急に変なこと聞くけどさ」
「ほいほい」
「今我ら源氏と平家でドンパチやったらどちらが勝つと思う?」
「...俺たちと戦うのか?」
「多分な。さっき信頼の館へ武士が出入りしてるのを見てきた。多分ありゃ源氏側の武士だ。」
重盛は深くため息をつき、深呼吸した。
「....多分引き分けくらいだろう。でもまさか争うなんてな...」
「清盛は当然迎え撃つよな」
「だろうね。来るもの拒まず迎え撃つって感じの人だし。」
「義平、今すぐ帰って義朝さんに状況を説明してもらおう。下手すりゃ都全体を巻き込む大戦となるやもしれん。」
「わ、わかりました、直ぐに行きましょう。」
「では失礼するよ」
「あぁ」
ガラガラガラガラ
「っあああああああああああ面倒なことになってもうたああああああああああああああああ!!!!!」
「叫んでるな重盛のやつ」
「えぇ、外まで聞こえますよ」
「しかし本当に戦が起こるのでしょうか?」
「なんとも言えんなぁ。元号も平治に変わったばかりだし、悪いことは起きないで欲しいけれどなぁ...」
しかしこの後俺たちには残酷な運命が待ち受けている事をこの時は誰も知らなかった。




