6.猛将イングマルの死闘
6.猛将イングマルの死闘
<ウィルスンはマイケルから調査報告書を受け取った。そこに書かれてあるのは、六年前の抗争でフォルク社の兵士を蹂躙して悪名をはせていたヤギュウ社の猛将イングマルの秘密の任務と死についての話だった>
イングマルは秘密裏にある仕事を任された。
”ロコ族の集落を襲撃せよ”
ロコ族は古代の宗教だ。
古代アスタロト教団のロコ派の氏族たちの生き残りが集落を築いている地域がある。
ヤギュウ社はそこに、イングマルをはじめとした精鋭を派兵した。
少数とはいえ、現代的な火器やパワードスーツを用意していた。ネルビオ隊も用意し、仮想空間での攻撃も想定した。
遠征自体は困難なであるものの、戦いは迅速に終わるものと思われた。
しかし、イングマルたちは、理術師の反撃にあった。
◇
ウィルスンは頭をひねった。
「理術、というのはおとぎ話のことか?火を噴いたり精霊を召喚したり、といった類のものだろ?」
マイケルが肩をすくめた。
「この文脈だと、それ相当の技術や攻撃方法を持っていると考えた方が妥当ですね」
「宗教的な文脈で行使されているなんらかの技術、か」
「ハッキリとしたことはわかりません。我々を躍らせるためのダミー情報の可能性もありますから」
「襲撃の目的については、一切かかれてないんだな」
「私が集めた資料では、ですね」
「なるほどな」
ウィルスンはウィンドウを別の資料に切り替えた。
◇
イングマルたちヤギュウの調査隊は、ロコ族の理術師たちと交戦した。
理術師たちの反撃に、イングマルをはじめ、ほとんどのものが対応できなかった。
ネルビオ隊が蛮族たちの血中ナノボットに影響を与えようと、仮想世界での戦闘に持ち込んだ。しかし、通用しなかった。
蛮族たちの大半には血液中にナノボットが入っていなかったのだ。
ネルビオでの攻撃は戦術として意味を為さなかった
それでも、蛮族の一部――特に若い人間――は血中ナノボットを所有していたようだった。
その一部に対してネルビオの攻撃が有効だった。
一方で、ネルビオに意識を潜り込ませてる間、エルデ側の調査隊員たちの身体は無防備になっていた。
そこをナノボットを持たない蛮族たちに狙われた。
ロコ族たちは、ネルビオを使った戦闘に対する対策ができていたのだ。
ネルビオで意識レベルが落ちたエルデの肉体を巧妙に攻める訓練がされているようだった。
イングマルのパワードスーツも理術により破壊された。
ロコと呼ばれる長老は、圧倒的な強さだった。
手から火を吐き出し、触れもせずに人やモノを吹き飛ばしたり、人を操ることができた。
調査隊は全てとらえられ、見せしめにイングマルが殺された。
ロコは人質を取り、ヤギュウ社に要求をした。
ヤギュウ社はロコ族と交渉を続けている。
調査隊はまだ解放されていない。