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ロコ  作者: Onimichi
14/16

12.包囲と混戦

<ウィルスンはD区の退却任務の途中、仲間のマイケルの足が撃たれた。ウィルスンは仲間を救出しながら、戦闘を続ける。戦闘の舞台は仮想空間ネルビオ内にも及ぶ。ウィルスンは家族の安否を確認する。態度の悪い兵士が現れる。>




 ウィルスンは凄まじい反応速度で、足下に転がった手りゅう弾を蹴り飛ばした。




 そして手近な瓦礫の壁に飛び込んだ瞬間、手りゅう弾が爆発。




 ウィルスンはマイケルを抱えたまま吹き飛ばされた。その身をしたたかに地面に打ち付けながら転がり、尖った瓦礫が何度も身に刺さり、瞬時に駆け巡る激痛が嵐のように神経を巡る。彼の筋肉のあちこちが裂傷を起こしていた。




 ウィルスンは四肢が無事であることを確認するように、身をよじりながら、


 「ジョージ、そのまま隊を率いて後退しろ」


 脳波で仲間に通信した。




● ● ●




 ジョージの返事を聞き、ウィルスンはマイケルの応急処置をした後、また前線で戦う仲間と合流し、他の部隊の撤退作戦を支援した。


 自分の部隊だけ逃げても、前線に穴をあけられれば総崩れとなる。


 ゆるやかに、そして確実に前線を下げていく必要があった。




 ウィルスンは指揮を取りながら自ら銃を取り奮闘した。


 「他の味方はどうした?」


 ウィルスンが叫ぶ。


 「間もなく到着します!」


 「指示を送る。合流せず、レーダーの索敵をかわせ。ガンマにネルビオで錯乱させろ」




 敵の援軍がどんどん前にきている。アンドロイド兵、パワードスーツ兵が増えてきた。




 軍事訓練を受けた狼のような姿をした”理獣”が、人間の兵士たちと息を合わせて戦闘に身を投じている。


 理獣の暗い紫の毛は、触るだけで刺さりそうだ。


 全方位に跳ねるその毛を揺らしながら、理獣どもが四方に散らばった。


 ヨダレを垂らしながら呼吸を繰り返す。口から飛び出た舌が、呼吸に合わせてびらびらと揺れる。


 地面に鼻をつけてひくひく動かし、何かを見つける。するとおもむろに顔を上げ、遠吠えした。仲間への合図だ。




 理獣はレーダーより正確に、フォルク社の兵士たちの位置を特定した。


 そして人間と同等の狡猾さで包囲して、ウィルスンたちを追い詰めた。


 ウィルスンたちは敵のアンドロイドや理獣たちに囲まれた。




 敵はじりじりとウィルスンたちに詰め寄った。




 確実に殲滅する意向だ。


 しかし、それはウィルスンにとって予想通りだった。




 ウィルスンが指示を仲間に出す。




 「なに!レーダーにはうつらなかったのに!」


 敵がどよめいた。


 敵の更に外側。援軍のフォルク社のアンドロイドと理獣が現れた。




 仲間が敵を囲む。




 ウィルスンは敵に囲まれる事を見越して、あらかじめ指示を出していたのだった。




 ウィルスンは腰のベルトにぶら下がった銃剣を取り外す。


 洗練された無駄のない所作。


 銃剣が、風の縫い目を裂くように、銃の先端まで流れついた。


 FBR16の先端に取り付けると、金属が金属に触れる。おうとつが噛み合った音が空間を刺す。




 どこからともなく一発の銃声が鳴り響き、乱戦が始まった。




 ウィルスンの股の下を走り抜ける敵の理獣。




 速い。




 ウィルスンは即座に上体を前に畳んで、自分の足の間から背後を確認した。剣先を獣に向ける。




 すると理獣がウィルスンが銃を撃つ前に――すでに倒れていた。


 




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