契約質屋
男は金に飢えていた。最低賃金での労働、独りぼっちの生活。そんな生活から抜け出したかった。なんとか金を手に入れる術はないか。そんなことを考えていた時、ある噂を聞いた。その噂とは、契約質屋の噂だ。契約質屋とは、物を渡す代わりに契約をすればお金を借りられるというもの。契約を破らない限り返さなくても良い。ただし、契約を破った場合、借りた金の倍額支払わなくてはいけない、というものだった。男は、質屋へ行った。古びた看板に、契約質屋と書いてある。ドアを開け暖簾をくぐる。
「いらっしゃい」
年老いたお婆さんが出迎える。
「あのー、契約したいんですけど」
男は言った。
「そうかい。どんな契約だい?」
お婆さんは優しい口調で聞いた。
「それがまだ決まってなくて」
「契約は、リスクが大きいほど金額が大きくなるしっかり考えて決めなさい」
男は考えた。そして、一ついい案を閃いた。
「お婆さん、この内容でいけますか?」
男は、見事契約を果たした。そして、10億円を手にした。この金は、男が契約を破るリスクの高さを意味している。しかし、男は大金を手にできるならとそんなことは気にしていなかった。
その日から、男は遊びまわった。夜の街へ繰り出し、豪遊した。豪華客船で世界を一周したこともあった。しかし、男は決して契約を破ることはなかった。
そんな時、ある一人の女性と仲良くなった。その女性は、とても可愛らしく男はその女性を好きになった。しかし、男はどうしても家族を持つことはできなかった。それは、もしも契約を破ってしまったらというリスクを考えてのことだった。男は苦渋の思いでその女性と別れを告げた。
そして、その日から男は、家族を持つことはなく、とうとう生涯を終えようとしていた。あれだけ貧しく苦しかった生活も、質屋のおかげで一気に華やかな生活になった。男は生涯に満足していた。ただ一つ後悔があるとすれば、家族を持たなかったことだけだ。看護師が、男を見守っている。
「俺はもう死ぬんだな、、、」
男は言った。
「そうかもしれないですね、、、」
看護師は言った。
「俺は、とある質屋で金を借りてから一気に人生が豊かになったんだ」
男は言った。
「そうなんですね。それはよかったですね」
看護師は言った。
「俺はなあ、その時の契約でとてもいい案を思いついたんだ」
男はあの日のことを話し始めた。
「俺はその案を思いついた時、これは果たして認められるのか?と不安になった。だけど、認められた」
「それはどんな案なのですか?」
看護師は聞いた。
「もう時期にわかる」
男は教えてくれなかった。
「でもなあ、その案を思いついたのはいいが、それだと家族は持てなかった。あんたみたいな、綺麗な嫁が欲しかったよ」
男は看護師に向かって言った。
「それは残念ですね」
看護師は言った。
「ああ、もうだめみたいだ。じゃあな、、幸せにな、、、」
男は、あの世へ旅立った。看護師は、優しく顔に布をかけた。そこへ、一人の男がやってきた。
「婆さんから質屋を引き継いだけどこんな男と契約してたとはなあ」
「どちら様ですか?」
看護師は聞いた。
「ああ、わたくしこちらの方と契約していた質屋の者でございます」
「そうでしたか」
看護師は言った。
「ところでどんな契約をされていたんですか?」
看護師は聞いた。
「それは、絶対に死なないという契約です。その契約のおかげでこの男は10億もの大金を手にした。でも今、こうして死んじまった」
「そうでしたか。この方はどうなるんですか?」
「まあ、家族がいれば家族に肩代わりしてもらおうと思ったが、家族もいねえ。つまり、どうすることもできねえってことだな」
「そうですか」
そして、質屋は男の顔の布をめくり、顔を見た後去り際に言った。
「あの世で元気でな」
そして、質屋は去っていった。
看護師は、布を元に戻した後こう言った。
「さようなら、お父さん」
男の知らぬ間にこうして立派になっていた娘。そしてそれを知らぬまま、こうして幸せに生涯を終えたのだろう。




