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♨泉の女神の手の中に金髪の彼女と銀髪の彼女  作者: 雛宇いはみ
♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨♨
4/6

4 ♨♨♨♨ あたしと銀髪の小人(?)

 「あ、おれ?」


 泉に落ちて気絶した後、次に目覚めたらあたしは泉の隣に寝ている。当然体はびしょ濡れだった。もう服を脱ぎたい。でもそんなことより今気になっていることはいっぱいだ。


 あたしはどうやって泉から上がってきたの? もしかして希湖浬(きこり)くんがあたしを救った?


 でも身を起こして周りを見回してみたら誰もいない。希湖浬(きこり)くんはどこに?


 「これは?」


 あたしは人間みたいな形をしている小さな何かを目撃した。動いているから人形ではなく、小人か妖精かな? ここは異世界だからこういう生き物がいてもおかしくないかも。そう思ってその生き物をじっと見つめたら……。


 「あたし? なんで銀髪?」


 なぜかこの生き物はあたしと同じ顔で、同じ格好をしている。髪の毛はあたしと同じツインテールだけど、銀髪になっている。


 「妖精? 小人?」


 あたしは右手で小人(?)を(つか)んで、はっきり見えるように自分の顔の近くまで持ち上げてきた。


 肌が柔らかい。今自分の指の感触からわかった。やっぱり生身の生き物だ。


 なんか可愛い……って言いたいけど、この子はあたしと同じ顔をしているからもし()めてしまったらなんか自分のことを()めるみたいでなんか複雑な感じだ。


 「よ、澪乃(みおの)ちゃん、無事でよかった」

 「わ! (しゃべ)った!?」


 小人(?)があたしに話しかけてきた。やっぱり(しゃべ)れるよね。しかもあたしのことを知っているようだ。あたしと同じ顔をしているから知ってもおかしくないとは思うけれど。


 「澪乃(みおの)ちゃん、落ち着いて。オレだ」

 「え? 『オレ』って誰? あ、まさか希湖浬(きこり)くん? そうだよね!?」


 姿は全然違うけど、この(しゃべ)り方は確かに希湖浬(きこり)くんと似ている。大体女の子なのに『オレ』って普通はないしね。


 「うん、そうだよ。ここはオレとお前しかいないだろう」

 「やっぱりそうだね。でもなんでこんなにちっちゃくなって……。しかもあたしの姿に? でも銀髪?」


 まだ今の事情をよく把握(はあく)できなくて聞きたいことはいっぱいある。


 「それは……。これについて話したらちょっと長いけど……」


 そして希湖浬(きこり)くんは目覚めたばかりで何もわからないあたしに今までの出来事を教えてくれた。それは本当に突拍子(とっぴょうし)もない話だった。






 「それでオレは『オレが落としたのはその銀髪の彼女』と答えたら、嘘()いた罰として女神はこの体にさせたというわけだ」

 「……」


 希湖浬(きこり)くんがこの姿になった原因をここまで聞いて、あたしは愕然(がくぜん)とした。


 「もう、希湖浬(きこり)くんの馬鹿!」

 「うわっ……!」


 あたしがそう大きな声で(ののし)ったら希湖浬(きこり)くんが苦しそうな顔をした。もしかして小さな希湖浬(きこり)くんにとってあたしの声がでかすぎるのかな? 声を小さくしないと。


 「あ、ごめん。なんか(あき)れすぎて、つい……」

 「ううん、オレが悪かったから。反省(はんせい)してるよ」

 「自覚していたらそれでいい」


 まったく、希湖浬(きこり)くんったら。もし銀髪のあたしが欲しいのなら言ってくれればいいのに。金髪でも銀髪でも、希湖浬(きこり)くんのためなら髪を染めるくらい安いご用だし。


 「でも銀髪の澪乃(みおの)ちゃんは本当に可愛いんだよ」

 「……っ!」


 またそんなこと……。希湖浬(きこり)くん、全然反省(はんせい)してないじゃないか。もう……。


 「い、痛っ!」

 「あ、ごめん」


 今あたしはつい希湖浬(きこり)くんのいる右手に力を入れすぎたから、彼(女?)は痛そう。この小さな体はなんか(もろ)すぎて優しくしなければすぐ潰れそうだ。


 「オレを潰す気か!?」

 「だって、希湖浬(きこり)くんはまたあんなこと言うから」

 「とりあえず、今の体勢は変えてもいいかな? さっきからオレはずっと澪乃(みおの)ちゃんに(にぎ)られたままだし」

 「そうね。じゃ……」


 あたしは希湖浬(きこり)くんの小さな体(あたしの姿だけど)を自分の左手のひらの上に乗せた。手の中で(にぎ)ったままではもし力加減が誤ったらやばそうだけど、手のひらの上に置いたらその心配はないだろう。


 「これでいいかな?」

 「まあ、さっきよりましかな」


 希湖浬(きこり)くんはあたしの手のひらの上に胡坐(あぐら)をかいた。あたしと同じ姿なのに、何というだらしない姿勢だ。


 「今は女の子の体だから『女の子座り』にして欲しいね。ワンピース服だし」

 「いや、あんな座り方はしたことないよ。どうやればいいか……」

 「ならあたしが手伝ってあげようか」


 そう言ってあたしは右手を希湖浬(きこり)くんの下半身に近づけようと……。


 「いや、要らない! わかった。オレは自分で座り方を変えるから」


 あんなに怖がらなくても……。脅かすつもりはないのにね。


 「やっぱりこんな座り方、慣れないね」


 文句言っているけど、結局希湖浬(きこり)くんはちゃんと女の子座りにした。ほら、やればできるんじゃないか。


 「ところでその体は結局一体何なんだろうね? あたしとそっくりだし。違うのはサイズと髪の色だけみたい」

 「オレもよくわからない。確かに澪乃(みおの)ちゃんそっくりだ」

 「服の下も同じかな?」


 見た目はあたしそのままだけど、服の下はあたしが見えないからわからないよね。


 「うん、ブラも付けて、パンツも履いているし、胸も……」

 「うっ……!」

 「澪乃(みおの)ちゃん、なんか顔怖い! 手は震えてるよ!」

 「知ってるってことは、まさか脱いで全部見たの?」

 「あっ」


 今希湖浬(きこり)くんは「しまった」と言わんばかりの顔をしている。


 見られた? 胸も、スカートの中も……。たとえあれはあたし自身の体ではなくても、同じように作られた体だから男の子が勝手に触ったり(のぞ)いたりしたらやっぱり……。


 「いや、全然脱いでないし、見てないよ。何となく感じただけで。胸を()んだ時も服越しで……」


 希湖浬(きこり)くんは狼狽(うろた)えながら弁解しようとしている。


 「む、胸……()んだの!?」

 「うっ……。それは……」

 「あたしは()んだのと訊いている!」


 まごまごした希湖浬(きこり)くんにあたしは答えを(うなが)した。


 「……は、はい!」

 「……っ! やっぱり……」


 否定はしないんだ。正直でよろしい。


 「ご、ごめんなさい! もう勝手なことはしないから、落ち着いて!」

 「まったく……」


 冷静にして、あたし。今怒ってうっかりして手を出したら希湖浬(きこり)くんは潰されて取り返しのつかないことになっちゃうかもしれない。


 希湖浬(きこり)くんも男の子だし。いきなり女の子の体になってこんなことくらいするんだよね。男は誰だってエッチなんだから、恋人のあたしはちゃんと理解しないとね。


 あたしだってもしある日目覚めて希湖浬(きこり)くんの体になって、好き放題勝手なことができたら……。って、そんなことは今関係ないし。


 とりあえず今は()め事をする場合ではない。もう些細(ささい)なことはもう構わず、さっさと真剣にこの状況を打開する方法を考えないとね。


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