9話「立ち塞がる兵器」
ゴーレム(俺)の新武装、ホイール
ゴローダー。これを使えば高速で
走る事ができる、のだけど……。
「ととと止まらないぃぃぃ……!!」
俺はその力を見誤り、マリーネの
家の近くから、草原地帯の更に
奥の方へ爆走を続けている!この
ままでは遠くの方にある森の木々
にぶつかって俺の体は木っ端微塵
に……!
……ん?何かが西側の森から
出てきた……?
「ぴぃ~!」
……あ、あれはスライムだ!
アニメやゲームで有名なモンスター
だから俺だって分かるぞ。って
マズイ!このままじゃ俺とスライム
がぶつかってしまう!ぶつかった
ら……あのスライム死ぬのかな!?
「そこのスライム、どいて~!!」
「ぴ、ぴぃ!!」
俺もスライムも恐怖の叫びを
上げた。そして1体と1匹の距離
は縮まるばかり……早く止まらない
と!その時……
「うわっ!?」
俺の体が急に重たくなり、上半身
を地面に叩きつけられた。体が
全く動かない……これは魔術か!?
「大丈夫!?リョータロー君!」
後ろから聞こえるこの声は……
マリーネ?
「マリーネ……どうやって追いついた
の?それに体が重く……。」
「加速魔術で私の走るスピードを
上げて、重力操作魔術の
「グラビドン」で貴方の体を重く
してスピードを殺したのよ。手荒な
マネをしてごめんなさいね。」
なるほど、そういう訳か……。
「ビックリしたぁ……。」
いきなり体が羽毛のように軽く
なったような体験だった。あんな
スピードをこのホイール
ゴローダーは出すことができる
なんて……。
「あら、スライムじゃない。」
マリーネは近くにいたスライム
を見て、スライムに手を差し
出した。するとスライムは自分の
体をマリーネの手に擦り寄せた。
「ぴぃ~。」
「フフっ、可愛いわね。」
「スライムって悪いモンスターじゃ
ないの?」
マリーネがグラビドンを解いた
ので、俺は体を起き上がらせて
彼女にそう聞いた。
「スライムには、穏やかな個体
と凶暴な個体がいて、その性格は
スライムの住む地域によって
異なるの。この辺に住むスライム
は穏やかな個体が多いわ。」
スライムにも良いものと悪いものが
あるのか。
「へへ……」
俺はスライムに手を出してみた。
俺みたいな鉄の塊にも懐いてくれる
と良いんだけど……。
「ぴ……ぴぃ!」
その時、スライムが森の方を見て
何か不穏なオーラを感じ取り、
それを恐れてマリーネの胸に飛び
混んだ。俺はそれを、「俺を
怖がった」のだと勘違いしたの
だけど……。
「う……ショック……。」
「違うわ……森の中に何かが
いる。」
マリーネは「貴方を怖がった訳じゃ
ない」、と言う意味も込めてか、
森の中にいる「何か」の気配を
感じ取った、そう話した。
「何だろう……モンスターかな。」
「こうなったら、私達がそれを
倒して、このスライムちゃんを
安心させましょう!」
マリーネは、スライムを怖がらせる
天敵を、自分達で倒してしまおう
と提案した。
「お、俺達に倒せるかな……。」
「大丈夫!スライムはモンスター
の危険度のレベルは最低の獣
レベル。そのスライムが恐れる
となるとその上の大獣レベルか、
よくて竜レベルのモンスターだわ。
私とリョータロー君ならいける
わよ。」
と、マリーネは言っている。
彼女の言う通り、俺達に勝てる
相手だと良いんだけど……そうして
俺とマリーネは森の中へと足を
運んだ。危険なのでスライムは
森の外で待っているように命じた。
穏やかな個体は人の命令を守れる
んだな……。
俺達は森の中を歩いた。森の中
には俺のいた世界では見た事の
ない植物や虫がいて、ここが
異世界なのだという事実を改めて
思い知らされた。
そして、森の中の大きな泉を
通り過ぎた所で、スライムが
恐れた「それ」は俺達の前に
姿を現した。
「リョータロー君!!上!!」
「え……?」
マリーネの叫ぶような声を聞いて
俺は目を上に向けた。そこは森
の中であるが1箇所だけ木が生えて
おらず、空が筒抜けになっていた。
その空からある物が降ってきた。
「っ……!!」
俺はそれが何なのかは分からな
かったけど、なんとなく身の危険
を感じその場からマリーネと共に
飛び退いた。数メートル程それと
距離を置く俺とマリーネ。そして
それは……俺と同じゴーレムだった。
「d/s/m&5: dIh」
紫色の装甲に、顔にはロボット
でいう所のモノアイ的な赤い瞳。
そして今……声?いや、機械音の
様なものを発した。
「マリーネ……こいつは!?」
「見ての通り……ゴーレムね。」
やっぱりゴーレムか……話す事は
できないだろうか?
「貴方、自分の主人は____」
マリーネがゴーレムに対して、
主人は誰かと聞いたその時、
なんとゴーレムは掌からフレイム
バレットを彼女へ向けて放った
のだ。
「きゃっ!?」
マリーネは間一髪の所で横に飛び
退いて回避した。つまり……この
ゴーレムは敵って事か!?
「リョータロー君!こいつ多分
はぐれゴーレムだわ!主人を
無くしたゴーレムは暴走して、
人を襲う事があるの!」
「そんな……!」
このゴーレムと戦うのか……!?
俺とマリーネで!?……いや、
ここで倒さなくちゃ、俺達以外の
人が襲われてしまうかもしれ
ない!
「やろうマリーネ!!俺達で!!」
「もちろん!来い!
魔杖サバーニャ!!」
俺とマリーネは目の前のゴーレム
と戦う事を決め、彼女は魔杖を
召喚して、それを構えた。さぁ、
敵はどう来る……?
おまけ
Go!Go!ゴーレム!
良太郎とマリーネは人からものを
盗むゴブリンの群れを退治しに、
王国アストレアの山を訪れて
いた。そこで良太郎は、様々な
ものを賭けてボスゴブリンと決闘する
事になった……。
舞台はゴブリンの住処の洞窟の
奥、そこにある決戦場。
マリーネ「リョータロー君!
頑張って!」
良太郎「う、うん!(負ければ
マリーネがボスゴブリンのお嫁
さんに……。)」
ゴブリン「ボス!アンナヤツ
ヤッチャッテ クダサイ!」
ボス「モチロンダ!」
良太郎とボスゴブリン、2人は
リングへと足を上げた。
ゴブリン「ソレデハ!ショウブ
……カイシ!」
2人の準備が整った所で、ゴブリン
がゴングを鳴らした事で勝負は
始まった。
ボス「ウォォォォォ!!」
ボスゴブリンは生粋の肉体派だ。
先ずは良太郎に向かっていき、
右ストレートをお見舞いした。
それを左手でガードする良太郎。
メスゴブリン「キャー!ボス
ゴブリンサマ!ガンバッテ!」
この決闘を見守るのは99
パーセントがゴブリン達だ。
ゴブリン達、特にメスゴブリンは
ボスを応援している。
ボス「ハァッ!」
そして良太郎に右ストレートを
食らわせ、彼にガードさせた隙に
ボスは左脚の蹴りを敵の腹に
直撃させた。
良「うっ……!」
後ろに下がる良太郎。しかし
彼はゴーレム。痛みという概念
が無い彼はすぐに体勢を立て
直してボスに向かっていった。
良「はっ!」
良太郎はボスの腹に向かって
右手のアッパーを打ち込もうと
した。しかし、良太郎側から見て
左に避けてそれを回避するボス。
ボス「フンッ!」
良「っ!」
そしてボスは反撃し、良太郎の
顔に左手のパンチを食らわせた。
マ「リョータロー君!!」
ゴブリン達「イケー!
ヤッチマエー!」
追い詰められる良太郎。優位
に立つボス。マリーネは良太郎
を心配した。しかしその時、
良太郎はボスから距離を置いて
動きを止めた。
良「…………。」
ボス「ドウシタ?」
マ「リョータロー君……一体
何を……?」
ボス「コッチカラ イクゾ!
ハァーッ!」
動かない良太郎を見て、チャンス
と思ったボスは彼の顔に右手の
ストレートを放った。しかし……
良「!」
良太郎はそれを間一髪の所で
回避し、そのままの勢いで
左手のアッパーをボスの顎に
直撃させた。
ボス「フグゥ……!」
良「……よし、いける!」
良太郎は、特オタだった。幼い
頃から仮面ファイター、ハイパー
戦隊、ウルトラバトラー等の
特撮を見て育った彼は、ヒーロー、
いや、それを演じるスーツアクター
の動きをカッコイイと思い、いつ
からかその動き、殺陣を勉強して
真似するようになったのだ。
あまり運動はしない彼だが、
アクターの真似をするその遊び
には全力で取り組んだ良太郎。
その技術が活かされる時が
ついに来たのだ。良太郎の反撃
が始まる……。
次回へ続く。
この度はこの作品を読んでいただき
ありがとうございました!僕は
進〇の〇人という漫画が好きで、
その作品のような深みのあるドラマ
やあっと驚く伏線回収に惹かれて
「僕もそんな作品が描きたい」と
思って小説描きの趣味を初めました。
実はこの作品の1話で既に伏線を
貼ってはいるのです。まぁ、僕は
〇山先生のような凄い作家には
到底及ばないかもしれませんが、
僕は僕のやり方で頑張っていこうと
思いますので、これからもよろしく
お願いします!