3話「戦う兵器」
王国アストレアは、国王ケン・
アストラルの統べる王国で、
ガルダン大陸の中央に位置する。
そしてアストレアの周りには
アストレアを四方から囲む4つの
王国、東の王国ミズノエ、西の
王国ディアーガ、南の王国
アダン、北の王国ザームで
ある。これら5つの王国から、
ガルダン大陸は形成されている
のだ。
という話を俺はマリーネ聞き
ながら、俺達はアストレアの
北の村、ルスタ村付近の森へと
歩いていった。村の近くに
現れたモンスター、バーサーク
ウルフを討伐する為に。
そして歩くこと数十分、俺達の
前に木々の生い茂った結構広め
の森が姿を現した。
「この森に、バーサークウルフ
がいるんだよね?」
「えぇ、気を引き締めて
いきましょう!」
俺の質問にマリーネはそう
返して、持ち歩いた杖を強く
握りしめた。
「さぁ、行くわよ!」
「う、うん。」
そうして俺とマリーネは森の
中へと足を踏み入れた。
森の中は……ちょっと暗くて不気味
だけど、木々の間から太陽の光が
漏れて少し明るくもある絶妙な
暗さだ。
にしても俺これからモンスターを
倒すのか……前世ではオタクで、
特撮見たりアニメ見たりゲーム
やったり漫画読んだりで……運動
はちょっとしかやってないんだ
けどなぁ……あ、特撮と言えば俺が
死ぬちょっと前に仮面ファイター
シリーズの新作が始まったばかり
だし、
ロボットアニメの機動鉄人ガンバ
リオのプラモも積んだままだし……
あー転生するならせめてやりたい
事やってから悔いを残さず死に
たかった~……って今更言っても
もう遅いか……俺死んだんだよな
……てことはお母さんもじいちゃん
も悲しんでるかな……友達の一真も
花菜も……そして……
「リョータロー君?」
「え?」
その時、マリーネが俺の名前を
呼んだ。
「さっきから呼んでるんだけど、
何か考え事でもしてるの?」
あ、そうなんだ……全然聞こえな
かった。
「ご、ごめん……ちょっと考え事
をね。」
「何か気になる事があったら、
何でも私に聞いてね。遠慮
しなくてもいいから!」
マリーネは胸を張って俺にそう
言ってくれた。マリーネは優しい
な……。そう思ってたその時。
「グルルルルル……!」
俺達は周りを、今回のターゲット
であるバーサークウルフの群れに
囲まれてしまっていた……!
「数は……4匹!」
マリーネは杖を構えてそう呟いた。
「マリーネ、俺どうすれば……!」
「見ててリョータロー君、
私が戦いのお手本を見せて
あげるわ!」
マリーネはそう俺に返すと、
4匹いるバーサークウルフのうち
の1匹に自分の杖を向けて、
こう叫んだ、
「アイスバレット!」
と。するとマリーネの突き出した杖の
先に氷塊が形成され、それがマリーネ
の定めた標的に飛んでいった。
「グォン……!」
アイスバレットを受けたバーサーク
ウルフは呻き声をあげた後、その攻撃
で力尽き、地面に倒れた。これが
魔術か……しかも一撃でバーサーク
ウルフを倒せた……マリーネが強い
からかな。
その時、1匹のバーサークウルフが
雄叫びをあげ、俺に飛びかかって
きた。
「グォォオ!!」
き、来た!どうする……やれるかな
……いや、やって見せろよ俺!
やってやるぞ!
「うおおおおお!!」
俺目掛けて勢いよく飛んできた
バーサークウルフを、俺は勢いに
任せて右手を振りかぶり、拳で
バーサークウルフを殴り飛ばした。
「やった……!」
俺の攻撃を受けてその場に倒れ込む
バーサークウルフ。いける……俺
でもモンスターと戦える……そう
決心した。
「やるわねリョータロー君!」
マリーネも俺にそう言ってくれた。
「グルルァァ!!」
今度は1匹のバーサークウルフが
マリーネに飛びかかり、それに
対してマリーネは魔術で応戦した。
「アイスランス!」
マリーネは「アイスランス」、と
叫び、杖を敵に突き出した。
今度は細長い氷塊が作り出され、
その氷塊が敵に飛んでいき、敵の
体に突き刺さった。
「グォォ……!」
敵は唸り声をあげ、その場に倒れた。
あとは1匹だけだ……!その時俺は
「自分にも魔術が使えるのでは
ないだろうか……?」と考え、魔術
で相手を倒そうとしてみた。
「よーし、俺も魔術を使ってみるぞ!
くらえ!アイスバレット!」
……………………………
使えない!?俺はバーサークウルフに
右手を突き出し、アイスバレット!!
と大きな声で叫んだのだけど……
何も出なかった……。
「俺……魔術が使えないの……?」
俺はかなりショックを受けた。
「グォォ!!」
その時、動きが止まった俺に
最後の1匹のバーサークウルフが
襲いかかってきた。
「うわっ……!」
いきなり襲われそうになった
俺は情けない声をあげてしまった
けど……。
「アイスバレット!」
マリーネが俺の前に立ち、魔術
アイスバレットを敵に撃ち、敵は
吹っ飛んで後ろに生えてた木に頭を
ぶつけて力尽きた。これで最後の
バーサークウルフを倒す事に
成功した。
「……ふぅ、これで終わりね。」
マリーネはそう言うと俺の方に
振り向き……
「まぁ、初陣にしては良くやった
と思うわ。お疲れ様!」
と俺を励ましてくれた。……まぁ、
マリーネがそう言うならそれで
いっか……と俺は納得した。
「じゃあ、これからどうするの?」
と俺がマリーネに聞くと、
「モンスターの死体をギルドに
持って行ってクエストクリアよ。
モンスターを倒したっていう証拠
が必要だから、モンスターの死体を
ギルドに持っていくの。」
と彼女は答えた。……ていうか、
俺はなんで魔術を使えなかった
んだろうか。それが気になり、
マリーネに聞いてみた。
「ねぇマリーネ、俺は魔術使えない
の?」
それに対するマリーネの返答は、
「ええ、ゴーレムの戦闘スタイルは
基本的には格闘戦だから、魔術は
ほぼ使えないようなものよ。」
というものだった。魔術使えない
のか……使いたかったなー……。と、
俺が落ち込んでいたその時
「さぁ、帰る準備を……え?」
俺とマリーネは、あるものを見て
驚いた。俺達の視線の先では……
地面が光り輝いていた。光の中
には魔法陣のようなものが
地面に描かれており、その中
から何かが姿を現した……。
「マリーネ……!これは?」
「これは……ティアマトの子が
生まれる……!」
俺の質問に、マリーネはそう
答えた。ティアマトの子が……
生まれる……?これが……。
「ウォォォォォン!!」
光の中から生まれたそれは、
大きな雄叫びをあげ、その姿を
俺達の前に姿を現した。
「あれは……タイラントウルフ!」
マリーネはそのティアマトの子
の正体を知っているようだ。
バーサークウルフと似た狼みたいな
モンスターだけど……さっき戦った
バーサークウルフよりも大きい……
タイラントウルフっていうのか……?
「どうする……マリーネ?」
「グルルルルル!!」
タイラントウルフは俺とマリーネ
を見て、唸り声をあげて威嚇
している。
「私たちの事を敵と判断した
みたい……戦うしかないわ!」
マリーネは杖を構えて戦闘態勢に
入った。このモンスターは一体、
どれほどの強さなんだろうか……。
おまけ
Go!Go!ゴーレム!
俺とマリーネはこの日、王国
アストレア内の地下ダンジョン
に足を運んでいた。
良太郎「本当にお宝なんてあるの
かなー。」
マリーネ「ええ、間違いなく
あるわ!」
良太郎「ところで、そのお宝って
俺達が勝手に取っていいもの
なの?」
マリーネ「この地下ダンジョンはね、
100年近く前のこの国の王の宝物庫
だったみたいなんだけど、ある時
この中にモンスターが沢山湧いて
出てきて、国王はこの宝物庫を
放棄したの。それで国王は「勇気の
ある者はあの宝物庫に入ってお宝
を取ってきてもいいぞ」って宣言
したのよ。
このチャンスを見逃すまいと、
数多くの冒険者達がこの宝物庫に
足を踏み入れたんだけど、ほとんど
の冒険者はモンスターにやられて、
ここから逃げ帰ったみたい。
でも私は2級冒険者!並のモンスター
なら敵じゃないわ!」
マリーネはそう語りながら意気揚々
と地下ダンジョンの奥へと歩を
進め、俺はマリーネについて行った。
歩くこと10数分程で、俺達は
ある扉の前まで来た。
良太郎「この扉、何か書かれて
いるよ。」
マリーネ「これは……古い言葉で
「金庫」って書かれてるわね。
きっとこの部屋の中にお宝がある
に違いないわ!」
マリーネはそう言うと魔杖サバーニャ
を召喚し、魔術で扉を破壊しよう
とした。
マリーネ「アイスバレット!」
マリーネの放った氷の弾丸、アイス
バレットは扉を破壊し、俺達は
部屋の中へと入っていった。そこ
で俺達を待ち受けていたのは……。
スケルトン「カタカタカタカタ
カタ……。」
マリーネ「スケルトン!?しまった
……!」
部屋の中には大量の骸骨モンスター、
スケルトンが待ち構えていた。
マリーネ「仕方ないわね、リョー
タロー君!戦うわよ!」
良太郎「う、うん!」
こうして、俺達の地下での戦いが
始まった。
次回に続く……。
この度はこの作品を読んでいただき
ありがとうございました!この作品
のヒロイン、マリーネ・エリダヌス
の名前の元ネタは、魔術師のマーリン
です。マリーネは魔術師なので、
マーリンという名前をいじって、
マリーネという名前にしました。
エリダヌスは、星座のエリダヌス座
が元になってます。僕にとって
魔術師のマーリンと言えば、
七〇の大〇のマーリンのイメージ
が強いですね。これからもよろしく
お願いいたします!