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平治の乱(3)


 平治元年(1159年)12月


 藤原信頼は自らの窮地を感じとっていた。


 信頼は後白河上皇派である。その寄って立つところの後白河上皇は平氏に確保されてしまい、取り戻すことにも失敗した。

 史実では上皇、天皇の身柄を押さえた信頼に、清盛は名簿みょうぶを差し出し、恭順の意を示しつつ、上皇、天皇の奪還を目指したが、今は後白河上皇が清盛の保護のもとにある。


 12月25日、清盛は藤原信頼の追討を命じる院宣を上皇より下された。


 これに慌てたのは二条天皇派の貴族らである。

 信西を討ったからには、これ以上、信頼らと手を組む必要はない。

 下手をすれば、巻き添えで諸共に討たれる可能性もある。信頼と袂を分かつならここらが潮時か。


 深夜、二条天皇派は帝と共に密かに内裏を脱し、六波羅に駆け込んだ。


 そして翌26日、清盛は二条天皇が六波羅にあることを喧伝けんでんし、これを聞いた京の貴族は次々と六波羅へと参集し始めた。


 一方、朝になって二条天皇らの脱出を知った源義朝は、信頼による宮中の警備の杜撰ずさんさを激しく罵り、対する信頼も義朝による宮城周辺の警備の緩さを非難した。

 信頼と義朝がお互いに責任のなすりつけ合いをしている間に、形成不利とみた日和見の貴族は、いつの間にか宮中から姿を消していった。


 もはや清盛と信頼・義朝一派では、保有する軍事力においても、大義名分においても圧倒的な差がついており、戦う前から勝敗は明らかであった。


 さて、そのような状況のなか、貴族たちの参集で常になく賑わう六波羅に、この日、遠江より平重盛率いる武士団が帰着した。



 -京 小松邸


 「父上、遅くなり申し訳ございません。道中、川の増水で思わぬ足止めをくらっておりました。」


 僕らはやっと京に到着した。ほんと、まさかのことだったよ。雨で川が増水して何日も進むことができなかった。

 帰ってきたらすべて終わっていたなんでことにならなくて、本当に良かった。


 「おう、重盛。お前、大手柄だぞ! よくぞ邸宅の防備を厚くしておいたな。おかげで上皇様が賊どもにとらえられずに済んだぞ。」


 清盛パパが満面の笑みで迎えてくれた。

 けど、え? どういうこと。史実と何か食い違ってない?


 詳しく清盛パパに現状を確認して驚いた。

 結果としては史実通りの流れになっているが、過程がまるで違う。どうも僕が後白河上皇と親密な仲であったことが影響しているようだ。


 しかし、小松邸の防備で源義朝たちを退けられたのは幸いだった。後で家人たちを褒めてあげないと。


 「それで、これからどう動かれるのですか。」


 「うむ。こちらから攻めてもよいのだがな。それでは宮城が戦場となる。さすがにそれは避けたい。できれば宮城から引きずり出して決着をつけたいところだ。」


 なるほど。万が一、宮城に火でもかけられたら大事だからな。清盛パパの懸念はよく分かる。


 「では誘い出しますか?」


 「いや、もう1つ懸念があってな。先頃、義朝が坂東に送ろうとした使いの者を捕らえた。どうやら源義平の手勢が京に向かっているらしい。義朝を誘い出している最中に接近され、挟撃されるのはいささかまずい。よって、義平勢の動きをまず、つかむ必要があるのだ。」


 清盛パパは手にした扇を強く握りしめながら思案顔だ。


 「その事でしたらご懸念には及びません。源義平の手勢は、遠江にて既に討ち果たしております。」


 「なんだと!」


 清盛パパが驚愕する。


 「義平も討ち取りましてござります。」


 おお! と話を聞いていた家人たちから感嘆の声が漏れた。これで敵に挟撃される懸念がなくなったのだ。あとは正面の敵を打ち破るだけだ。


 「あい分かった! ならばこれより賊どもを宮城より引きずり出して討伐するのみ。出陣じゃあ!」


 清盛パパが勢いよく立ち上がり出陣を告げると、割れんばかりの喊声が天を衝いた。



 仕度が整い次第、出陣となったが、その合間に後白河上皇の様子も見ておかないとな。

 僕は勝手知ったる小松邸の主殿へと向かった。



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