城がどこにもない
保元3年(1158年)12月
こんにちは平重盛です。
農業政策は無事に動き出しました。・・・頼長の主導で。
僕がチート知識で書き出したものを頼長が次々と現状に落とし込んだ政策に変えていってくれます。
ほんとに保元の乱で頼長を助けられて良かった。
ちなみに頼長には、僕の狼たちの1匹に護衛についてもらっています。ここで頼長に何かあったら、とんでもないことになってしまう。
さて、農業政策と同時に進めたいことがある。
軍制改革。
こっちは僕と京から付いてきてもらった平氏武士団ですすめていきたい。
やりたいことは歩兵戦力の強化。
この時代の主戦力は騎射戦闘を行う武士団だ。だけど、保元の乱で思ったのだが、戦い方が戦国時代のそれではない。慣例に沿った開戦方法があるし、集団で戦っているように見えるが、実態は一騎打ちがいくつも行われているというだけだ。
もちろん例外はあるし、あくまでそういう傾向ということなのだが、集団で勝ち取る勝利よりも、個人の勝利が重視されているのは間違いない。
「と、いうことで足軽の運用と、その主武器として槍を採用します。」
平氏武士団の前で高らかに宣言したが、ぽかーんとされてしまった。
いや、ここまでは想定内。
さっそく試作した槍で模擬戦をしてもらうことにした。
「長いな。」
「長いっすね。」
「長っ。」
「振り回しにくいぜ。」
槍を手にとった皆さんが次々に感想を口にする。槍は6mあるからかなり長い。もちろん信長の長槍隊がモデルだ。
「じゃあ、さっそく模擬戦をはじめまーす。」
まずはじめは長槍を装備した1隊と普段通りの装備をした1隊で騎乗もしている。
長槍隊には槍の使用方法も説明しておいた。
「始めっ!」
開始の合図と共に双方が打ちかかる。
「うお、近づけねえ!」
長槍に遮られて接近できない騎馬隊。もともと突撃を主とするわけではないから、もともと突破力は低いので、長槍で止められてしまう。
そして・・・
「ぎゃあ! いてえ! 痛えっすよ!」
振り下ろされる長槍に叩かれて、次々と後退していく騎馬隊。
もちろん、お互いに本気でやりやっている訳ではないが、それなりの結果がでたと思う。
「分かったかい。この長槍を主武器とした足軽隊を編成していきたいんだ。」
「ですが若、これは武士の戦い方とはいえませんぜ。」
結果はでたが、不満を口にする武士もいる。
「足軽隊を編成するのは武士じゃなくて、農兵や傭兵にする予定だよ。ただ武士団にも集団戦闘もできるようになってもらいたいけどね。」
僕が説明するも、それでも不満そうにしている武士は一定数いる。困ったな。彼らは京でも少しずつ思想教育してきたから、まだ柔軟な考え方ができているはずなんだけど。
「おい、おめえら! 若がやりたいって言ってんだ。俺らが支えてさしあげねえでどうするってんだ!」
武士団の1人が声をあげた。それに強く賛成する声が5、6人。よく顔を見ると祇園社事件で投獄されているところを助けに行った人たちだ。
その後、彼らの説得で概ね平氏武士団の協力を得られることになった。
ところで、僕にはもう1つ軍事面でしたいことがある。
この時代の城を見ておきたいのだ。
「城って何です?」
「あれじゃね? 陸奥にある多賀城府とか。」
「ああ、九州とかにもあったな。でもありゃ異国への備えだろ。」
「だな。ということで若。遠江には、ありませんぜ。」
城がない!? なんてこった。戦国時代には乱立している城がまだ無いっていうのか!
頼朝が坂東から攻め寄せるのを遠江で防ぎたいのだ。その拠点となる城を築きたい。できれば木曾義仲への対策に越前あたりにも城を築きたいのだが。
遠江ならやはり浜松か。
平氏武士団に今の浜松の様子を聞いてみた。
「はままつ、っすか? ああ波万万都!」
どんな当て字だよ!
「あれじゃね、時子様が読んでた浜松中納言物語!」
「ああ! 式部卿宮が死んじまって、唐の国の太子に転生するっていうあれだろ。」
平安時代にまさかの転生ものかよ!
そのあとは、なんやかんやでグダグダになってしまい、軍制改革だけを取りまとめることができた。
後日、在庁官人の皆さんに聞いて浜松郷なるところがあることが分かり、なんとか調査開始にこぎ着けた。




