家を建てよう!
保元3年(1158年)2月
こんにちは平重盛です。
突然ですが、家を建てることにしました。
理由はいくつかあります。
平氏がこのところ大所帯になってきて、今の邸宅が手狭になってきたこと。
僕が正五位下、左衛門佐になったこと・・・など、です。
決して結婚するなら新しい家が良いとか、坊門殿から「結婚するなら親との同居はイヤよ。」とか言われたからではありません!
実は家を建てるという話は前々からあったのですが、断っていました。
せめて平治の乱が終わるまでは清盛パパと一緒にいたほうがなにかと都合が良いと思ったからです。
それともう1つ。にっくきは枕草子、清少納言のせいです。
あやつが枕草子に、「五位にあがった程度の男が、粗末な家を良く見せようと、垣根だけキレイにしたりとか、牛車だけ新調してみたりとか、せっまい庭にやたらと木を植えてみたりとか見苦しいわ。五位程度なら親兄弟と同居しているほうがマシよ。」とか書いたせいで、五位の皆さんは家が非常に建てにくいのだ。
誅すべし、誅すべし、誅すべし!
中堅サラリーマンの悲哀を思い知るがいい。
ところで僕も五位ですが、家を建てる大義名分ができたのです。
「雅君、家を建てます。いつでも駆けつけられるように、ここから北にある六波羅小松第に建てますね。つきましては資金を・・・。」
法住寺で後白河天皇に報告とおねだりをして快諾してもらった足で、清盛パパに会いに行く。
「父上、家を建てます。いつでも駆けつけられるように、ここから南にある六波羅小松第に建てますね。つきましては資金を・・・。」
支援者を2人も獲得しました。
影でニヤリと悪い笑みがこぼれます。
「ところで重盛、何やら時子がお前のことを探していたぞ。後で行ってやれ。」
おっと、危ない危ない、清盛パパの前だったよ。居住まいを正してから清盛パパのもとを辞去して時子のもとへ向かった。
「時子ー、呼んだ?」
時子の部屋に入ると、時子は昨年産まれた重衡を寝かしつけているところだった。
「重ちゃん、もうちょっと待ってね。」
と小声で言われたので、そっと部屋の端に座って待つことにした。
重衡かあ。この子のことは覚えている。東大寺の大仏を焼き討ちしてしまう子だ。壇ノ浦の戦いで負けたあと、源頼朝が僧どもに引き渡して、斬首されるんだよな。引き渡しから斬首の間にもきっと色々あったはずだ。
うん、この子も僕がきっちり守ってあげないと。
1人決意を固めながら、ふと時子の側にいる女房がいつもの人とは違う気がして顔をみた。
「・・・っ!!」
ひ、一目惚れの君だーーー!
坊門殿はとっくに気がついていたのか、顔を耳まで真っ赤にして俯いている。
「2人とも何かへんだよ?」
僕たちのただならぬ様子に気がついたのか、時子が声をかけてきた。
「か、時子、そちらの女性は?」
「ん? 重ちゃんは会うの初めてだっけ? あたしの妹だよ。」
え?ええ?えええーーーーー!?
ちょっと待て、落ち着いて整理しよう。
坊門殿は、
後白河天皇の女御(予定)の滋子さんの妹で、
宗盛の婚約者の清子ちゃんの姉で・・・、
時子の妹!?!?
そうか、後白河天皇はこのことを知っていたから「身内」って言っていたのか。滋子さんと時子が姉妹だから。
後白河天皇と親戚になっちゃうよ。