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ここはオラの土地だぁ


 保元2年(1157年)8月


 こんにちは平重盛です。


 「オラァ、のんびり挨拶してんなやあ! 作業の邪魔じゃあ!」


 はい、すみません。すみっこに行きます。


 ただ今、大極殿、朝堂院、朱雀門など、宮城の中枢部の大改修中です。これらの施設は延久4年(1072年)に再建されてから細々と修理を繰り返してきましたが、いい加減、ガタがきはじめたので大改修を行うことになったのです。


 ちなみにこの大改修でも歴史改変をやってしまいました。

 さっきの「ガタ」です。

 まだ、この時代にはガタつくという言葉がなかったみたいで、うっかり現場作業中のお兄さんたちに「だいぶガタついてきてたからねー」とか言ってしまったばっかりに、そしてその表現がなぜか妙に気に入ったみたいで、一気に流行し始めてしまいました。

 今年の流行語大賞いただきです。


 さて、この大改修は、信西が言い出したものだ。

 そして費用が相当かかっている。

 いかに信西といえ、ない金銭は出せない。

 そこで、保元の乱で恩賞を賜った者等に「君たち、たっぷりと恩賞あげたよねー、だったら宮城の改修にちょっとくらい貢献してもバチは当たんないんじゃないー?」と遠回しに出資を求めてきたのだ。


 清盛パパも超がつく金持ちだから、きっちり目をつけられて、念入りに出資を要求されている。

 清盛パパは表面上はニコニコしながら受諾した。


 そして、我らが平氏が担当するのが、仁寿殿の再建。この仁寿殿は、宮城のほぼ中央に位置し、内宴や、庭で行われる相撲、蹴鞠などの行事を見物するための多目的ホールのような役割の建物だ。


 そして、せっかく資金と人手を出すのだ。常に平氏一門の誰かが現場にいて、「我々平氏が頑張って建ててますよー」と宣伝(アピール)している。今日は僕の当番だ。


 ところで、新しいことをするには金銭がかかる。

 信西は目下、資金集めに躍起になっている。


 資金集めの方法はいろいろあるが、信西が目をつけたのは土地、中でも田んぼだ。

 平氏(うち)がじりじり権益を広げている貿易じゃなくて良かった。いや、土地でも困るけど、土地だと困るのは平氏だけじゃない。


 信西は、後白河天皇をバックにして権力を振るっているから、増やしたいのは国家の土地、つまり公田だ。

 この公田と別に私人が所有するのが荘園だ。私人といっても百姓ではなく、その多くは貴族や寺社名義である。国家権力に対抗して田を守ろうとするなら大樹に寄るのが一番だ、とばかりに名義貸しが横行している。おかげで国が荘園に手出しできにくくなっている。


 そして現場では、じわじわと公田を侵食する行為が横行している。

 荘園を管理する荘民たちは、荘園の隣に公田があると、その境をじわりと越えて、荘園と一緒に少しずつ耕作する。境界を示す石があれば公田側にじわりと移動させ、柵があれば抜いて数歩先で挿し直す。耕作実績を作って、「ここはオラの土地だあ。」と主張する。

 そして毎年、じりじりと田んぼの境界を押し広げていくのだ。


 これが地味に公田から上がる収益に影響している。実にセコいやり方だが、現代でもあったことなので、常套手段なのかもしれない。

 この行為に信西は怒り心頭だ。さっそく規制を命じた。


 規制を命じられた荘民たちは親分に注進する。


 「親分ー。信西のヤロウがオレらの上がりをはねやがるんでさあ。」


 「なんだとコラァ! うちとやろうってのか!」


 自分たちのしてきたことは棚に上げて、信西に喧嘩を売られたと怒るのは寺社と有力貴族たち。

 信西は、金銭と一緒に恨みも集めてしまっているようだ。


 ただ、信西は吝嗇(けち)ではない。仁寿殿を造営したことで、その恩賞として平氏を代表して、僕が正五位下となった。


 「いや、かかった経費に見合ってないだろ。」


 清盛パパは不機嫌そうだ。

 「厳島の姫に貢ぐ資金が・・・」

 と、ぼやいていたことは時子に注進しておこう。


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