問答無用で転生させられた
視界にもやがかかったような感じだった。
今寝てるな、と分かっているけど寝ている。そんな感じだ。
「あ、気がつきました?」
不意に後ろから若い女性の声がした。びっくりして振り向くと現代風にアレンジしたようなキラキラした十二単を着た女性が目の前でふわふわ浮かんでいた。
「ちょっと人手が不足したので、別の次元に移動してもらいますねー」
のんびりとした声でとんでもないことを言いやがる。
「・・・言いやがるって、わたし神様ですから、もうちょっと敬った感じでお願いしますね。」
おっと、思考も読み取ってしまう感じですか。
「おほん、雪村将太さん。それでは良き人生をおくってくださいね。で「ちょ!?ちょっと待ってーーーー」は、行ってらっしゃーい。」
止めようとしたけれど無駄だった。視界が真っ白になっていく。
気がつけば、赤子の体になっていた。
「ほぎゃあ(日本だよね・・・ここ)」
ぼーっと見上げる天井は日本の時代劇で見たことがあるような天井だった。
別の次元と聞いていたので、よくある異世界転生ものかと思ったら、ちょっと思っていたのと違うんですけど。
「ほぎゃほぎゃ(日本史は正直、詳しくないんだよね)」
独りごちるも、出る言葉は赤子のものだ。
「ほぎゃぁ(有名人だったら、なんとかなるかもしれないけど・・・)」
いろいろと考えを巡らせていると、ばたばたと騒がしい音をたてながら、イケメン男子が部屋に入ってきた。
「おう!元気にしているか息子よ!わしが父、平清盛であるぞ!」
「ほぎゃああ(超有名人が父親だったーー!)」
保延4年(1138年)、平清盛に待望の男児が誕生した。平重盛である。
自分の立ち位置に驚いた重盛だったが、驚きはそれだけにとどまらなかった。
「ほぎゃぎゃぎゃあ(なんで清盛が金髪碧眼なの!?それにっ!?)」
清盛の背後にいる現代日本ではまず見かけないもの・・・。
白毛の狼が宙に浮かび、興味深そうに2つの紫瞳でこちらを見つめていた。
「ばふばふー(前言撤回。ちょっと思ってたのと違うどころじゃない。知ってる日本とかなり違うんですけどっ!)」