漫才 面接
「めちゃめちゃ面接したい」
「なに? 急に」
「いやこの前ね、コンビニバイトの面接落ちちゃって……」
「あ、そうなんだ。次に向けて面接の練習したいってこと?」
「違う違う。俺が面接するの。面接したいの」
「いやなんで面接すんだよ。面接受ける側だろ」
「だってあそこの店長さ、あっさり俺のこと落としたけどさ、そもそもよ? お前面接受かんのかって話」
「いや意味わからん受かるでしょ店長なんだから」
「いやわかんないよ~? 実際やってみないとこればっかりは。俺今から面接官やるから、お前俺を落とした店長やって」
「いやだから意味わからんわ面接官って何だよお前は誰だよ」
「そんぐらいわかるでしょ? ワイン転がして葉巻くゆらせてる感じのやつだよ! ほら早く! 面接官待ってるから! 部屋で待ってるから入ってきて!」
「なんでいきなりテンションたけえんだよ……。えー、失礼します」
「待って? 今扉開けた?」
「は?」
「ダメだよ扉ある体でやってもらわないと。扉開けるところから見てるから。扉の開け方から面接って始まってるから。そこで合否が決まると言っても過言じゃないから」
「めちゃめちゃしゃべるなこいつ……コンコン。失礼します」
「ハイ失格~!!」
「は?」
「コンコンって狐のマネとか舐めてるの?面接」
「いやノックの音だよなんで狐のマネすんだよ。ていうか失格ってなんだよ」
「いいから早くやり直して」
「全然こっちのこと無視だわ。……ガチャ。失礼します」
「はい失格~!! ガチャって何よ? なんでガチャ引いてんの? 面接なめてるの?」
「いやキツイだろさっきからその言いがかり。いいよもう扉は先進まないから」
「いや扉超重要だって言ってるでしょ? 逆に言えば扉さえちゃんと開ければ合格よ? 扉チャレンジよ?」
「扉扉うるせえなこどもチャレンジみたいに言うな」
「いいから早く、早く扉開けて!」
「うるさいなもう……コンコン(ドアを叩く音)。ガチャ(ドアノブをひねる音)。失礼します」
「にんまり」
「これはいいんだ。ドラマの音声ガイドっぽくなってたけど」
「あ、忘れてた今扉鍵しまってるんだった。鍵閉まってる体でやり直してもらっていい?」
「なんで鍵しまってんだよ。お前閉じ込められてんのかよ」
「鍵あそこに……前はトイレの清掃用具入れのとこに隠されてたから」
「なんだよそれいじめられてんのかよ」
「鍵持ってきてよぉ! 扉早く開けて開けて!」
「なんか怖いわ急に流れ変わったわ」
「扉急いで急いで助けて!」
「助けてって言っちゃったよ。……じゃあはい、鍵を持ってきました、扉開けましたよと」
「ハイ騙された失格~~!! 残念でした!」
「え、なんで騙した? 助けてあげたのに失格の要素なくない?」
「いや、ていうか今鍵ちゃんと開けてないでしょ? ズジョリっ、カチャン(鍵を開ける音)って言った?」
「擬音こりすぎだろ。音声ガイドあったらもういらないでしょ」
「じゃあもういいよ扉は! そんな扉扉言う? 扉ばっかりで全然進まないじゃん! 扉なんてどうでもいいでしょ実際!」
「さっきから俺が言ってるんだけどね、清々しいまでの逆ギレ」
「さてここで問題です。ここまで私は扉って何回言ったでしょうか?」
「知らねえよ。なんかいっぱいだよ、いっぱい言ってるよ」
「ちなみに今の扉は回数に含めません。あ、この扉も含めないで」
「めんどくせえわもうどうでもいいわ」
「え、いいの?最後の問題100点だよ? 一発逆転合格あるよ?」
「なに急に出てきた点数? 今って何点?」
「今7点」
「よくわかんないけど7点入ってるんだ? 点数入る要素はあったんだ」
「さあ扉って何回言った? 回答は! あ、この扉は回数に入れて」
「いやもうややこしいわ。もうわからんわそんなもん」
「あーっと残念時間切れ! 店長ここでまさかのトルネードスピン! からのスクリューパイルドライバー! ドラゴンスープレックス!」
「いや死ぬわ完全に殺しにくるコンボだろそれ執拗な追い打ちやめろ」
「今回は残念ながら店長、不採用となりました! 今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます! ではまた次回お会いしましょう!」
「会わねえよ、もういいわ」
隣かい三巻発売中!
コミック二巻も出るよ!