表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

第七話 マルセルの討魔団

 翌朝、レオとルーカスは家を出て山を下りた。

 マルセルが所属する討魔団の町に着くと、レオはすぐに異変に気付いた。町には人気がなく、まるでゴーストタウンのようだ。

「魔物が出たのかもしれないな」

 レオが言うと、ルーカスが頷いた。

「そうだな」

 二人は町の路地を歩いて行った。

 すると、急にルーカスがレオの腕を掴み、レオの後ろに隠れた。

 レオは何だろうと思いつつ二人の行く先を見た。そこに、犬が一匹いるのが見える。

 レオはルーカスを振り返った。

「本当に犬苦手なんだな」

「大嫌いだよ」

「魔物は平気なのになんでだ? ルーカスの方がよっぽど強いだろ?」

「無意味に吠えてくるじゃないか。俺、犬がいると魔術使えなくなるんだよ」

 レオは目を丸めた。

「本当に?」

「うん」

 普段はレオに良いところを見せようとしたり、強気な態度を取ったりしているルーカスが、こうして弱みを見せる姿は少しかわいい。

「他の道行こう」

 レオが言うと、ルーカスが頷いた。

 二人は横道に入り、裏の路地を歩いた。先ほどの犬の姿は見えなくなったが、ルーカスはまだ少し怯えている様子だった。

「まだ怖いのか?」

 レオが尋ねると、

「こういう道って犬がいそうじゃん」とルーカスが答えた。

「大丈夫だよ。僕が先を歩くから」

「ごめん。ありがとう」

 ルーカスは、レオより半歩下がる形で、レオの服の袖を掴んだまま不安そうについて来る。

《ほんとかわいいな。なんか、かばってあげたくなるかも》

 レオはそんなことを思いつつ、細い路地を進んで行った。

 町の中心に近づいて行くと、人の声や物音が聞こえてきた。二人は音のする方に近付いて行った。

 角を曲がると、人が三人いた。二人が男性で一人が女性だ。三人は建物の陰から通りの様子を伺っていた。

「あの……」

 レオが声を掛けると、三人が「うわっ!」と声を上げてこちらを振り返った。三人はレオとルーカスの姿を見て、安堵した表情を浮かべた。

「びっくりした。急に声を掛けないでくれ」

「すみません。あの、何をしてるんですか?」

 レオが尋ねると、男の一人が答えた。

「魔物が出たんだ。この町の討魔団では全く歯が立たなくて、魔物が今も町を徘徊している状況だ」

「あなたたちは討魔団の方ですか?」

「そうだ」

「じゃあ、マルセルの事を知っていますか?」

 男が驚いた表情を浮かべた。

「マルセルの知り合いか?」

「はい」

「そうか。マルセルに会いに来たのか。マルセルは怪我をして休んでる」

「え? 怪我をしたんですか?」

 レオは心配になった。一体どの程度の怪我なのだろうか。

「ちょうどここへ帰って来た時に魔物が現れて、魔物の攻撃をくらってしまったんだ。足を怪我して動けないでいるよ。でも、安心しな。頭ははっきりしていて、いつもどおりだから」

 それを聞いて、レオは安心した。

「会えますか?」

「ああ、もちろん。案内するよ」

 男は快く答えて、レオとルーカスを先導して歩き出した。

 やがて、平屋建ての大きな石造りの建物に辿り着いた。ドアを開けて中に入ると、中には討魔団員と思われる人たちが数人いる。地下への階段を下りて行くと廊下があり、廊下を挟んで両側にいくつか部屋があった。

 その内の一つの部屋の前に着くと、男がドアをノックした。

「マルセル、客が来たから通すぞ」

「はい」

 中からマルセルの声がした。

 男がドアを開けた。

 部屋は、ベッドがあるだけの狭い部屋だ。

 ベッドの上にはマルセルが横になっていた。マルセルはレオとルーカスの姿を見て、かなり驚いた様子で目を見開いた。

「レオ、ルーカス!」

 レオとルーカスは部屋に入り、ベッドに近付いた。

「大丈夫か?」

 レオが尋ねると、マルセルが頷いた。

「はい。まさかここまで来てくれるなんて。ありがとうございます」

 確かに、不思議だ。マルセルは勝手に押しかけてきた迷惑な人だったはずだ。しかし、一緒に暮らす内に情が移ったのか、レオの心の中で、マルセルに対して家族にも似たような感情が芽生えていた。

「怪我をしたんだろ?」

「はい。情けない事にあっという間にやられちゃいまして。足を怪我して動けなくなってしまったんです」

「痛むのか?」

「少し。ですが、幸いそれほどひどい怪我ではありませんので、しばらく療養すれば治るようですよ」

「そっか。良かった」

 すると、ルーカスが、

「相変わらず弱いな」とマルセルに言った。

「面目ありません」

「俺なら速攻で倒せるぜ。俺が倒して来てやろうか?」

「え?」

 マルセルが驚いた様子でルーカスを見つめた。

「俺が倒してやるよ」

 ルーカスはそう言うと、レオとマルセルが止める間もなく、部屋を出て行ってしまった。

「ちょっと、ルーカス……」

 レオはため息をつき、マルセルに、

「僕も様子を見てくるよ」と言って、部屋を出た。

 討魔団の拠点を出たルーカスをレオは急いで追った。

「待って、ルーカス」

 ルーカスが振り返った。

「レオは待ってていいよ」

「いや、僕も一緒に行くよ」

 すると、ルーカスがにやついた。

「俺の事、心配?」

 マルセルを心配したように、レオはルーカスの事も心配だった。しかし、それを認めるのは悔しかったので、

「何言ってるんだよ」と、呆れたように返した。

 二人は町の中を歩き、町を徘徊しているという魔物を探した。

 やがて、どこからともなく大きな足音が聞こえてきた。

 レオとルーカスは顔を見合わせ、足音のする方へ近づいて行った。

 二人の向かった先に、全身を毛で覆われた二足歩行の魔物がいた。大きなオオカミが立ったような姿だ。魔物は二人に気付くと、足を止め二人の方に体を向けた。

「レオはここにいて。俺がやっつけてくるから」

「僕も行くよ」

「いいから」

 ルーカスはそう言うと、魔物の方に近付いて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ