アグレッシブな墓選びをする男【漫才】
ツッコミ「どうもこんにちはー」
ボケ「僕ね、30歳くらいで殺されると思うんですよ」
ツッコミ「おいおい、いきなり物騒だな。誰に殺されるって?」
ボケ「タケノコに」
ツッコミ「お前はきの〇の山の重要人物か何かなの?
いや大丈夫だよ。これまでタケノコに殺された奴なんて一人たりとも存在しないから」
ボケ「そんな根拠のない励ましなんていらないよ! どうせ僕なんか下から生えてきたタケノコに突き刺さって死ぬ運命なんだよ!」
ツッコミ「それ多分タケノコじゃないね。お前は少し悲観的になりすぎなんだよ。一緒に楽しい事してさ、パーッと盛り上がろうぜ」
ボケ「本当? 僕のやりたい事に付き合ってくれるの?」
ツッコミ「もちろん」
ボケ「じゃあ今からお墓選びの予行演習やろうよ!」
ツッコミ「それ楽しいか!?」
ボケ「君が店員をやってね。ウィン(自動ドアが開く動き)」
ツッコミ「始まっちゃったよ。
……いらっしゃいませ」
ボケ「あのぅ、すみません。僕、お墓に入るの初めてなんですけど」
ツッコミ「でしょうね! 基本的にこの業界にリピーター居ないからね!」
ボケ「何かおすすめの物件はありますか?」
ツッコミ「不動産屋か! 何で賃貸探すノリで来るんだよ! え、お墓選びに来たんですよね?」
ボケ「もちろん」(多少ムキになって)
ツッコミ「……。えー、このお墓なんかどうですか? そこそこ大きくて値段もお安くなっております」
ボケ「結構よさそうですね。でもちょっと表札大きくないですか?」
ツッコミ「これ表札じゃない! 正面の『〇〇家之墓』って書くところ!」
ボケ「ちなみに間取りはどうなってますか?」
ツッコミ「そんなもん無えよ! やっぱり部屋選ぶノリじゃねえか!!」
ボケ「え、無いんですか?」(心底意外そうに)
ツッコミ「当たり前だろ!」
ボケ「出来れば2LDKが良いんですけど」
ツッコミ「居住性を重視するな! お前は古代エジプト人か!!」
ボケ「あと出来れば子供部屋が欲しいんですけど」
ツッコミ「何でお墓の中で子育てする気なの!? 何その死んでからも留まることを知らない欲望!
いいか? お墓に入っているってことは骨になってるってことだぞ?」
ボケ「でも骨になってから結婚するかもしれないじゃないですか!」
ツッコミ「お前、骨になってからのバイタリティー高ぇな! 生きてる時に頑張れよ!」
ボケ「じゃあせめて電気付いてますか?」
ツッコミ「いやイカ釣り漁船か! お墓が発光してたら死ぬほど不気味だろ!」
ボケ「でも仕事から帰った時、明かりが付いてなかったら淋しいじゃないですか」
ツッコミ「土に還るんだよお前は! あと仕事って何!?」
ボケ「えっ、じゃあせめて収納スペースはありますか?」
ツッコミ「収められるのもお前だよ!! ちょっと一回戻ろうか。
何で物件探すテンションで来るの? 何で君はお墓に居住性を求めてるの?
そしてこれ、楽しいか?」
ボケ「いやクソつまんないわ」
ツッコミ「じゃあ何でやったんだよ! 次はもっとしっかり気分が盛り上がることやろうぜ?」
ボケ「よし分かった。じゃあこれからお寺巡りに行こう!」
ツッコミ「よし」
ボケ「墓地を見学するために!」
ツッコミ「待って! さっきと変わってない!」
ボケ「へー、ここが墓地かー」
ツッコミ「来ちゃったよ来ちゃったよ」
ボケ「多くの住宅が立ち並んでますね」
ツッコミ「全部墓だよ! 見渡す限り!」
ボケ「すごく閑静な所ですね」
ツッコミ「墓地だからな! 騒がしかったらこの世ならざるモノの仕業だからね!」
ボケ「うーん、空気が美味しい!」
ツッコミ「ちょっとサイコっぽい言動やめろ!」
ボケ「見て、このお宅とっても素敵じゃない?」
ツッコミ「お宅て。もうツッコむの疲れた」
ボケ「お邪魔しまーす」(しゃがんで入ろうとする動作)
ツッコミ「待て待て待て待て! 何してんの!? 本当に何してんの!?」
ボケ「いや、どんな人が住んでるのかな、って思って」
ツッコミ「骨だよ!」
ボケ「え、人は?」
ツッコミ「居たら事件だろ!
もういい加減にしてくれ。もっとこう、音楽のライブとかテンション上がるところに行こうぜ?」
ボケ「そうだね。じゃあこれから葬儀場の見学に行こうよ!」
ツッコミ「いい加減にしろ。もういいよ」
お読みいただきありがとうございました。