表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朱血姫  作者: ガチ無知
63/70

開校

朱たちが島に戻った翌日から、集会所で授業が始まった。とはいえ、生徒にとっても初めての授業なら、朱たちにも教師をすることは初めての経験である。全てが手探りで始まった。


朱たちが朝、集会所から出てみると、村の子供達がズラッと並び満面の笑みで待ち構えていた。カルディンがノラに手を引かれ仲介役として連れてこられたらしく、しょぼしょぼと目をこすっている。たっぷり十秒ほど、あーーーーーーと声を上げてからパンと手をたたいた。


「じゃ、とりあえず仮の教室の集会所に入ってくださーい。」


フランクの言葉をカルディンが島の言葉で叫ぶ。いよいよ学校が始まるんだという実感を得たのか、子どもたちが歓声を挙げて集会所に雪崩込む。子どもたちを追って、フランクとカルディンも集会所に入る。はーい、少し静かにしてねぇ!というフランクの叱責をカルディンが叫ぶ。子どもたちは島の言葉で怒られちゃったぁ!と大興奮で喜んだ。カルディンが、子供ら怒られて喜んでるよぉ!と大笑いした。


「なんじゃ。怒られて喜ぶとはのぉ。」


さすがの朱もふふふと笑い声を漏らす。そんな朱を見て、健太の心も浮き立った。興奮醒めやらぬ子どもたちの集団を見て、菊千代が言う。


「集めたばかりの、海の男をまとめるには、共同作業をすると良いです。何か全員でやりませんか?」

「おぉそうか。じゃ、昼ごはん用の薩摩芋畑を作ろうか。畑道具は何処に置いたかの?」

「あぁ!俺わかる。取ってくるよ!」


嬉しそうに健太が集会所を飛び出ていく。フランクが教師然とした声色を気取って、


「あー。これから、畑を作りまーす。芋を作ります。毎日みんなで食べるための芋でーす。」


カルディンがニュアンスや心情まで込めた島言葉で子どもたちに呼びかける。「毎日」「みんなで」「一緒に」ということが、子どもたちにはとても新鮮で、興奮が静まらない。種芋と農具を持った健太が戻ると、子供達は道具を奪い合い始めた。朱もなんだか楽しくて仕方がないらしい。子供達を押しのけて鍬を持つと叫ぶ。


「まずはわしと健太が土を掘り起こす。力が必要だからな。その後で、お前たちは畝の作り方などを聞きながら作業しろ。」


朱の叫びは神託に等しい。子供達は波が引くように静かになった。うむ。と頷き健太から鍬を受け取った朱は、村長に充てがわれ縄で囲われた、日当たりの良い土地に鍬を振り下ろす。ドン!と地響きとともに、まるで生クリームに振り下ろされたかのように、抵抗もなく鍬は柄まで土に潜り込んだ。


「ほれ、健太、お前も手伝え!」

「お、おぉ!」


普段超然として物静かな朱が、はしゃいだ叫びを上げるので、健太も釣られて笑顔がこぼれる。二人が人外の力を奮ったので、あっという間にふかふかの土に変わる。健太と菊千代が仕草で作業を伝えると、子供達は我先にと道具を手に取り、畑に飛び込んだ。午前中のうちに作業が終わり、全体に種芋が植えられた。


「子供達の笑い声に包まれた畑は、普通より収穫量も品質も良くなりそうな気がするよ。」


という健太の言葉に皆がうなずく。集会所に戻ると、微妙な空気に満たされた。これから何が始まるのか楽しみでしょうがない生徒たちと、何をしたらよいのかわからず、沢山の輝く瞳に射抜かれて照れまくる教師陣。初心者同士のお見合いの様な手持ち無沙汰感があった。


「あ・あー。うー。それではー、これから授業を始めます。上級クラスは私の周りに集まってください。英語で会話ができる。と思う人は上級クラスです。そしてまずは、購入してきた書籍が箱に入ったまま積んであります。その中から好きな書籍を選び読んで、理解できない事や、わからない事があったら私に聞いてください。皆さんには一冊ずつ英語の辞書を配ります。わからない単語はその辞書を使って調べてみてください。一つの作品を読むたびに、読んだ感想を英語文にして発表してもらいます。感想は難しかったら、面白かった、つまらなかった、悲しくなった、何でも良いです。そしてそういう気持ちになった理由を書きましょう。中級クラスには英語を教えます。ある程度英語の学習をしたことがある子供達は朱さんの周りに集まってください。そして初級クラス用の絵本を読んで、その続きを考えて書いてください。そして発表してもらいます。一番笑いが取れた子供が優勝です。わからない言葉や、どう書いたら良いかわからない文書があったら朱さんに聞いてください。中級クラスにも辞書を配ります。わからない言葉は朱さんに聞く前に一度辞書を引いてみてください。それで、初級クラス。英語を一度も教わったことのない子供は健太さんの周りに集まってください。五歳までの子供は、用意したオモチャで遊んでもいいし、絵本を読んでもいいです。六歳以上の子供はアルファベットを毎日三回書いてください。そして小さな子供達のために辞書を使いながら、英語の本を読んであげてください。判りましたか?」


カルディンの通訳を混じえた、フランクの説明が終わり、子供達は元気に返事をした。初級クラスの小さい子はもちろん満面の笑みを浮かべていたが、上級クラスの、既に成長して大人の仲間入りをしている子供まで皆笑顔で答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ