表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朱血姫  作者: ガチ無知
43/70

新天地


ゆうに十五分は考え込んでいたであろうフランクが顔を上げると、朱は寝転がったまま横に転がり、東屋の庇を抜けて空を眺めていた。フランクと馬頭は菊千代の指示を受けて船を動かす準備に、健太は俯いて固まったままであったが、紅潮は和らぎ桜色になっていた。


「ちょ、ちょっとちょっとちょっと!私イッショケンメ考えたでありますのに、なぜみなさんは関心を向けないですか?少し失礼です!」


フランクが抗議の声をあげた。朱は姿勢を変えず転がり戻ると元の位置で胡座をかいた。菊千代が前方を指差しながら、フランクから話を聞いている。横に馬頭が立っている。菊千代は二、三度頷くと、三人は東屋に戻ってきた。


「朱さん、健太さん、鬼神丸は南西の方角へ微速前進しています。もし障害物などあったら教えて下さい。」

「そうか、ではわしは少しこちらにずれよう。」


朱はそう言うと、船体中央の船首寄りに位置を変えた。健太は船体中央の船尾寄り、最初から丁度よい位置に座って固まっている。朱と健太は相対した形になった。音と振動の情報で船の安全を確認する場合、両耳に入る音で、発生源の方角や距離を測る。だから、朱と健太の位置取りで、二人の感じた場所を言い合えば寄り正確な位置が特定できるのだ。銘々が先程のように車座に集まったところで、少し感情的になったことへの照れを咳払いで誤魔化してフランクは口を開いた。


「えー。今までの現象を振り返ると、特殊細胞は宿主の状態を保とうとします。一方で宿主の能力を飛躍的に高めます。ですがこれは、能力が上がることで生存確率も上がり結果的に宿主の存続に貢献しますから、宿主の状態を保とうとしていることでもあります。それを踏まえて、朱さんと健太さんの違いについて考えてみると、一つの仮説が立てられます。特殊細胞を身体に取り込んだ時の状態が、朱さんと健太さんでは違うということです。朱さんは五歳か六歳頃にその状態になったということですよね。一方健太さんは十二歳。性の目覚めを迎えていたとしても、全然不自然ではない年齢です。特殊細胞の最大の特徴であろう、宿主の状態維持の性質から考えると、健太さんは十二歳時程度の性欲を有している。と考えて良いと思います。朱さんの言う、自分には性欲はなかったというのも、この仮説に沿って考えても不自然ではありません。問題はもう一歩踏み込んだ話。生殖能力についてです。現状、朱さんに性欲がないことを考えると、状態維持が優先されていて、繁殖能力はない可能性が高い。と言うことになります。おいおい繁殖しない生物なんて生物の大前提から外れてるだろうよ。という声が聞こえてきそうですが、そもそもそれは地球においての価値観です。朱さんを不死者にした惑星の住人がどうやって個体数を維持していたのかは、地球の常識の範囲外です。個体分離とか、単一生殖とか、場合によってはおそらくかの惑星では食物連鎖の頂点に居たであろう彼らは生殖を捨てクローン増殖という選択を取っていたとしても、不思議ではありません。そう考えると、朱さんは今後生殖が可能にならない可能性のほうが高いと思われます。そして健太さん。既に性欲も持っていますので生殖行為自体は可能かと思われますが、生殖が可能かどうかは試してみないと判りません。また、生殖が可能だった場合、生まれる子供に健太さんの不死性が引き継がれるかも判りません。判らないづくしで申し訳ないですが、今まであった現象を思い出して見ましたが、推測するには至りませんでした。朱さんや健太さんはどう考えますか?もし、健太さんが誰かと結婚された場合、子供を作るかどうかということですが。」

「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーむ。」


たっぷり十秒ぐらい使って朱が大きなため息をつく。健太はキョトキョトと視線を左右に泳がせてから、


「えーーーー、へぇーーーー、あはーーーー」


意味のない嬌声をあげる。今まで恥ずかしくて持て余していた自分の性欲について皆が話し合いだしてしまって、照れ臭いやら戸惑うやら気持ちの持っていく場所が見つからない。元々健太にしてみれば、そっち方面の意識や知識は十二歳のまま止まっている。母親と女性下着売り場に連れて行かれただけで、気まずさを感じる年頃だ。それがいきなり四人の矢面に立たされて、性交をするのか、誰かを妊娠させたいのかと聞かれたわけだ。奇声が出るのも無理はない。健太にしてみれば、迷惑だという気持ちも当然あるが、今まで正体不明のモヤモヤとしたやりきれない気持ちに決着がつくのかもしれない。という予感で健太はやはりはしゃぐような気持ちも出てくる。


「いゃーーーーーーーぜんぜぇんわからんわぁ!なんで急にそんな話になるんーーー?」


と叫ぶ健太は満面の笑みだ。嬉しいと言うより、笑うしかない子供なりの処世術だ。健太大はしゃぎの真向かいに座った朱はため息の後、ずっと目を瞑ったまま腕を組んでいた。


「まぁ、あれだな。今ここで話をしていてもしょうがないのぉ。健太が誰かを娶りたいと言い出すような、段になってから考えれば良いことだろ。まずは、武装集団に追われてる馬頭が安心できる様な場所に少し落ち着いてみるか。なぁ、どうだ?皆はどう思うか?」

「俺は反対する様な立場にないですよ。ほんと嬉しいです。命の恩人ですよ朱さん。」


馬頭は礼儀正しくペコリと頭を下げた。菊千代が地図を広げて話を始めた。


「戦争の飛び火が少なそうでアメリカ側の最寄り国というとフィリピンです。が、フィリピン国内にも米軍が駐留しているそうです。台湾とフィリピンの間にバタン諸島というフィリピン領の連なった島があります。それらの島の小さめの島に寄りませんか?マッカーサーの身元保証書があっても、なるべく米軍と接触しないほうが良いと思うんです。水があって耕作ができそうな島で暫く落ち着いて暮らしてみませんか?」

「そうだな。それも良いかもしれん。とりあえず上陸しやすそうな島を適当に選んで上陸してみよう。」


菊千代とフランクが地図を見ながら話し合いをして結論を出す。確実に水があるのはある程度大きな島だが、島民が暮らしている可能性が高い。島民とトラブルが起きたら面倒だ。とりあえずイトバヤット島という、台湾とフィリピンの首都マニラがあるルソン島の丁度中間あたりに浮かぶ細長い島に寄ってみることにした。

先日朱千年も生きてねえってよ問題が浮上し、背筋が凍った作者ですが、もっと深刻な矛盾を発見してしまいました。実は最初菊千代は村上水軍が活発に活動していた頃の、本家次男という立場で構想して

いました。しかし、朱と敵対するはずだった菊千代が仲間になる。とストーリー変更をした時に、江戸末期ぐらいの人間のほうが登場人物との親和性が良いだろう。という思いがあって村上末裔という形にしました。実は私、バイクの自爆事故で短期記憶の障害があって、そういう急な変更に記憶が

追いついてなかったんですね。沓島で血契三家と数百年の関係性を続けている朱が、江戸末期に

瀬戸内海で菊千代を救う。というのはありえない話でして。びっくりして、千年とか千数百年という

表記の修正に併せて、辻褄合わせをしたストーリー変更を一部いたしました。

それと、新展開で色々考えるのもあり更新がまたまた凄く空いてしまいましたね。すみません(^_^;

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ