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朱血姫  作者: ガチ無知
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それぞれの告白

東屋で車座になった五人。最初に口を開いたのは馬頭だった。


「俺は船のことは詳しくねえけど、誰もみはらなくて良いのか?なんか衝突とか座礁とか。」

「わしらの感覚をみくびるでないわ。遠ざかる船以外で、周囲三キロに船の類はおらん。岩が突き出ていれば、波が当たる音で判るし、鬼神丸の下を泳ぐ魚だって、尻に伝わる振動で判るわ。」

「ひゃー!やっぱり、朱さんと健太さんは凄いわ。無敵じゃないすか。飯の心配も月イチで血を飲むだけ。水も睡眠も要らない。怪我しても即座に治るし、敵の襲撃があっても手にとるように判る。俺よりも力があって、虎よりも敏捷で、サメよりも深く泳げる。そして年を取らないし、死なないと来てる。羨ましいです!」

「バカを言うな!死ねないということがどれくらい辛いか。軽々しい口をきくな。わしは大抵のことでは腹を立てんが、この話題だけは我慢ならない。気をつけろ。」


陶器でできた滑らかな能面の様に、ほとんど感情を表に出さない朱が怒りを表した。群れでの生活が長かった馬頭は、瞬時に姿勢を正し、しょんぼりとした声をあげる。


「すいません!気の利かない事を言いました。」


場を和ませようと、菊千代が口を開く。


「いやでも、馬頭さんヤクザの親分さんだったんなら、べっぴんさんを大勢侍らせてたんじゃないですか?俺は羨ましいです。」

「いや、俺は女は知りませんよ。」

「へ?今なんと?」

「俺は女を知りません。日本語だと、えーと、どどど、おぅそうだ。ドウテイです。俺は。今まで生きるためだけに、行動してきましたから。頭の中も生きるためだけに使ってきましたから。組織の頭が女にウツツを抜かすと、大抵そこからほころびます。自分はそういう場面を何度か見てきました。だから女は遠ざけてました。」

「おぉそうなのか。馬頭は徹底しておるの。でもそれでいいのか?生きるというのは、何かを楽しむ為に生きていたいと願うことなのではないのか?」

「いや、自分はそう考えたことは一度もないですわ。俺のおふくろは女郎だったんですよ。で、俺が十二の時にシャブで死んじまって。俺は子供の頃から身体がでかくてね。飯も人の三倍ぐらい必要で。おふくろが死んじまった後も女郎屋で養ってくれてたんですが、腹一杯食えないですわ。そこを追んだされたら死ぬしかないですから。だから、毎日毎日どうやったら腹一杯食えるか。それだけを考えて生きてました。そんで、十四の時に店で暴れた酔っぱらい客がいたんですよ。で、そいつをのしちっまったら、婆さんが喜んでね。その日だけは飯を沢山出してくれたんです。で、俺はこれだ!思って。最初は飯のために身体を鍛えました。そんで、色街通りの用心棒です。五年やりました。ヤクザや酔っぱらいとの揉め事を収めるのが仕事だったんですけど、二度刺されました。一度目は浅かったんで自分で縫って消毒してで、済みましたけど二度目が深くてね。でも医者に行く金はないですから。自分で傷口縫って、その日の晩から熱が出て、一ヶ月の間ほとんど記憶がないです。女郎屋の婆さん達が抗生剤と水とお粥を持ってきてくれるんですけど、十日ぐらいは水しか飲めませんでした。喉が痛くて、体中の関節が痛くて、頭が痛くて、辛くて辛くて。一ヶ月経って動けるようになって、また生きるために用心棒だと、道に立ってたら近所の組の親分が話しかけて来たんです。不死身のジュオンと声を掛けられました。組に俺みたいな人間が一人でも多くいれば、喧嘩売るのはヤバい組という箔がつくらしいんですよ。それで、その親分の組が管理している色街が他に3つあって、お前の色街と合わせてお前が管理しないかと。月に上がりの六割を収めれば、組の看板使って新たなシノギを起こしても良いと言われました。でまぁ、十九歳でヤクザの組長ですわ。その時から生きることだけ考えて行動するようになりました。」

「ふむ。まぁでは、馬頭。生きてみろ。気の済むまで生きてみて、それから考えろ。お前がここで生きたい。という場所が見つかるまではわしらと一緒におれば良い。ただの、ぬしの生き方は少しばかり極端がすぎる。生きるために人を殺す。というのは普通の人間は選ばない生き方だ。なぜならば、大抵の人間は弱い。だからその生き方ではすぐ殺されてしまう。本来は逆だ。人を助ける。助けられた人はお前を助けようとする。そうやって生きていくのが普通なのだ。お前もお前のことを誰も知らない土地を見つけたら、そこで生きるために人を助ける生き方をしてみろ。そのためなら、わしらはぬしを守ってやろう。」

「ありがとうございます。確かに俺の事を誰も知らない場所なら、俺を殺そうと思うやつは居ねぇ。そういう場所があれば俺は誰も殺さないで生きられますね!そういう場所が見つかれば良いなぁ。」


馬頭は心の底から楽しみだ。という顔をした。朱は少し考えてから、話し始めた。


「しかし、わしや健太は性欲がないから良いが、菊千代やフランクは大変なのか?食うことに対する飢えの様な辛さが性欲にもあるのか?フランクや馬頭は良いが、菊千代は誰かと子をなしたら、どうなるのか問題じゃなぁ。わしらのような苦労は生まれてくる子にまでさせたくないしのぉ。」

「いや、わしかてあるよ・・・]


健太がボソリと呟く。フランクが反射的にえ?と聞き返す。健太は耳まで真っ赤にしてもう一度呟いた。


「わしかて、あるよ性欲。なんでないって決めつけるんや。」

「おぉ。そうだったのか。わしにはないから、ないものだとばかり思っていた。すまんな。しかし、それは困ったのぉ。フランク、ぬしはどう考えるか?」


朱に尋ねられて、案の定フランクは長時間の熟考に入った。

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