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殺し屋とネコの少女  作者: 秋原 くり
1/1

一話、出会い

ある夜の帰り道のこと・・・


俺、山川 秋斗は飛ばされた帽子を追って裏路地に

迷い込んでいた。

いや、迷ってはいないな。


現在地は把握してるかし。


裏路地に入って三十分。


目の前には俺が探していた帽子が!


「やっと見つけた・・・」


お目当の帽子を見つけ、拾い上げようとすると

帽子の中に子猫が丸まっているではないか。


子猫はコチラの気配に気が付いたのか、

起き上がってジーッと俺の顔を見てきた。


「お前、一人なのか?」


「にゃあ」


子猫は俺の問いに答えるように鳴いた。


辺りを見渡しても、

親猫らしき猫どころか誰もいない。


季節はもう冬。


このまま放置しておいたら死んでしまうかもしれないし、

俺の帽子が返ってこない!!


ということで

俺は子猫を帽子ごと抱え、家に連れて帰った。

家に帰ると、リビングに子猫を置いて

俺はシャワーを浴びに行った。


シャワーを浴びてリビングに戻ると、

さっき子猫が居た場所に15,16歳位の少女が居たのだ。


少女は俺がいることに気がついたようで

こちらを向き、正座をして

「どうも、ネコです」と挨拶してきた。


「あ、どうも。

山川 秋斗です・・・じゃねぇーよ!!

誰だよ、お前!?」


つい、つられて

自己紹介をしてしまった。


だが、今、目の前のいるのは猫ではない、人間だ。


「だからネコです。

アイ アム キャット」


「いや、どっからどう見ても人間だろうがァァァ!!

ユー アー ア ヒューマン!」


一体、何がどうなっているんだ・・・?


幻覚か?

それとも寝落ちして見てる夢か?


現実だった場合は面倒なことになってしまう。


だから、面倒なことになる前に

殺るべき者は殺らないと。


俺は少女との間合いを一気に詰めた。


そして・・・


「あの~、物騒なものはしまってくれませんか?」


「無理な願いだな」


俺は気を取り直して、

目の前のいる“ネコ”と名乗る少女の首筋にナイフを当てていた。


本名を名乗ってしまった以上、

仕事の都合で生きて帰すわけにはいかない。


「あ、わかった!」


突然、少女が大声を出した。


「何をだ?」


声のトーンを下げたまま、尋ねてみる。


すると、少女はドヤ顔でこう言った。


「つい、つられて名乗っちゃって焦ってるんでしょ!」


「・・・殺す」


「やめて」


正直、イラッときた。


当たってたからってドヤ顔すんな。


ってか、

ナイフを首筋に当てられてるんだぞ!


普通ビビるだろ。


「なら、もう一度聞く」


そう言って俺は、より強くナイフを押し当てた。


つぅーっと血が首筋を流れ、

ポタポタと床を汚す。


だが、そんなことは気にしない。


聞きたいことは一つ。


「お前は誰だ?」


少女は笑顔で答えた。


「ネコです♡」


あぁ、頭が痛い・・・


誰か夢から今すぐ叩き起こしてください。


「もーいいよ・・・」


俺は諦めて、ナイフを引いた。


「私がネコと理解してくださったんですね。

ありがとうございます」


「いや、全くしてねぇからな」


「え!?」


「え!?じゃねーよ!!

当たり前だろーが!!」


なんか、一生分突っ込んだ気がするほど疲れた。


五分もたってないのに凄く疲れた。


最悪、本当に最悪。


今日は厄日だな・・・


仕事では爆弾とケーキ間違えて持って行くし、

帰りは帽子が飛ばされるし、

そこで拾った猫が消えて人間になってるし、

厄日としか思えない・・・


「あの~、

どうやったら爆弾とケーキ間違えるんですか?」


「何故そのことを!?」


「今、バッチリ声に出てましたからね」


マジか・・・


「っていうか、爆弾使う仕事って物騒ですね。

山川秋斗さんの職業は一体、何なんですか?」


チッ、言っちまったんだから仕方ない。


どうせ、こいつはあとで殺すんだ。


もうすぐ死ぬ奴に言ったところで、

特に問題はないだろう。


「まぁ、爆弾とケーキ間違える人が

凄い人な訳ないんですけどね(笑)」


こいつ・・・

黙って聞いてれば~!!


「耳の穴かっぽじって、よく聞け!


山川秋斗、20歳。

No.1の殺し屋やってます」


よし、言ってやったぞ!!


「こんな人がNo.1の殺し屋ァ!?」


しめしめ、俺の恐ろしさをやっと思い知ったか。


っていうか、

こんな人とはなんだ、こんな人とは!


「いや・・・

爆弾とケーキを間違えるような人だから、

殺し屋からかけ離れている殺し屋ランキング一位なんだ。

きっとそうだ、そうに違いない!」


「お前、本っ当にいちいち腹立つ奴だな!!」


「え、有難うございます?」


「いや、褒めてねぇーし!!」


もう、嫌だ・・・


本当にこいつ何なの?


「お~い、生きてますか~?」


「もう死んでます」


「あ、生きてるな」


死んでるって言ったのに・・・


俺のことは放っておいてくれよ。


こっちは4徹目で疲れてるんだよ!!


「だから、爆弾とケーキを間違えたんですね」


うっさい、俺の心読むな。


「だ~か~ら~

声に出てるんだって!」


俺はもう駄目かもしれない。


「休めばすぐ治る話なのに・・・

全く、大袈裟な人ですね。

ただの寝不足じゃないですか。


それより、4徹してるって貴方、本当に人間ですか?」


「正真正銘、人間だ。

ってか、お前こそネコか人間か

分かんねぇじゃねぇか」


「だから、私はネコなんですって!」


・・・こいつ、頭大丈夫か?


ちょっと心配だな。


「心配なのは貴方の方です!」


ネコはそういうと

はぁぁぁ、と分かり易すぎるため息をついた。


「私のこと、ちゃんと説明しますから

終わったらキチンと休んでくださいね!」


「やっと話す気になったのか・・・」


「まぁ、話すも何も

私自身がよく分かってないんですよね~」


「・・・は?」


「分からないって・・・自分のことだぞ!」


「ん~、そうなんですけどね」


うん、今夜も徹夜確定だな。


たった今、俺の死因は過労死に決定した。


「もういい、俺は突っ込まないから続けてくれ・・・」


「はーい」


ネコはそう返事をして話し始めた。


「私、前世は人間で自殺をして死ねた思ったら、

猫に生まれ変わってたんで自由気ままに生きてたんですよ。


で、この間

ついつい道路の真ん中で寝ちゃって車にはねられたんです。

まぁ、死ななかったし、怪我もしなかったけど、

こうして何故か人間になれるようになったというわけですけど

分かりましたか?」


なるほど、つまりネコは・・・


人間→自殺→猫→車にはねられる→

人間になれるようになった→俺に拾われて今に至る


ということか。


「ってわかるかァァァ!!

ツッコミどころ多すぎて困ってんだけど!!」


「うそん」


「殺るぞ」


「サーセン」


落ち着け、落ち着くんだ。


重点を絞って質問していこう。


「まず、前世で自殺したのはどうしてだ?」


「生きていた世界に飽きたから、あの世に移住しようと思って」


・・・次行こう、次に。


「道路の真ん中で寝ていたわけは?」


「睡魔に負けてしまったんですよ」


ああ、馬鹿なんだな。


よし、次だ。


「猫から人間になる方法とかは?」


「なろうと思えばなれましたよ。

人間のときの姿は前世の自分の姿と一緒だったので

すぐなれましたし」


「結論、馬鹿なんだな」


「酷くないですか!?」


酷くない、事実だ。


俺はネコを無視して続けた。


「まとめると、

お前は、あの世に移住するつもりで自殺したら

猫に生まれ変わった。


で、つい最近、睡魔に負けて道路で寝て

車にはねられたことで人間になることが可能になったが

詳しいことは分からない、ってことでいいか?」


「はい、合ってますよ~」


「とりあえず、化け猫。

お前を殺すのは後にする」


「あ、殺すところは撤回しないんだ。

っていうか化け猫とは失礼だな、おい」


うるさいな、事実だろうが。


「もう、俺は限界なんだ。

やはり睡魔には敵わなかった・・・」


「普通は四徹しませんし、そもそもできませんからね!」


「良いから早く寝て下さい」と

ソファーのクッションに顔を押し付けられ、

反論しようと顔を上げたら、

ナイスタイミングで近くにあった毛布を投げつけられた。


そうして俺は半ば強制的に眠りについたのであった。



これは、俺とネコの出会いの話。


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