第5話 ー削除ー
あんまり考えたくはないけど、もしかしたら最悪な方向に逆戻りするかもな……。兎に角、今は中島のスマホを見に行くしかないな。
「飯じ…じゃねぇ、冬斗!一緒に来てくれないか?」
「まだなんかあるのか?」
「あぁ。ちょっとな。」
「でも、ごめん〜!俺これからバイトなんだわ!」
まじかよ。バイトなんてやってたのか。
「そうか。わかった。」
「部長はどうですか?」
「すまない。私も担任から職員室に来いと言われていて、もう行かなければ。」
「そうですか。」
「どうかされたんですか?」
「あっ。木村先輩。」
短髪でふわっとした髪型。穏やかな桃色の髪色。この部活の副部長の木村 舞姫先輩だ。
「実は依頼に同行してくれる人を探していまして。」
「それでしたら、私が行きましょう。」
「いいんですか?」
「はい!」
木村先輩が同行してくれることになり、中島のところへ向かう準備ができた。なぜ誰かと一緒に行こうと思っていたかというと、犯人が分かった時の証人になるし、もし犯人が襲ってきても助けを呼びに行けるからである。だが1つ問題がある。俺あんまり木村先輩と話したことないんだよなー。
「ところで、相宮くんが受けている依頼というのはどのようなものなのですか?」
「それはですね……」
俺は事件の内容とメモのアプリのことを話した。
「なるほど。そういうことですか。」
「はい。3階の空き教室に真也を呼び出すのでそこに行きます。」
「わかりました。でも、こんなに部活熱心な男子部員が入って来てくれて嬉しいです!」
「熱心ではないですよ。ただ、依頼ですから。」
この際、木村先輩こととか聞いてみるか。
「木村先輩はもう依頼を受けているんですか?」
「いえ。今は受けておりません。」
「前から思ってたんですけど、なんかお嬢様って感じですね。」
「そんなことはありませんよ。ただ、父が厳しいので……。」
やべぇ。なんか気まずくなっちまった。あんま触れちゃいけない感じだったのか?なんか他の話題……話題…。
「あっ!そういえば最近ニュースとかで先輩と同じ『木村』っていう名前の社長見かけますよね。」
「それが私の父です。」
「え!?まじですか。」
「はい。航空会社の社長ですよね?でしたらそうです。」
「そうなんですね。」
まずい!またやらかした!でもどうりで喋り方が丁寧だったりするわけか。
「とりあえず着きました。俺は真也を呼んでくるので、ここで待っていてください。」
「あ、はい!わかりました。」
俺は伝え忘れたことがあると言い、帰宅しようと下駄箱にいた中島を空き教室に呼び出した。
「それで?伝え忘れたことって何かな?あと、横の人は誰?」
「弁護部2年の木村と申します。よろしくお願い致します。」
「2年生だったんですか!?すみません!」
「いえ。」
「それじゃあ、話してもいいかな?」
これはあくまで推理だが、俺は中島がスマホのメモアプリで『自分が犯人だと分かるチェーンメール』を自ら作って送ったと考えている。だけど何故そんなことをするのか?一番大事なここがどうしてもわからなかった。売名行為?でもなんのために。あの2人の女子生徒が嫌いだから?じゃあなんで自分が犯人だとバレるような内容にする必要がある。まぁ、こいつが犯人ではない可能性もあるわけだが……。よし。まずは携帯を開かせることだな。
「悪いが、スマホを開いてくれないか?」
「なんで?」
「あのチェーンメールで少し気になるところがあってな。」
「なるほど!わかったよ。はい!」
「あぁ。」
急いでメモアプリに!メモアプリはロックされている!だが、通知は見ることができた。……!?俺はその通知の内容を見て確信した。
「……。真也。このチェーンメールの犯人はお前だ。」
「チェーンメールだけ見てなんでそう思うのかな?」
「悪い。通知を見た。なんでこんなことした。」
その通知とは、チェーンメールの削除が完了したというものだった。俺のこの言葉を聞いて少し自分の足を見つめた後、中島は口を開いた。
「なんで気づいちゃったかなー。まぁいいや。実は僕さ、中学の時は陰キャだったから、高校では陽キャになるって決めてたんだ。なのにあの女2人が「あんた誰?陰キャすぎてわからんかったww」ってみんなの前で言いやがったんだ。だから、僕の名前を覚えさせてやろうと思ったわけ。」
「おま…」
俺が言いかけた時だった。
「おい!てめぇ、ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!」
え!?木……村先輩…?
今回は他の話より文字数が多くなってしまいました。いつもご愛読ありがとうございます!お疲れ様でした。m(_ _)m