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第七節

当座の目標だった食料と水(井戸で汲んだ)の確保は済んだ。次の目標は―――

(寝床と今後の食料、あと金だな)

通貨概念があるかはわからないが、もし存在するのならば手に入れておきたい。

単純に何か買いたいという理由もあるが、この世界の物価と言うものを知りたいというのが一番の理由である。

今の所暫くはこの村に滞在して行くつもりだが、何らかの理由で離れる際に一文無しは流石にキツイ。そして、先程の様に何かを恵んでくれる人が居るとは限らない。

「言葉通じるならば、住み込みで働かせてくれ!って一発なんだが」

不良座りになって頭を抱える宗近。そして、周りから視線が集まるのを彼は感じた。

溜息を付きながら太腿に手を置く宗近、村人達の一部が彼の顔を見てヒソヒソと小声で話し指をさす。

ご婦人らしい長袖のワンピースに前掛けを付けた女性達が頭に籠を載せて運んでいたり、轡を嵌められた恐竜の家畜を手綱を引いて誘導する爺さん、皆が動いている中で唯一人宗近だけが動いていなかった。

「働きたくとも働けない〜そんな世の中っと」

思いつきの意味不明な歌を歌いながら、膝に手を置いて宗近は立つ。

手持ち無沙汰なのと土地勘も無いので、軽く辺りを見回ることに決める。

その場で辺りを見回す宗近、荷車の御者は茶髪だったので気にならなかったが染髪したかのような黄緑や浅葱色といった派手な髪色をした人々が目に止まる。

気さくに挨拶のような言葉をかけてくるのも居れば、奇妙なものを見る目で視線を投げかけてくる者や、そもそも宗近のことなど眼中にないといった様子黙々と飼料と思われる干し藁の様な物をフォーク状の農具で移動させている者―――

特に目を引くのは、先程までいた荷車付近。

(交易なんかねあれは)

御者が荷車の上に立って、片手に鉛筆のような書くための道具。もう片方に紙を束ねた冊子を持って籠を持った村人と交渉している。

甲冑の人は交渉が済んだらしき村人の荷物を受け取ると、木箱を村人へと手渡していた。

荷車を中心にワイワイガヤガヤと広場が沸き立ち、活気が溢れていた。

そんな騒々しくも快活な中央広場を後にし、宗近が向かう先は外と内を隔てるこの村への入り口。

扉の代わりに暖簾のような革や布、木の板を一枚吊るしただけの家々、先程水を汲んだ井戸。

入り口に近づくにつれ喧騒が遠ざかり、静寂に包まれていく。

門と言えるほど立派ではないがそれでも簡易の物見櫓や素槍を持った軽装警備人二人が入り口脇で立哨して侵入者に対して警戒していた。

外に出るため宗近が会釈しながら彼らの目の前を通過すると、難しい顔をしながらも会釈を返してくれた。

言葉は通じないが一部のジェスチャー等は十分通じるようで、細かい部分では流石にキツイが大まかな挨拶などは意思疎通が取れるのは非常に助かる。

村を出ると、見渡す限りの草原。そして遠くの方に見えるは深緑の森林。所々切り拓かれて柵が建てられた放牧場には草食らしい家畜の恐竜。

「田舎だなぁ」

呑気に草をはんでいる恐竜を見ながら少し勾配になった沿道を下りながら歩く。どうやらこん村、少し小高い丘の上に築かれているらしい。

そして、村の入口から50m程度離れた地点。完全に入り口からは死角となった地点。そこにそれは鎮座していた。

「またこれか、流行ってるのか?」

刀が突き刺さり、燻る焚き火がそこにはあった。だが最初に見た焚き火と違い刃は地面に埋まり、柄と柄頭だけが顔を出していた。

「火もついてねぇし、今度は引っ張れって言うのか?」

独り言を喚いた後、宗近は地面から生えた刀の柄を握り込み、膂力を込めて引き抜こうと試みる。

「フンヌッ! ックッフッフッ! おッッラァ!」

ゾリリリと金属と砂が擦れあう耳障りな音を立てて、今回はちゃんと上へ、上へと引き抜かれてゆく紅い刀。

「もうッ!ちょっとでっ」

あと少しで抜けるッ!と言ったところ。いきなり、ゴオゥと焚き火から炎が立ち上がり、その熱さと唐突さに宗近は驚ろいて柄を放し、後ろに倒れ込む。

「ハアッ、ハアッ。また、このパターンかよ」

轟々と燃え盛る焚き火、火の粉が散るパチパチという音と宗近の荒い息使いだけがその場にこだましていた。

ユニーク100超えしました。あざーっす!

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