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第三節

「腹······減ったな」

心身ともに落ち着いてくると、腹のすき具合が気になってきた。

自害する際排泄がヤバいと聞いたため、色々処理して食べ物を食べていなかったので、単純に腹が減った。

とはいえ、すぐに飢えて死ぬ程でも無いため最優先事項でもないが───

(これからどうするか)

そもそもここがどこなのかすらわからない上に、人が居るのかも怪しい。

(スマホは······あーくっそ、机の上に置いてたな······)

ジーンズの後ろポケットを触って落胆する宗近。

「つーかそもそも電波通ってんのか? ここ」

見慣れた電柱もなければ電波塔のような高い人工建造物も見当たらない。そんな日本とはかけ離れたような場所でスマートフォンが正常に作動するとは宗近は思えなかった。

「はぁ······」

溜め息を付きながら両手を擦り合わせて、再び焚き火に手をかざす。

しばらくの間放心。どのくらいの時間がたったのかは正確にはわからないが、遠方の方からガラガラと何か地面を転がる音がして、こちらへと近づいていることに宗近は気がつく。

目を凝らして音のする方向をよく見てみると灰色のとさかが特徴的な草食恐竜のような生物がのっしのっしと歩き、荷車らしき物を引っ張っているのが見えた。

(人だ!けどあれはなんだ?)

動物に車を引かせるのは高度な知的生命体でないと行えない(そもそも荷車作成の問題がある)ので人だと予測出来た。

しかし───

(見たことないぞ、あんな恐竜みたいなの)

荷車を引いている生物は宗近の記憶の中には存在しなかった。

せいぜい車を引く生物といえばロバや馬や牛等の蹄がある四足脚の生物しか知らないが、その草食恐竜の様な生物は地球上に存在していなかったはずだ。

(死後の世界ってすげぇことに成ってるなぁ)

小学生並みの思考回路の感想を抱いた宗近は立ち上がると、駆け出そうとしてつんのめり,危うく顔面から地面にダイブしかけた。

「あっぶねっ」

長年ろくに運動していなかったツケが回ってきてるなぁと運動不足を実感しながらも宗近は馬車(?)竜車とも言うべき荷車らしき物に近づいていく。

「なぁ、おいちょっと!」

荷車に乗って手綱をとっていた御者に話しかける。

止まってくれるかどうかは一か八かだったが、幸いにも竜車を止めて宗近の方へ視線を向けてくれた。

遠く方からだとよく分からなかったが、どうやら御者ともう一人居るらしい。

そしてもう一人の方だが───

(すっげっ、今時プレートメイルかよ。ってそうだここは死後の世界だ。何があっても不思議じゃない)

板金になにかの生物の鱗やら棘やら牙のような、とにかく硬質な素材を綺麗にかつ大胆に取り付けたその鎧は、生物の素材の色が赤いのと相まってとにかく見惚れる程美しく格好良く見えた。

「すっげぇな。ファンタジー世界だ······まるで」

小声だったのだがついそんな感想を漏らすと、御者の隣に座っている甲冑の人からの視線が痛いほど刺さる。

(うーん······めっちゃこっち見てる。護衛の人かな?)

腰には剣を帯びており、右手には大きな盾が握られていた。

(下手打って怒らせるとヤバイな······)

先程スマホがないか確認した際に一緒に持ち物を確認したが財布は無し、時計も無しで特に何も持っていない。

勿論武器になるような物も何も持っていない。

もっとも敵対するつもりはさらさらないのだが―――

甲冑の人は宗近をジロジロと舐め回すように見回した後、御者に何か耳打ちすると、周囲を警戒し始める。

(よかった、敵意なし判断してくれて助かった·····)

死ぬのは構わないが、痛いのだけは勘弁願いたい。だからこそ首吊り自殺なんて方法を選んだのだから―――

前世(?)の苦い記憶が蘇りそうになって、後頭部を掻き毟って雑念を払い思い出さないようにする。

深呼吸をして咳払いを一つすると宗近は口を開いた。

「厚かましいのは承知の上なんだが、乗せてくれねぇか?」

「@#%&¤§¢?」

帰って来た言葉はいままでに聞いたことがない物だった。

(日本語で話しかけたのがバカだった···)

御者は眉間にしわを寄せ、首をかしげている。

「あー、Could you let me ride together in your car?」

(流石に英語なら行けるだろ······)

「? £♀ε┗¤§%#¢」

「えっ······マジで?」

通じていないようで再び首をかしげられた。どうやら英語も通じないらしい。

というより───

(そもそも聞いたことがないぞ、この言語······)

某動画サイトで海外の動画なども見ていたり音楽を聴いたりしたから何を言っているのかは流石にわからないが、基本的に欧州圏と一部アジア諸国の言語の音は覚えていて、だいたいこの国の言葉だなと言うのがわかる。

だが目の前の御者が話す言語はそのどれにも当てはまらない、強いて言うならフランス語に近いがフランス語とは違う感じを受ける。もっとも、宗近はフランス語を真面目に学んだことが無いのでどう違うか言い表せはできないが───

「うわ~どうしたらいいんだ。えーと······」

「‰≮∆⊄∝δΡΦ△▷✝✽✴¿」

頭を抱えて宗近が悩んでいると御者が何事かを言って左手の親指で荷車を指す。

「乗せてくれるのか?」

「@%&§℉¡」

少し怒り気味に話す御者に宗近は慌てながらも好意に甘えることにした。


PV100突破しました。有難うございます。

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