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Departure

あの日、僕は前を向くって決めたんだ。





 発車メロディが鳴り響く

 プラットホームのその彼方

 冷たい空気に耳澄ませ

 流線型の迎え待つ


 「参りましたのは超特急

 明日へ連れ去る超特急」

 車掌の謳いに背中押され

 切符が指に食い込んだ


 嫌でも切符を渡されて

 この便に乗り僕は発つ

 行き先もない宛もない

 そんな旅へと僕は発つ




 足元ばかり眺めては

 溜め息ばかり吐き出して

 そうして今日を生きてきた

 気付くとここに立っていた


 幼い日々を渡る夢

 いつか途切れてなくなって

 それでも前を向けたのは

 後ろを向くのが怖いから


 「明日を歩める足のある

 オトナの方はご乗車を」

 急かす言葉が恐ろしく

 すくんだ足が冷たくて


 握りつぶした掌を

 そっとくるんだ温もりは

 誰の温もりなのだろう

 耳にささやく声がした




 「つらくなっても心配ない

 ここには帰る場所がある

 あなたの道は一つでも

 あなたは独りぼっちじゃない」


 斜め後ろの日陰から

 背中を見守る家族の目

 抱き止めてくれた腕を今

 胸の前へと押し当てて


 「誰もが通る道ならば

 楽しくなければやってけない

 世界は広いよ、見てごらん

 ここでは見えない明日がある」


 少し先から振り向いて

 差し伸べられた友達の手

 引っ張り合って掴まれて

 掌の傷が瞬いて




 ドアが無言で戸を開く

 握った切符を顧みた

 行く手の小さく記された

 片道だけの切符でも

 逃げ道を断つ覚悟決め

 前をしかりと見据えれば

 発車メロディが鳴り響く

 「間もなく出ます、ご注意を」


 闇を包んだトンネルの

 先には何があるのだろう

 どんな自分になったなら

 明日を強く生きるだろう

 分からないから旅に出る

 分からなくても明日は来る

 夢も望みもなくたって

 今日まで僕も生きてきた


 振り出した足は闇雲に

 振り出した手は無意識に

 手すりを伝って歩を進め

 固いデッキを踏み締めた

 「いってらっしゃい、大丈夫

 あなたに足はありますよ」

 車掌の声に振り向けば

 いつしか閉じた丸い窓




 また会う日まで達者でと

 声に送られ駅を発つ


 黙っていても守られた

 慰められて癒された

 いつか泣き虫な誰かのために

 この手で“駅”を紡げるように

 窓に描いた『ありがとう』の字

 曇り掠れて消え失せて

 列車は闇に飛び込んだ

 長い闇へと駆け込んだ


 トンネルの闇のその彼方

 明日という名の向こう側

 着いたらまずは何をしよう

 想像膨らませれば、ほら


 涙を笑みが押し退ける








 今日も明日も明後日も

 『オトナ』へ向かう超特急

 きっと走り続けてゆく

 誰かの未来へ駆けてゆく。









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