朝霧班
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「悪いな、せっかくの休みなのに」
水野の部屋には楪や相馬、影井が揃っていた。
三人は任務の疲れか、それとも今回呼び出された件について考えているのか、表情が暗い。勿論呼び出した水野の表情でさえ暗かった。そして、今ここに一ノ瀬がいないことを誰も気にかけてはいない。
「話というのは例の件ですよね?」
影井が重たい口を開く。
「ああ、そうだ……」
返す言葉で水野の部屋に緊張感が走る。その緊張感に当てられ三人の表情も強張ったものに。
ここへ三人を呼び出した理由は他でもない一ノ瀬の件だった。
「——お前達はあの時見ていたはずだ」
あの時とは『相模原』での任務。更にいうならば、サクラスとの戦闘中に起こった出来事を言っているのだろう。三人は黙ってただ首を縦に振る。
「隊長、あの馬鹿は……」
口を開いた相馬だったが、その声にはいつもの強気な調子はない。むしろ自分の発言を疑っているような素振りを見せていた。それに水野も目を閉じて一度だけ頷く。
「……あいつは確かにあの時死んだ」
そう、水野のいう通り、一ノ瀬はあの時サクラスの一撃で確かに命絶えていたのだ。
「でも、一ノ瀬君は……」
楪が答えを急かすように言葉をかける。
「ああ、あいつは生きている……。いや、正確に言うのなら生き返ったか……」
「生き返った……」
水野の言葉をそのまま繰り返す影井。
一ノ瀬自身はどう思っているのか分からないが、二人の戦いを側から見ていた四人にははっきりと映っていた。
————傷跡が一瞬で再生するところを……。
「それじゃあまるであいつは……」
相馬は喋りながらもやり場のない気持ちを右手に込める。他の二人も同じようなことを考えているのだろう。楪は顔を下へと逸らし、影井は唇を噛む。
「——あれは完全に奴らと同じだった……」
皆が薄々感じていたことに対し、水野が決定打となる一言を口にする。一ノ瀬はあの時一度死んで、蘇った。それは私達が最も憎むべき相手と同じだと。水野は感情込めずに言い張った。
「それじゃああいつは一体!」
「落ち着け相馬」
「だけど!」
水野の部屋に相馬の声が響き渡る。
「まだ一ノ瀬があいつらの仲間だとは決まっていない」
「だけど……」
「ただ私達の目の前で起きたことは紛れもない事実。いいか、このことは私達のなかだけに留めておけ」
「……」
黙り込む三人。勿論水、野も三人がなにを考えているかくらい分かっていた。
「——大丈夫。あいつが言った言葉を思い出せ」
「言葉……」
『——仲間は絶対に俺が守ってみせる』
三人共あの戦いで一ノ瀬が言っていた言葉を思い出す。
「あいつは私達の家族だよ」
今の水野からは、一ノ瀬を疑っているとは微塵も感じさせられない表情、笑っていたのだ。