表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第0夜.美少女怪盗サンドリヨン参上!

 

 

 

 ――美少女怪盗サンドリヨン参上! 今宵もお宝、いただきマス♪――

 

 

 

 平和ボケした世の中に突如現れた「美少女怪盗サンドリヨン」によって、ニュースやワイドショーは持ちきりだ。

 警察も手をこまねくその少女は、毎回異なる衣装でド派手に登場し、狙った獲物は逃がさないと来ている。

 そして、そんな「美少女怪盗」を、報道陣はこぞって絶妙なアングルでカメラに収めようとこれまた必死である。


 まぁ、自分で「美少女」と名乗るからには、当然ながら可愛い顔に小柄でスリムなボディ。スリムなだけじゃない。付くトコには付いて、付かないトコには付かない、絶妙なバランスだ。

 衣装は見えそうで見えないギリッギリなミニ丈のドレスだが、色や装飾が毎回違っている。髪型も同じく。恐らくドレスに合わせて変えているのだろうが、黒や金、赤など毎回ハデな色のウィッグを選んでいる。


 美少女、は置いておくとして、怪盗サンドリヨンはその名に違わず、毎回退散時にはガラスの靴を現場に残していく。童話のサンドリヨンさながらに、だ。

 そのガラスの靴も、どうやら毎回サイズや細かいデザインが異なるらしく、日本の警察が誇る科学調査でもサンドリヨンの正体までは掴めないらしい。


 そんなサンドリヨンに対しての世間の反応はといえば、警察や表向きは報道陣も掲げている「サンドリヨン討伐派」と、それに対抗して、突如現れた漫画や映画の中のような存在、所謂アイドルとして迎えようという「サンドリヨン親衛隊」(ネット上の大型掲示板にサンドリヨン親衛隊というスレッドが立ち、その中で親衛隊員を名乗る者の他にも、隠れ親衛隊として心の中で「サンドリヨン萌え」と思っている者たちもコレに数えられているらしい)に分かれている。


 ……いくら平和ボケしてるからといって、どうしたんだ、日本……。




 そして、ココ(俺の目の前)にも、「サンドリヨン親衛隊」のバカ野郎が一人……。

 妙に色っぽいカメラワークでサンドリヨンを映す報道ニュース。スマホでそのワンセグ映像を昼飯と共に味わっているのはダチのみことだ。……もう友達(ダチ)やめてぇ……。


「いやぁ、今日もサンドリヨンちゃんのおかげでメシがウマいわァ」


「……バカなんじゃねーのお前」


 胡散臭い関西弁でそうのたまいながら、焼きそばパンに齧りつく尊に、俺は半ば呆れ気味に言う。


 尊……半沢はんざわ みことは、ウチのクラスでも、特に早い時期から「サンドリヨン萌え」を主張している内の一人だ。

 胡散臭い関西弁により主張される「サンドリヨン萌え」に、クラスの男子の半分は同意を、もう半分は呆れを示した。もちろん俺は呆れた方の一人だ。


じゅん~。自分かてオトコやろォ? ほれ、この舐め上げるようなサンドリヨンちゃんのカメラワークにナニが反応しないとは言わせへんでぇ~?」


「昼間っから下品よォ尊! それにこのサンドリヨンだっけ? コイツの服装とかも、いちいちいけ好かないワ」


 そんな尊に、これまた胡散臭いオネェ口調でたしなめるのはもう一人のダチの花山はなやま なぎだ。

 凪は尊とは正反対の「サンドリヨン討伐派」で、ついでに何がどうしてそうなったのかさっぱりわからんが「オネェ」である。特にか細くも無いその体躯(俺よりは低いがそれなりに身長も筋肉もある方だ)をどうやって維持しているのか甚だ疑問になる程度の量のサンドイッチを、チマチマと上品に口に運んでいる。口の端に付いたタマゴは紙ナプキンで丁寧に拭う。




 俺、水無月みなづき じゅんのクラス内にいる二人のダチは、何から何まで正反対だ。




 そしてもう一つ。俺には二人の幼馴染みがいる。どっちも女だ。片方は……


「次っこそ! あンのふざけ倒した怪盗をとっ捕まえてやるんだから! 覚悟してなさいよォ~! 怪盗サンドリヨンめェ!」


 わざわざ隣のクラスからやってきて、俺の隣でちっこいオニギリを食べている鳥待とりまち 六花りっか。俺とは家が隣同士で、とうとう高校まで一緒に通っている。ちなみに、六花の両親はアメリカのFBIに所属しているらしく、その捜査官でもある母親の権力で六花はちゃっかりサンドリヨン出現の現場に出入りしているという。将来は母親のような世界を股にかける捜査官になるのが夢らしく、日々勉学やその他にご執心だ。

 ……FBIにいるはずの六花の母親が出張ると言う事態……。つまり「美少女怪盗サンドリヨン」はもはや国際指名手配犯にまで上り詰めているのだ。


 ちなみにもう一人の幼馴染みの少女は、教室の片隅で一人で席に座っている小鳥遊たかなし ゆにだ。長い黒髪と共に伸ばされた前髪のせいで顔は見えない。家は近所だが、家の事情やゆに本人の性格のせいでクラスには馴染めていないようだ。最近は大人しくしているようで、いつも一人で席に座っていることが多い。俺も最近では必要が無い限り、ゆにとは関わらないようにしている。


 ダチ同様、両極端な幼馴染みだ。




 そんな平凡な毎日を、俺は弁当と一緒にかきこんでいく。


 このまま続くのだと思っていた、日常。

 それはいつの間にか、理不尽に失われるものだとも知らずに。




「速報です! 『美少女怪盗サンドリヨン』の予告状が届いたとのことです! 今夜の現場は――」


 昼のワイドショーを流していた尊のスマホからそんなキャスターの声が流れてくる。


「尚、今回は新たな『怪盗』からの予告状も届いており内容は――」

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ