「インテリ」「サングラス」「十円ハゲ」
注:友人×2が声を出して笑った程なのでご注意下さい。
薄暗く、非常口案内の明かりが眩しく感じる中、私たちはアトラクションの列に並んでいた。
外は大雨で中は雨宿りの客でごった返している。
「あーあ…詰まっちゃった」
「雨宿りに入ったってこのアトラクション、一瞬外に出る場所が二箇所もあるのにね」
それでも絶叫系を求める人達にとっては雨を苦だと微塵にも思わないのだろう。もちろん、私たちもだが。
「ねぇ」
「何?」
私と一緒に来た友達が腕をつついてきた。そして、顎で少し前のメガネをかけてハットを被ったインテリっぽいおじさんを指す。おじさん好きめ、と内心溜息を吐いた。
「あの人ちょっとかっこ良くない?」
「えー…何か禿げてそうじゃん…」
「何言ってんの! それならその後ろのサングラスのおっさんの方が禿げてそうじゃん!」
友達はメガネのおじさんの後ろに立つ、ニット帽を被ったサングラスのおじさんを指差す。ただし、小声で小さくだが。
「まーどうでもいいけどさぁ…次、うちらだよ」
くだらない事を言い合っている内に、いつの間にか従業員の人に案内されて乗車口の一歩前まで進んでいた。
「それでは良い旅を! いってらっしゃーい」
「いってきまーす!」
友達は元気に返事をして大きく手を振り、隣で私は無言で小さくてを振った。その前ではインテリメガネのおじさんとニット帽を脱いだサングラスのおじさんが並んでいた。
あちこちを急スピード急旋回で走り抜けたのち、落下の瞬間。
外に出され、一瞬で強風が吹いた。
「きゃーー!!」
「きゃーー!?」
私と友達は全く違った悲鳴を発した。私は下降する乗り物に、友達は…。
「イ、インテリおじさんが…!」
「しっ! 静かに!」
モゴモゴと物言いたげな友達の口を抑え、目の前のおじさんに目を移す。
ふっさふさのサングラスのおじさんの隣に…ハットが飛ばされたと同時にズラが飛ばされたのだろう…おじさんの、十円ハゲが公となったのであった。
下車後、落下の瞬間に取られた写真を見に行って見ると、宙に舞うズラ付きのハットと、雨に光るおじさんの十円ハゲが印象的な写真が出来上がっていた。
某夢の国に行った際、あまりにも長蛇の列で暇だったため友人にお題を出してもらって書いたものです。
最初はまさかの十円ハゲチョイスに驚き、次いで三つが中々繋げられずに頭を悩ませましたが、何とか繋げられました。
最後に、十円ハゲのインテリ眼鏡おじさん…ごめんね(´Д` )