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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第5章 〜輪廻謳歌〜
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Eightieninth Judge

「まず、私が千代ちゃんと初めて出会ったのは五年前。ちょうど彼女がこの天国にやってきた時ね」


ヤマクロは通りすがりの一般人Aの話に耳を傾ける

どうやら彼女はあだ名を使っている所から美原千代とはそこそこ親しい仲であったと思える


「何度か声をかけても無視されるし表情も変えないから無愛想な人だったわよ、今思い出してもムカつくし」


(.....それって単にしつこくてうっとおしく思われてただけなんじゃ)


「それで喫茶店に誘った時に初めて会話が成立した。今まで気持ちの整理とかで周りが見えてなかったらしかったみたいで話してみると明るい人だった」


通りすがりの一般人Aは懐かしむように笑みを浮かべる

彼女は続けた、その後何度か美原千代と会うことも増えて買い物なんかにも行く機会が増え顔を合わせる回数も多くなった

そして次第に互いの生前の思い出話もするようになった


「千代ちゃんの死因は現世ではわかっていない。でもこちらの世界では心肺凍結死という扱いになっている」


「心肺、凍結?」


簡単に言えば心臓もしくは他の臓器が凍傷によって活動が停止し死んだということである


「でもそれって別にそんなにおかしなことじゃ」


そう、全身凍傷で死ぬことも寒さに負けて死ぬことだって別段不思議なことではない、むしろよくある方である


「そう、現世なら普通にある一般的と言っていいかはわからないけどよくある死因。でもそれが室内かつ自分の部屋だとしたら?」


「えっ...」


「実際そうなの、千代ちゃんは自室で心肺凍結死という扱いを受けているの。これは天地の裁判所で調べれば出てくる筈よ、普通ならね」


「どういうこと?」


「あなたのお兄さんが言ってたの、千代ちゃんに関する資料全てが抹消されてるって」




一方麒麟亭の大広間では逃げ遅れた地獄の亡者達が続々と到着して来ていた


「間宮さん、麻稚姐さんから何か連絡ありましたか?」


「.............」


間宮は声に出さないがブンブンと首を横に振る、否定を表していた


「間宮さん、奥の第二広間も解放してよろしいでしょうか?」


「.............」


間宮は声に出さないがコクリと首を縦に頷かせる、肯定を表していた


「マミ、煉獄さんの容態安定してきたよ。予備の鎮静剤ってどこだっけ?」


「.....そこの戸棚の上」


「そう、ありがとう」


(間宮さんって本当に信頼した相手にしか喋らないんだな)


現在間宮樺太は亜逗子の代理として麒麟亭にいる鬼達の指揮官として動いていた、査逆に気絶させられ目が覚めて早々に働かせられているので初めは何が何だか理解できなかったが時間の経過と共に少しずつ理解することに成功する


「胡桃、亜逗子さんの容態は?」


「大丈夫、安定してるよ。さっきよりも随分と落ち着いてるし回復速度も上がってきてる」


「できるなら彼女には早く目を覚ましてもらいたいな、彼女程の回復技術を持っている者は中々いない」


「.....でも目覚めて早々重労働になるんじゃ」


「大丈夫、俺はそうだった」


ソウダッタネー、と遠い目をしながら話す東雲は苦笑いでその場を凌いだ

実際亜逗子以上に回復のイメージの脳波を上手く使う人材はこの天地の裁判所スタッフに存在しなかった

常人よりも多く脳がある天邪鬼の査逆でも亜逗子ほどの正確な回復技術は持っていない

東雲も回復のイメージは得意と思っている方だが亜逗子ほどと言われると自信をなくしてしまう


すると、突如麒麟亭の入り口の扉が勢い良く開かれる

間宮と東雲も音のした方向に目を向ける、そこには彼らの上司が見知らぬ男を背負っていた

ダラリと垂れた右腕を鎖で固定しながら全身血塗れで普段見せない瞳を片方だけ開けた少女、月見里査逆本人だった


「ハァ、ハァ、ハァ...」


「査逆さん!一体どうしたんですかその傷、それにその人は...」


「ウチの、ウチのことは後でもいい、頼むからこのヒトを助けてくれ!」


査逆は涙を流しながら必死に懇願した

明らかに査逆の方が重症なのに、いや男の方もかなりの重症を負っているが査逆ほどではなかった


東雲はどうしたらいいかわからずにオロオロしていると後ろから間宮が手を差し伸べた


「このおっさんを治療するんだな」


「マミ....」


「そう、ウチはその後でも構わない。そのヒトを助けてくれるなら」


間宮は査逆に冷たい瞳を向けてから男を背負い治療室に連れて行く


「胡桃、査逆さんを連れてこい」


「あ、待ってよ!マミ」




三途の川


「そろそろ終わりにしようぜジジィ共、俺はもう結構楽しめたからな!」


一閃、大地をも裂く巨大なバトルアックスによる一撃は百目鬼の肉体を確実に捉える


「百目鬼ッ!」


百目鬼は朧技の一撃を避けることはできず傷口から血を流して倒れる

盲目の彼にとって杖は道標のようなモノだった、それを朧技によって破壊された時点で彼は脱落していたのかもしれない


冨嶽は両腕に硬化のイメージを限界まで重ねて皮膚の色と質を鋼に変換させる

鋼の拳と化した冨嶽のパンチは先ほどまでの威力と数段もパワーアップし、一撃一撃が御影のバトルアックスを刃こぼれさせるほどである

しかし御影も負けずと持ち合わせた身体能力とバトルアックスを巧みに操り冨嶽に攻撃を与えていく


「貴様ごときが、閻魔大王の補佐になれなかった貴様が、図に乗るでないわァ!」


冨嶽の拳が御影に迫る、しかし御影は脳波によって強化された冨嶽の拳を片手で受け止める

これには冨嶽も驚きを隠せなかった


「嫌なこと思い出させてんじゃねぇよ、せっかく忘れようとしてたのによォ!」


「ゴフッ!?」


御影の拳が冨嶽の体を捉える、不意の一撃を食らった冨嶽は意識を手放しかけるが腹を抑えながら何とか堪える

しかし、御影の攻撃は止まらずバトルアックスによる斬撃が冨嶽を襲う

冨嶽はギリギリの所で回避するももう片方のバトルアックスが再び襲う


「もうあんたの最強だった時代は終わったんだよ、いつまでも最強気取ってんじゃねぇぞ。クソジジィ」


瞬間、三途の川に御影の攻撃によって十文字の巨大な傷跡が切り刻まれた


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