表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第5章 〜輪廻謳歌〜
80/101

Seventiefifth Judge

餓鬼達の猛攻に信長と信玄は次第に体力を奪われ劣勢に追い込まれていた

二人は動けば動くたびに体力を消耗し動きにキレや力も出せなくなるに対して餓鬼達は体力が奪われるどころか疲労も見られず体のパーツが欠けたとしても再生で補うことができる

生物としての根本的な構造が異なる種族の壁が二人を限界近くにまで追い込んだのだ


「信長、まだやれるか!?」


「当たり前じゃ、と言いたいところだが少々体が言うことを聞かんくなってきおった」


「フッ、俺たちも当時に比べて歳を取ったモンだよな。あの頃はこの程度の雑魚共を無双して蹴散らしまくってたんだけどな」


「やっぱり百年以上の運動不足は体に堪えるようじゃの」


それでも二人は攻撃の手を休めることなく餓鬼達を迎え撃つ

ここで諦めてしまえば餓鬼達が人々に危害を加えないとも限らない

もしそうなってまえば天国は餓鬼達によって支配されてしまいかねない


「まだまだァ!」


「応ッ!」


「それでは駄目だ!」


突如、第三の声が響き渡る

その人物を信長は知っていた、かつて居酒屋「黄泉送り」でヤマシロと五右衛門と供に酒を飲み交わし、生前の愚痴をマシンガントークの如く話す男のことを、


「末田!?」


「よぉ信長さん、そいつらは首刎ると一撃らしいぜ」


どこか気取ったように腕組みをしながら高い場所から高らかに助言した

末田幹彦はかつて天地の裁判所で裁判を受けた問題児の一人である

死因が急性アルコール中毒で酔っ払ったままこちらの世界にやって来てしまい暴れ回ったことが原因で裁判を行ったある意味前代未聞の事態を引き起こした張本人


信長は末田の助言に従い餓鬼の首目掛けて鉄パイプを力一杯振り回した

鉄パイプは綺麗な弧を描き、餓鬼の体から首が飛ぶ

すると餓鬼はピクピクと空気が抜けた風船のように脂肪が萎み力を失いドサッと倒れ伏せる


「流石信長さん、戦国武将の力は本物ですな」


「末田、お前どうやってこいつの対処法を」


「あの人が教えてくれたんだ」


末田が指差す方向では既に複数の餓鬼達が倒れていた

その人物を信玄は知っていた、生前も今も長きに渡って争い合い現在は音楽業界で勝負をしている永遠のライバルの名前を、


「謙信!?」


「え、あやつが上杉の...!?」


長い黒髪に切れ長の目、本日はライブの予定があったのでスーツを身に纏い模擬刀を両手に握り締めてる戦国武将、上杉謙信だった


「よぉ信玄、どうよ?今日の俺も結構キマってんじゃね?」


「どうでもいい!その手に持ってる奴を片方寄越せ!」


「やだね!俺はこの二刀流あってこその俺なんだ、一本だけだとビジュアル的にも締まらねェ」


「今はこいつらをぶっ倒すこと優先だ、越後の龍!」


謙信はそんな信玄の言葉に聞く耳も持たず懐から手鏡を取り出して自分の顔を見てうっとりとしていた


「......こやつが生前義の武将で毘沙門天の生まれ変わりと自負しておった上杉謙信か?」


「......実は俺も最初は信用してなかったんだよ、イメージからかけ離れすぎてて」


信長と末田は少し離れた所で何やら残念なモノを見たような目で謙信を見ていた

あの義の武将とも言われていた上杉謙信が自分のこと優先に動いているのだから

.....天国ってロクな戦国武将いないな、と遠くで五右衛門が心の中で思ったのは内緒である


「それより、お前は誰からこいつらの倒し方聞いたんだ!?」


「え?イケてる面子=俺??」


「言ってねェよ!」


このままでは話が一向に進みそうにないので信長が信玄を抑え、末田が代わりに話を進める


「謙信さん、あんたはなんでこいつらを倒す方法を知ってたんだ?」


「俺がカッコイイから?」


「もうそれでいいよ、誰から聞いたんだよ?」


「そうか、俺はやはりカッコイイか!いいだろう、答えてやる!」


.....何やら非常に面倒で残念な性格に捻じ曲がってしまっていた

そんな彼の扱い方も末田は既に体得してしまっていたことに同情してしまう


「もうここにはいないが、あっちの方向に走って行った二人組に教えてもらったんだ!きっと俺が格好良かったから俺に話したんだろうな!」


謙信は空港の方向を示していた




【ボクと代わるんだ、そうすればこんな奴らは一掃できる!】


「それは、できない!お前はボクと入れ替わった瞬間何をするかわからない!何よりこんな事態を更に悪化させるわけにはいかない!!」


【.....どうやらキミは何か勘違いしてるみたいだね、ボクはもうキミの体に興味はない。この間十分楽しんだからね】


心の闇は言葉を止めることなく次々と言葉を発する

ヤマクロは餓鬼達と応戦しながら心の闇の言葉に耳を傾ける


【ボクはキミの弱さが作り出した存在だよ、キミの支えがないと簡単に消えてしまう。だからまだ消えない内にキミの役に立ちたいんだ】


「役に、立ちたい?」


【ボク達はたしかに生まれながらに戦闘の天才と呼ばれてきた、でもキミは体にその感覚が染み付いていても技術的に欠けている。その反面ボクは技術的部分を補うことができる、キミとボクでは戦闘経験の差が違いすぎるんだよ】


つまりヤマクロは心の闇が表に出ているときに戦闘を繰り返していたためヤマクロ自身の体では覚えているが頭、つまり技術がついていかないのだ

本来であれば頭から体に伝えて体がついていかない場合が多いのだがヤマクロは特例である

ヤマクロと心の闇は一体、心の闇が体を動かせばその経験がヤマクロにも影響は出るが技術や思考は異なるモノとなってしまうのだ


【役に立ちたいと言っても罪滅ぼしだけどね。それとボクを生み出してくれたお礼かな】


「.....嘘じゃないんだね」


【たしかめてみてもいいよ、ボクはキミだからね。たしかめる方法はいくらでもあるよ】


「わかった、君を信じる。でもボクの意識も半分残す。完全には君には渡さない」


【それでもいいさ。ボクだってこの衝動をさっさと抑えたいんだよ、戦いたいっていう衝動をねッ!】


そこからヤマクロの動きは変わった

空港の飾り物売り場にあった模擬刀を右手に握り締めて、一度の斬撃で五体近くの餓鬼を斬りつけた

更に斬り口からは炎が溢れ出し餓鬼達を丸焼きにした

しかし首を直接斬ったわけではないので即座に再生され再び立ち上がる


「今度は、殺すッ!!」


ヤマクロが目を大きく見開いた瞬間、目にも見えない速度で辺りの餓鬼の首が刎られた

斬り口から炎が発火し、今度こそ完全に機能しなくなった


「.....今回はお礼を言うよ、ありがとう」


【どうってことじゃないよ。ボクだって久々に暴れられて楽しかったんだし....ッ!】


心の闇が突如息を飲む音がした


【後ろ!気を付けろ!!】


「え?」


ヤマクロの背後から大剣を持った餓鬼がヤマクロの首目掛けて大きく大剣を振り回した

ヤマクロは反応することができなかった


瞬間、何かが飛び散る悲惨な音が辺りに響き渡った


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ