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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第5章 〜輪廻謳歌〜
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Sixtieninth Judge

天地の裁判所、屋上テラスにゼストは一旦現世で使ったエネルギーを回復するために来世に戻ってきていた

やはり現世と来世では環境も違えば現世になくて来世にあるものも存在する

現世では酸素や窒素、二酸化炭素が大気中に大幅存在しているが来世では瘴気とその他の浮遊粒子物質が漂っている

その中でも来世にしか存在しないのが霊素と呼ばれる物質である

霊素は現世の酸素にあたる物質で、霊素を体内に含むことによって死後の世界である来世で肉体を留めておけるのだ

もちろん亡者の肉体も霊素を基盤に構成されており、魂の上から新たに霊素を型どったようなモノである


「はぁ、今回は何の土産も買ってこれなかったな。兄弟怒るんじゃないかな?」


実際は現世の土産など足の爪先ほども期待していないヤマシロだがゼストはそんなことを知る術もない

ゼストは柵に寄りかかりながら小さく溜息を吐く


「.....ん?」


そして地獄の方向に目を向けたときあることに気がついた

何やら空の色が紫と橙色の霧のようなモノが支配しているような

もっと言えば雷の色が黒く染まっている気もする


「.....疲れてんのかな?」


ゼストは一度目を擦ってから深呼吸をして天地の裁判所の屋上テラスを後にした....


「いや、やっぱしおかしい!」


再び屋上テラスへ足を踏み入れたのは、扉を開いて三秒後のことであった




「...こゐつは一体どうゐうことだ?」


天地の裁判所の廊下、煉獄が雷の音に何やら違和感を覚え地獄の方向に目を向けた時、普段の地獄とは違う風景が広がっていた

大地の底からマグマが流れ出して、黒い雷鳴が大地を引き裂き、不気味な紫と橙色の空の色はバケツの中の水に絵の具を適当に混ぜ合わせたかのように自然ではありえない混ざり方をしていた


「煉獄さん、やっぱしコレ普通じゃないッスよね?」


「当たり前だ、一体何が起こってるんだ!?」


煉獄とともに簡単な雑務書類を運んでいた笹雅も目を疑っていた


「笹雅、お前はこのことを閻魔さんに報告しに行ってくれ!脳話じゃなくて口頭で、それから閻魔さんの指示に従うんだ!」


「了解ッス!樺太と胡桃と館長はどうするんスか?」


「間宮と胡桃ちゃんは俺が呼ぶ、査逆さんはそのままだ!」


「まさかの上司無視ッスか!?」


「あんなの最後だ最後、とにかく頼んだ!」


煉獄と笹雅はそれぞれ逆方向に走り始める

煉獄は脳波を最大にまで広げて間宮と東雲を捜す

探知用に広げた脳波はイメージした特定の人物のみを対象にできる高度な技術が必要となる

煉獄もまだまだ発展途上だが動きながら脳波を探ればカバーできる


「それにしても、何なんだこの力の塊は?発生源がよくわからなゐけどかなりやばそうだ」


煉獄は潜影術で目的地まで急いだ




「....これは」


「こんなことが...!」


「どう、なってんだ...」


連絡を受けて外に出たヤマシロ達は地獄の変わり果てた姿に驚きを隠せなかった、いや隠すことができなかった

この様子では亡者達も無事ではいられないだろう

何とか行動に移したいヤマシロだが動くことのできる人物がこの場にいない


「閻魔様ー!」


すると、ヤマシロの元に一人の鬼がやって来た

たしか最近煉獄の配下についた鬼の一人だった


「笹雅、だったよな?」


「えぇ、そうッス!煉獄さんに言われてこのことの報告に」


最高のタイミングだ...

煉獄は現在の状況をよく理解し、次に何をしなければならないかをしっかりと理解していた


「笹雅、お前は煉獄達と地獄に行って亡者達の避難させてくれ。他にも使えそうな奴がいたら使ってくれていい」


「了解ッス、査逆さんを使ってもいいんでスよね?」


「あいつは、まぁ...いいんじゃないか?」


「なんで皆して査逆さんに対する対応が微妙なんでしょうかね?」




地獄某所...


「何なんだよ一体、数日前に巨大な瘴気が発生して地割れが起こったと思えば次は黒い雷に地面から溶岩かよ、どうなってんだ!?」


「落ち着け、俺たちが騒いでもどうにかなる事じゃねぇだろ...」


流れ行く溶岩の当たらない高い場所で身を休める二人の鬼がいた

一人は黒みのかかった緑の長い髪に右目に眼帯をつけた鬼、もう一人は顔に大きな傷跡があり天をも突き抜きそうな蒼い一本角の鬼


「第一地獄のことは裁判所の連中が管理してる。俺たちが今更出しゃばったトコでいい方向へと働くわけがねぇ」


「だけどよ、あいつらに任せて本当に大丈夫なのか?確かに俺たちはもう表に立つことはない、だけど恐らくこの事態に裁判所は全力で解決に挑む」


「.....いいことじゃねぇか」


「もし、気まぐれなあいつが動いたらどうすんだよ。裁判所の連中に味方するとも限らない。そうなっちまったら裁判所の連中は勝ち目ないぞ」


「.....だが俺たちはもう動く理由がない。新しい世代に賭けて見守ってやるのもいいんじゃないのか?」


「動く理由ならある、強い奴が来るんだ!それ以上の理由は俺たちに必要ないだろ!」


「.....お前は昔から変わらないな、だが妙な胸騒ぎがするのもまた事実」


「只事じゃ済まなさそうだな」


二人の鬼はニヤリと笑みを浮かべた


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