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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第5章 〜輪廻謳歌〜
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Sixtieseventh Judge

天地の裁判所、大法廷の法廷控え室にて


「だぁー、疲れたー!」


「あたいも、そろそろ限界近いかも。これで何人目?」


「コヒュー...コヒュー...コヒュー...」


「あんたが一番疲れてんのかい!え、閻魔様、麻稚って喘息とか持ってましたっけ!?」


「ほっとけばその内治るだろ」


「最近閻魔様が誰に対しても冷たい!?」


わなわなと戦慄する亜逗子を横目に正装にベッタリと汗が染み付いてしまったため何処からかタオルを取り出して一先ず額の汗を拭う

麻稚に関しては裁判の間進行を担当しているので酸欠の可能性があるが彼女は人間でなく鬼なのでそのうち回復するであろう

もうかれこれかなりの数の裁判を今日だけで行ってきた


ヤマシロがヤマクロを五右衛門達に任せて、裁判所に戻った瞬間に空港で部下に捕まってしまい裁判の準備を進めた

そして今までにないほどの裁判の連続にヤマシロや亜逗子、麻稚の三人は疲れを全身で表現するかのように項垂れていた


「閻魔様、これで裁判何回目でしたっけ?」


「ざっと十回目だな。しかし一日に十回近くなんて珍しいこともあるもんだな、どんな問題持ちが一気に死んでんだよ?」


「それに関してですが、」


いつの間にか復活した麻稚が眼鏡の位置を調整しながら書類を手にする

若干目の下に隈があるのは疲れのせいか趣味のせいかのどちらかであろう

できることならば前者と信じたいが彼女の場合は毎回頻繁に期待を裏切ってくれるので反面教師の考え方で挑まなければ予想外の事態に対応できなくなってしまう


「彼らの死因はいずれもわからないことが多すぎます。心肺停止でもない、殺害されたわけでもない、自殺をしたわけでもない、毒を盛られたわけでもない。現世で考えられる死因とは別の死因でこちらにやって来ています。もっと言えばこちらでも不自然というか、考えにくい原因なのですが...」


「じれったいな、その死因ってのは一体何なのさ?」


亜逗子はもう待ちきれない、といった様子でイライラした感情を表に出して麻稚に尋ねる


「こちらが原因となっております」


「ちょ、あたいは無視!?」


喚く亜逗子を無視してヤマシロと麻稚は資料に目を通す

麻稚は既に一度読んでいるため何のリアクションもなかったがヤマシロは目を大きく見開き、資料を手に取りまるで何か恐ろしいモノを見たような表情になる


「.....呪殺?」




一方、天国へ行ったヤマクロは上杉謙信のコンサートが始まるまで夏紀達と時間を過ごしていた

しかしヤマクロが現在気がかりで夏紀との会話が弾まないのには理由がある

夏紀は眩しい笑顔を向けて話しかけてくれているのだが、彼は何やら重いプレッシャーを感じながら引きつった笑みを浮かべていた


「どうしたのヤマクロ君?具合でも悪いの?」


「う、ううん。そんなんじゃないんよ、だ、大丈夫だよ!」


「そっか、良かった!」


夏紀が笑顔を浮かべる

その度に背後からの威圧感というか殺気がビンビンと伝わってくる

ちなみに背後にいるのは...


『解せぬ!』


「.....いい大人がガキ一人に本気の殺気ぶつけてんじゃねぇッスよ」


五右衛門が呆れながら溜息を吐く

織田信長、武田信玄、瓶山一の三人のおっさんの目が危ない方向で輝いており嫉妬と何やら怪しい感情が渦巻いているのが目に見えてしまう

信長と信玄は偶然合流して五右衛門が知り合いは一人でも多い方がいいと判断して捕まえ合流したのはいいのだが信長はかつてナンパに失敗した少女の隣で笑う少年に嫉妬を抱き

信玄に至ってはこれから謙信のコンサートに行くという可愛い少女に対して違う意味で嫉妬していた

.....瓶山に至ってはもう言う必要もあるまい


「くそぅ、いくらヤマシロの弟じゃと言っても許せぬ!何であのような幼気な少女から太陽の笑顔を貰っておるのじゃ!爆ぜろッ!!」


「あんた、その台詞完全にロリコンで犯罪者の言うことッスよ!?」


「畜生、何故あのような可愛らしい少女が謙信ごときのコンサートに!どうせCDとかも俺のには手を伸ばさずに謙信のに手を伸ばしているに違いない!謙信爆ぜろッ!!」


「お前もか、お前もロリコンなのか!?」


「あのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキあのクソガキ」


「お前は少し黙ってろ親バカが!」


ガルルルルル...と唸る三人の駄目な大人達を抑えながら五右衛門は溜息を一つ漏らす

正直この場に自分がいて良かったと五右衛門は割と本気で安心する

一番この場で恐ろしいことはツッコミがおらずボケがひたすら連鎖して取り返しのつかないくらいカオスになってしまうことだ

そしてそれがあの二人に悪影響を及ぼしてしまう可能性が少しでもある限り五右衛門はこの場を離れるわけにはいかなかった


「クソゥ、俺のコンサートはむさ苦しくて汗臭ェ野郎しかやって来ないってのになんで謙信のとこには女性が中心なんだよ!本当理不尽だろこのヤロー!」


「俺に当たんな!それは謙信がバラードとか女性受けするジャンルの曲を中心にしているのに対してあんたの場合はロックだろ!ベビメタだろ!男性が盛り上がりそうなジャンルばっかじゃねぇか!」


「知るか!ロックやベビメタが好きな女子くらいおるわ!」


「だから俺にどうしろってんだよ!」


信玄と五右衛門がギャーギャーと口論を始める

一方、ツッコミというカオスの抑止力を失った信長と瓶山は...


「すまぬヤマシロ、やはりお主の大切な弟だからと言って許してはおけぬ」


「準備はできている。信長さん、いつでも合図してくだせぇ」


「心得た」


「お前らも少し落ち着け!」


エアーガンを構えた二人を全力で止めた

口論なんてしてる場合ではなかった


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