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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第5章 〜輪廻謳歌〜
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Sixtiefirst Judge

ヤマクロの誕生日パーティーから数週間、具体的に言うならば三週間の時が流れた

閻魔大王であるヤマシロもドンチャン騒ぎをして疲れとストレスを発散させた鬼たちもメリハリとケジメがなっているようで翌日からはすぐさま仕事モードになりフワフワしたりソワソワした者は居らず、全員が真面目にテキパキと今日も元気に働いている


ヤマシロは裁判と雑務、ちなみにこの三週間で二回ほど裁判が行われ雑務も普段の倍以上の量となった


亜逗子は鬼たちを引き連れて地獄の整備、及び戦いの爪痕の修復と犠牲者たちの追悼と地獄の亡者達への八つ当たり


麻稚は三途の川の餓鬼狩り、あの一件で大量の瘴気が三途の川まで流れてしまったようで餓鬼の数も以前に増して増えているらしい


査逆はヤマクロと時間を過ごしている、元世話役と言った立場であったためヤマクロも査逆には心を開いているらしいので裁判所に一刻も早く馴染むには丁度いいだろう


煉獄は査逆がいないので部下と共に図書館の整理をしている、あのドンチャン騒ぎで煉獄は謎のカリスマを発揮し数は少ないが部下が出来たのだ

ある意味彼が一番出世しているのかもしれない


そしてゼストは相変わらずふらふらしている

現世から物資調達をしている可能性もあるがそれでも現世を優雅に歩き回っているであろう


「よぉ兄弟、今戻ったぜ」


「久しぶりじゃねぇかよゼスト。お前はまた仕事もせずにぶらぶらと現世観光を...!」


ノックもせずに雑務室に入室してきたゼストにヤマシロは疲れと負のオーラをドスの効いた声でぶつける


「お、落ち着けよ!別にちょっとゲーセン行ったり、デパ地下の試食コーナー巡ったり、宝くじ買ってハズレを引いたり、電気屋で現世の最新電化製品を見て回ったり、映画観に行ったり、ちょっと金が少なくなってきたから工事現場のバイト手伝ったり、動物園に行って現世の生物見に行ったり、ちょっと知り合った奴とボウリングに行った後でカラオケで半日歌ったくらいでそんな怖い顔すんなよ!」


「遊びすぎだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


「うぉ、危ねェ!?」


雑務に使用している羽ペンをゼストに向かって全力で投げつける

間一髪の所で躱されるが羽ペンは石で出来た壁に突き刺さる

ちなみに羽ペン自体は何の変哲もないただの羽ペンである


「お前死神部隊が解散になってからちょっと遊びすぎじゃないか、こんなんならミァスマ持っていた方がまだマシだったぞ!」


「落ち着けよ兄弟、確かに死神部隊が解散になってから俺は本当に変わったよ、娯楽に目覚めた!」


「よし、ここで上司権限発動だ。問答無用で一発殴らせろ!」


「だが断る!」


ゼストはそう言い残して潜影術で影に紛れて何処かへと消える

ヤマシロは小さく舌打ちをしてデスクに戻ろうとしたが、足元に何か置いてあることに気がつき目を向ける

そこには小さな小包が置いてあった

ヤマシロは一瞬屈んで小包を拾う

小包には小さなメモが挟んであった


『現世のお土産、仕事頑張れよ!

俺はもう少し現世を楽しませてもらうぜ☆

ゼスト』


「逃がすかあの野郎!」


ヤマシロはメモをビリビリに引き裂き残った雑務を放棄し、雑務室を後にした


ちなみに小包の中身は長崎カステラだった




ベンガディラン図書館...


「煉獄さん、同人誌棚の整理終わりました」


「同時に週刊誌棚の整理も終わりました!」


「おぅお疲れ、もう上がってゐゐぞ」


「では失礼します!」


二人の鬼、同人誌棚を整理していた間宮樺太(まみやからふと)と週刊誌棚を整理していた笹雅光清(ささみやこうせい)はそう言いベンガディラン図書館を後にした

この二人はあの一件から煉獄の元を突如訪れて部下にして欲しいと願った者たちの一部であるがこの二人が最も働き者である

今や煉獄の両腕とも言われるほどの煉獄とベンガディラン図書館を支える二柱の存在となっている

彼らのお陰でこの広い図書館の整理が随分と楽になり煉獄自身も彼らのことを重宝している

最近では彼の上司であり図書館館長でもある人物が他の仕事で中々顔を出せないことからほとんどのことは煉獄が指揮を取っている


「はぁ〜、部下を持つって素晴らしゐな...」


思わずこんな独り言まで漏れる始末である

彼の一言で今までの作業がどれほど大変だったかを物語っている


「煉獄さん、お疲れさまです」


煉獄が一息ついていると少し小柄な鬼の少女がタオルとペットボトルを持って煉獄の元に駆け寄る


「胡桃ちゃん、ゐつもありがとな」


「い、いえ、そんなこと...」


煉獄は礼を言ってペットボトルとタオルを受け取る

彼女、東雲胡桃(しののめくるみ)もここで働きたいと志望してきた一人である

鬼の中でも小柄で力も弱いため前線や力仕事で役立てることはなかったが図書館では主に煉獄の秘書のような役割を果たしている


煉獄はペットボトルの蓋を開けて中の水を一気に飲み干す

図書館とは言え窓が一つもないので中は湿気が多く温度が上がりやすいため何もしてなくてもいくら鬼とはいえ喉は自然と乾いてしまうのだ


「あの、その...」


「本当ゐつもありがとな胡桃ちゃん、こんなパシリみたいな仕事ばっかで本当ごめんね」


「いえ、そんなこと...あぅ〜...」


胡桃はそう言うと顔を真っ赤にして俯いてしまった

彼女は結構人見知りする性格のようで常にこんな感じである

あともう一つ、彼女には大きな武器がある


「それじゃ、もう少し頑張りますか」


「あ、あのわ、私も...」


胡桃が煉獄の後を追いかけて歩み出した瞬間だった、


「わっ...」


「ゑ?」


そう、この瞬間誰もが想像するはずだ

胡桃は何かに躓いてこけるのだろうと...

しかし、彼女はどういうわけかはわからないが


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


「お前のソレは相変わらずだな理解できねゑ!」


天井に届くまでの大ジャンプをしてしまうのだ

確かに躓くまでは正解だ、だが何がどういう原理で天井までの大ジャンプをするかは今だに謎のままである


「きゃん!」


そして、着地は必ずと言っていいほど失敗する!

煉獄は頭を抑えてため息を一つ吐いた




物陰喫茶MEIDOの一角...


「さぁ、坊ちゃん!好きなだけ頼んでくださいね!ウチが全部マジで好きなだけ奢ってあげますからー!」


「う、うん。ありがとうね、査逆」


ヤマシロの弟、ヤマクロとその世話役兼ベンガディラン図書館館長兼ここの常連の月見里査逆の二人が座るテーブルでは何やらピンク色(主に査逆から)のオーラがだだ漏れで店員が近寄りがたい雰囲気となっていた

店長であり査逆の顔見知りでもある荒井真淵(あらいまぶち)ですら一歩引く状態となってしまっている

更に言えば他に客がいない、何故なら鬼たちは皆、亜逗子か麻稚に連れられてそれぞれの仕事で忙しいためである


あの一件以来、地獄が崩壊しかけるという大きな事態が発生してしまったためその後始末が未だに終わっていないため早期解決の為普段以上に仕事に励んでいるのだ

だから査逆のように暇な鬼が逆に珍しいくらいなのだ


「で、坊ちゃんなに食べます?」


ヤマクロは査逆にキラキラとした目で問い詰められる

正直に言ってここまで来て何か頼まないと彼女に悪い気もするのだが逆に何を頼めばいいのかわからなくなってくる

ヤマクロはあまり親切心に応えるということに慣れていないためこういう場合の対応に即興で対処することを苦手としている


「じゃ、じゃあドラゴンソーダで」


「店主ー!ドラゴンソーダ二つプリーズ!」


査逆が大声で注文する

すると五秒も経たない内に注文した品がテーブルに並べられた

あまりの早業にヤマクロはポカンと口を開けている


「さぁ坊ちゃん、どうぞごゆっくりしていきましょう!」


興奮する査逆に若干戸惑いながらもヤマクロはドラゴンソーダをストローを経由してちびちびと飲み始めた

その様子に査逆は頬を紅潮させながら身悶えしていたのは余談である


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