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閻魔大王だって休みたい  作者: Cr.M=かにかま
第4章 〜憎まれ子〜
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Fiftiefifth Judge

「あの白い光は...?」


「ウチは初めて見るね」


亜逗子の回復である程度傷の塞がった天狼と査逆はヤマシロとヤマクロ、もっと言えば地獄全体を包み込む眩い白い閃光に驚きを隠せないでいた

ヤマシロの属性は炎、白い炎とも考えていいが『白』というモノは心に汚れがなく純粋であることを示す

閻魔の属性変換は心持ちようによって色や性質がそれぞれ異なるのも特徴の一つであるからである

故に白という色は少なくとも生き物ならば何者であろうと存在する欲があればその時点で具現化することができないのである


「アレは初代閻魔大王様の力を込めた腕輪らしいよ、あたいも話しか聞いてないし実際見るのは初めてだけどね」


「亜逗子...」


「白き光、汚れなきその力は邪なる力を打ち払う、だったよな〜亜逗子ちゃん」


「あんた、閻魔様と一緒だったんじゃ...」


「眩しゐし出番なさそうだったから戻って来たんだよ、無事ッスか査逆さん」


「煉獄君、なんでそんなことマジで知ってんの?」


「少なくとも最近はあんたよりも本に触れる機会が多ゐからね」


「...マジその通り」


影から戻った煉獄も興味津々に光を遠くから見る

この力のことは様々な歴史書や文献にも記録されているが所詮は書かれたモノで実際目の当たりにするのは本当に最初で最後かもしれない

そこで査逆は天狼の身体の異変に誰よりも気がつく


「天狼、あんた体が...」


「ん、そういえば...」


「天狼さんもあの光の影響で瘴気が浄化されたんじゃなゐッスか、あの光の払う邪には瘴気も対象になってるみたいッスからね」


「...お前はなんで俺が瘴気を体に取り込んだことを知ってるんだ?」


「査逆さんが脳話でさっき教ゑてくれたんで」


煉獄はケラケラと両手を広げて笑う

天狼は一瞬査逆を睨むも当の彼女の目には天狼は映っていなかった


「あたいは二人をある程度回復させましたけどもう少し休んでてくださいね」


亜逗子の一言に二人は驚き目を見開く、大いに不満があると査逆が代表して抗議する


「ちょ亜逗子!それマジでどういう意味だァ、ウチはマジでまだやれるぞォ!」


「落ち着ゐてくだせゑや、だから俺たちが来たんじゃなゐですか」


「そうそう、あたいだっていつまでもあんたの背中ばっか見てるなんて嫌だからさ」


「そういう意味じゃないッ!坊ちゃんが狂ってしまったのは元世話役であるウチの不始末だ、ウチがケリ着けなきゃいけないんだッ!!」


査逆は鎖を構え直し口の中から鉄の味のする唾を一つ吐く

そしてゆっくりと立ち上がり、


「もし、坊ちゃんの元へ行くなら...」


査逆は亜逗子と煉獄を一瞥し、


「ウチの屍を越えて行きな、それが出来たらだけどねッ!」


一人の天邪鬼が立ち塞がった


「.....査逆さん」


「オイ査逆、こんな時に何ふざけたこと言ってやがる!!」


天狼の叫びも虚しくスルーされ、


「ウチは本気だよ、こんな野蛮な奴らに坊ちゃんを任せていられないのも事実だし坊ちゃんを独り占めにしてイチャコラしたいのも事実だし坊ちゃんの世話役にもう一度なって面倒でマジでだるい図書館館長なんて役職を放棄したいのも確かに事実だけどウチが坊ちゃんを実の姉弟のような感情を抱いてるのも事実だからここはウチがやらないといけないんだよォ!」


『後半本音ただ漏れじゃねぇか!』


亜逗子と煉獄の両鉄拳が査逆の顔面に直撃した、彼女はそのままバランスを崩し後方に倒れる

その姿を見た後、亜逗子と煉獄は顔を見合わせニヤリとドヤ顔にも似た笑みを浮かべ、パチンとハイタッチを交わす

なんだかんだ言ってもこの二人、かなり気が合い仲がいいのかもしれない


「.....容赦ねぇな」


ドヤ顔を浮かべる彼らの近くでこんな呟きがあったとかなかったとか...




(しっかりしろヤマクロ、お前はこんな瘴気に支配されるほど気が弱くないはずだッ!)


淡く輝く光の発生源地、ヤマシロの拳がヤマクロに向けられてから数秒、いや数分経ったのかもしれないもう時間の経過も忘れるほどヤマシロは集中していた

初代閻魔大王の力を宿した特別な腕輪、使用にはいくつかの注意はあるものの人体や物体に付着した瘴気を浄化する力を持つこの光はゼストの肉体に憑依していたミァスマの瘴気を追い出すことに成功したという前科もある


(おそらくヤマクロは長い間瘴気を浴び過ぎて元々の戦闘狂の性格に刺激されて更に強くなって殺意の衝動も生まれてしまった、このことがこんな悲劇を生んだに違いない!)


実際ヤマシロの推測がどこまで正解かはわからないがヤマクロが瘴気の影響なしに戦闘狂であったのも事実であるし、性格は元々あんな感じに少し暴走気味だった


だからこそ父であるゴクヤマに危険人物として幽閉された

何度かヤマクロも一応もしもの時の閻魔大王代役の演習のため裁判を体験したことがあり、それが問題でありとてつもなく酷かった

まず、履歴書の顔写真で天国行きか地獄行きを判断したり経歴で気に入らないものがあれば即地獄送り、エトセトラエトセトラ...

バランスを整えるための後始末は軽くて済んだがあのまま幼いとはいえヤマクロが死人の判断をしていたとしたらゾッとする

だから彼は周りの鬼達からも煙たがれていた、たった一人を除いて...


「.....つまらない」


突如ヤマクロが口を開き、村正を握り直す

ヤマクロはハイライトの消えた虚ろで真紅の瞳をヤマシロに向ける


「つまらないよ兄さん」


「何?」


「だって兄さんさっきから突っ立ってるだけで一撃も攻撃してこないじゃん、まさかここまで舐められてるなんて思いもしなかったよ」


そう、ヤマクロはただ戦いを殺しをただただ楽しんでた

50年も隔離空間にいたヤマクロにとって外に出て動き回ることが何よりの退屈凌ぎだったのだろう

しかし、先程からヤマシロは攻撃を仕掛けるにしても初代閻魔大王の光を放っているだけである

主に瘴気にしか影響を及ばさないこの光はヤマクロには無害に等しい、それも直接殴ったりしない限りは


(待て、じゃあヤマクロから瘴気は...)


「もうボクからいっちゃうよ?」


その一言で辺りの空気が変質した

ヤマシロの腕輪から放たれている光はヤマクロから辺りに黒く染まって行きバキバキと音を立てて光は壁のように崩れて行く

気がつけば光の源である腕輪までも粉々に砕け散っていた

ヤマシロは無意識に閻魔帳と鬼丸国綱をどこからか取り出す

その様子にヤマクロは満足気に笑顔を浮かべ、


「さぁ、楽しもうよ兄さん☆」


二つの紅い瞳が怪しく輝き始めた


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